第1章5 りの帝国
火がつかない為、アリアにお助けアイテムを出してもらい、火をつけようと試みるりの。
虫眼鏡を太陽の光でつけようと試みるのだったが、中々つかないので火がつくまで国の名前を考えるりのは、これから”りの帝国”を作る事を決意する。
何もない荒野で、りのは高らかに宣言する。
「りの帝国を作る」
辺りは静まり返っている。
アリアは無言で、りのを見返すだけだ。
あれ?自分は可笑しな事を、言ったのだろうか?
発言した後、しーんとなると急に不安になってしまう。
りのは頬を少し赤くして、アリアにたずねる。
「・・もしかして、変だったかしら?」
りのにたずねられたアリアは、慌てたように答える。
「だ、大丈夫じゃない?」
質問に対して、疑問系で返さないでほしい。
りのが、涙目になっている事に気づいたアリアは、慰めるように、話しかけてきた。
「り、りの帝国。いいと思う!名前も決まってよかったじゃない」
りのの鼻先で、両手を広げる妖精アリア。
妖精に慰められる事が珍しく、きっと誰も信じないだろうな・・と何だか可笑しくなり、りのはつい微笑んでしまう。
微笑むりのに、アリアは急に恥ずかしくなったのか、プイっと横を向いて、りのから顔をそらした。
「アリア」
「・・・何だ?」
「ありがとう」
「・・・フン」
そんな会話をしていると、急に空が曇ってきた。
りのとアリアにとって大事な太陽が、遮られてしまったのである。
二人は慌てて、虫眼鏡の所に駆け寄った。
「火、火はついたのか?」
「ぜ、全然ダメみたい」
火がつくまで、ずっと待っていたのに・・二人は泣きそうになった。
つかないものはしょうがない、とアリアに言われて次の行動に移すことにしたりの。
とりあえずお腹は空いているので、アリアに魚はお刺身にして食べようと説得する。
アリアは不満そうだったが、アリア自身もお腹が空いている為、しぶしぶ納得した。
「・・・お醤油がほしい」
りのは魚を食べながら、そんな事を言う。
「そうだな。わさびも必要だな」
アリアは魚を食べながら、そんな事を言う。
妖精ってわさび食べれるんだ・・りのは心の中で呟いた。
魚を食べたりの達だったが、足りるわけもなく、途方に暮れていた。
しばらくして、りのはアリアに提案する。
「昨日の森に行ってみない?喉が渇いたし、もしかしたら、果物があるかもしれないし」
「そうだな。ここに、いても仕方ないしな」
昨日と同じように服を脱ぎ、虫とり網を持って、気合いを入れる。
こうして、再びりのは森を目指すのであった。
静かな森を入っていき、湖で水を飲んだり顔をバシャバシャしたりしたりのとアリア。
昨日はおそらく、夕方ぐらいに来たはずだ。
だが、今日は起きてからなので朝早くきているはず。
りのは、辺りを見渡して昨日と何か変わっていないか、確認するが特別変わった所は見当たらない。
「う〜ん。ちょっとあっちの方に行ってみましょう」
「そうだな。何もでなければいいな」
「こ、怖い事言わないでよ」
辺りは静まり返っていて、不気味な雰囲気である。
それでも、何か見つけなくてはと、りのは勇気をだして歩きだした。
しばらく歩いていると、りのとアリアはある匂いを嗅ぎつけた。
「こ、こ、この匂いってアレだよね」
「お、お、落ち着け」
2人は涙目になりながら、匂いのする方へと駆け出した。
「りの!何処へ行こうと言うのだ!匂いはあっちからするぞ!」
りのの頭の上からアリアが声をかける。
「ご、ごめん。もしかしたらと思うと、嬉しくて」
アリアの指示に従って、奥へと進む。
見えてきたのは天然の温泉であった。
温泉を見つけた2人は歓喜した。
「でかしたりの!」
「えへへ。こっちに何かあると思ったんだよ〜」
りのが、違う方向を指して進んでいたら、絶対見つからなかった。
そう思ったアリアはりののほっぺたに、何度もキスをした。
「とにかく入ろう・・・アレ?」
りのが、温泉に入ろうと近づくと、湯けむりが晴れて温泉の中が見えた。
「中に誰かいる」
慌てて温泉から離れるりの。
「な、な、何やってんのりの!進むのよ!」
りののほっぺたを、ペシペシと叩くアリア。
「誰かいたのよ!怒るんなら、ちょっと行って様子を見てきてよ」
「い、いやぁ~それはちょっと・・」
そんなやり取りをしていると、バシャっと音がする。
「ヒッ!!」
りのとアリアはビクっとする。
湯けむりからでてきたのは、小さなサルであった。
「あービックリしたぁ」
「まったくだ」
サルが森の中に逃げて行くのを見て、りのとアリアはホッとする。
「よし!りの進むのだ」
いつのまにか、服を脱いでりのの肩で温泉を指さすアリア。
「早っ!!」
りのは服を脱ごうとスカートに手をあてて固まる。
「ねぇ?入るのはいいけど、タオルとかシャンプーとかないんだけど」
「うっ・・確かに」
二人は温泉の前で固まってしまう。
「お助けアイテムでどうにかなるかな」
「そう都合よくでてくれるかな・・あああああ!!」
アリアが突然大声をあげる。
「ななな何?」
ビックリするりの。
「ジジィに言われていたのを忘れていた」
「何を・・?」
「こういう時はちゃんとしたお助けアイテムがでるのよ」
「こういう時って普段からでてよ」
ジト目でアリアを見る。
「まあまぁ。とにかくこれで入れるぞ!シポル」
アリアの手が光る。
本日2回目のお助けアイテムがでてきた。
「シャ、シャンプーだわ・・アリア・・ほらシャンプー!!」
「おお!これで心おきなく入れるではないか!」
そうねっとスカートに手をあてて再びとまるりの。
「ねえ?拭く問題が解決されていないんだけど」
「自然乾燥じゃダメなのか?」
「うううドライヤー・・って電気がないんだわ」
りのは考えるが、1分もたたない内に応えがでる。
「入る!!」
もう我慢できないと急いで服を脱ぐ。
入れないは、入れない。
かわかせないは、いつか勝手にかわくのだから入るべきと、りのは決意した結果であった。
足元からすーっと足をいれる。
全身に温かさが伝わる頃に逆の足をすっといれる。
全身に温かさが伝わり目元から涙が流れる。
「こ、こら!!自分だけずるいぞ」
肩からアリアが文句を言う。
「ご、ごめん。でも急に浸かると心臓に悪いし・・んしょ」
腰を浸からせて肩まで一気に浸かる。
「あ~あ。生き返るぅ」
「ホントだなぁ」
りのとアリアは涙を流す。
「アリア。ちょっと潜るから離れて」
りのは勢い良く潜る。
頭だけそのままだと、頭が直ぐクラクラしてしまいがちだ。
潜って10秒数えて浮上する。
「フー。本当に気持ちいいわ」
天然の露天風呂でアリアとりのは、鼻歌を歌う。
「い・い・湯だな、アハハン」
「いい湯だなアハハン」
体をユラユラさせながら、頭にタオルがあれば文句なしなのにと、二人は空を見上げる。
空を見上げると、鳥の巣を発見する。
鳥の巣を発見した、りのとアリア。
「様子を見てくる」
りのの肩から、ビュンっとアリアが向かう。
「りの〜卵があるぞー!!」
目を輝かせながらアリアが、空から声をかけてくる。
また、りのも目を輝かせてアリアに返事する。
「本当!!湯で卵にして食べようよー」
鳥さんごめんなさい。
りのは心の中でつぶやいた。
そんなりのに、アリアが返す。
「私じゃ持てないから、登ってきて!」
「わわわ私、全裸なんですけど」
女子高生アイドル水瀬りの、全裸で木登りなんてスクープ中のスクープ・・なわけないか。
りのは、自分でつっこむ。
「アリアの魔法で何とかならないの」
そういうと、アリアがりのの肩に戻ってきた。
「・・・どうしたの?」
無言のアリアを見て、声をかける。
「さ、寒くなったのだ」
全裸で、空を飛んでいたアリアは体が冷えたらしい。
「よいかりの?誰かに直ぐ頼るのはよくない事」
アリアは湯に浸かりながら語る。
「現代の若者は、やりもしないで直ぐにできませんとか、じゃぁやって見せてとか、なめくさってからに・・と、とにかく!一度やってみるのじゃ」
何で急に怒られてるの私?
「そりぁ・・お腹が空いておるから・・とりたいけど」
怒ってるのかと、思ったら急に元気がなくなるアリア。
「さすがに虫とり網じゃ届かないか」
りのは考える・・が登るしかない事を悟る。
届くかは別として、何かを投げてうまい事当てれたとしても、卵を割らないようにする為には、落ちてくる卵をキャッチしなくてはならない。
自分には絶対に無理。
高さ約5メートルぐらいにある巣を見上げて、決心する。
「よし!行こう」
りのは温泉からでる前にアリアにお願いする。
「アリア、お助けアイテムだして」
「もう最後のを使ってしまうのか?」
「だってしょうがないじゃん!全裸で木登りなんて、絶対できない!」
「わかったわかった。シポル」
アリアも女の子なので、りのの気持ちがわからなくはない。
アリアの右手が光る。
中から出てきたのは、水着であった。
「ビキニかぁ・・まぁスクール水着よっかはいいか」
高校生アイドルとして、活動する自分にとって、水着なんて特に抵抗するようなものではない。
雑誌の写真撮影やPV撮影で着慣れているし、周りには誰もいない。
ここで恥ずかしがる方がおかしい。
素早く手慣れた手つきで、水着を着る。
抜群のプロポーション!!と胸をはれたらいいのに。
胸をはる胸が寂しい。
アリアの魔法で大きくしてもらおうかしら?と、自分の胸を触りながら、考えるりの。
「・・・早く行け」
アリアが、どうでも良さそうに声をかけてきた。
「わ、わかってるわよ」
まるで、今自分が何を考えていたのか、わかったような感じのアリアにドキっとする。
木の上を、見上げるりの。
(木のそばって何故かいい匂いがして、眠くなっちゃうのよね)
さすがに水着姿だけでは、腕を怪我してしまいそうなので、ワイシャツを羽織りスカートをはく。
木登りなんてした事あったかしら?
子供の頃りえと遊んだりしたが、ジャングルジムとかを登った記憶はあるが、木登りは初めてかもしれない。
男の子は木登り以前に、木が好きだ。
私にはとても理解できない。
カブトムシのかっこよさとか、クワガタムシの良さとか。
しかし大人になるにつれて、木が好きって気持ちが、解る気がしないでもない。
カブトムシとかではなく、木の下が好き。
木の下で、本を読んでいる人の気持ちが解る。
木を一歩一歩ゆっくり、安全に登っていく。
木登りは初めてだったりのだが、何とか卵の巣までたどり着いた。
そ〜っと巣の中を確認する。
「良かった。ヒナはいないみたい」
ヒナがもしいたら諦めようと、思っていたので少しホッとする。
「本当に・・ごめんね」
卵を2つ拝借して、卵を落とさないようワイシャツのポケットに入れる。
親鳥の襲来もなく、安全に地上に戻ってきたりのを、アリアが拍手しながら迎える。
「り、りの〜。よく、よくやった」
若干、鼻声なのは泣いているからなのだろうか?
「アリアは大げさね」
服だけ脱いで、水着で湯に浸かる。
戦利品の卵を両手に、割れないよう握りしめて、湯に沈める。
卵が浮かないように、深く沈める。
「アリア?15分ぐらいかしら?」
「うむ。私が知らせてあげる」
湯に浸かりすぎて暑くなったのか、りのの頭の上で答えるアリア。
久しぶりにゆで卵を食べるよね?
おばぁちゃんのお家に行けば、いつもあるゆで卵。
年中無休のコタツの上に、みかんとセットでざるに積んである。
おばぁちゃんのお家に行く楽しみを増やそうと、りのは普段からみかんとゆで卵を避けている。
おばぁちゃん・・会いたいな。
りのは一人っ子だ。
だけどいつもりえが隣にいたため、双子かと勘違いされている。
おばぁちゃんもその内の一人で、双子じゃないとりのとりえが教えると、とても悲しそう顔をするので、りえと相談して、おばぁちゃんの前では双子で通している。
そんなおばぁちゃんが、りのとりえは好きだった。
りのが、おばぁちゃんの思い出に浸っていると、アリアが、声をかけてきた。
ゆで卵の完成だ。
足だけ湯につけ、石の部分でコンコンと卵を割る。
「いただきまぁす」
「ちょっと、私のもやってよ!!」
「あ!そうか。アリアじゃもてないものね」
食べようとしていた、卵をアリアに手渡し、再度コンコンと卵を割る。
「気をとりなおして、いただきまぁす」
温泉卵とまでは言わないが、普段食べているゆで卵とはまた違った美味しさがある。
「いっそのことここにりの帝国を作ろうかしら」
「夜はヘビとか、さっきのさるとかが襲ってくるかもしれんぞ」
「そ、それは困るわね」
ゆで卵を食べ、しばらく髪と体を乾かして服を着る。
「そうだりの。草を少し持って帰れよ」
「・・?食べるの?」
「食べるか!!牛が死んでしまうぞ」
「あっ!!・・忘れてた」
全然モ~と鳴かないので、いることを忘れていたりのは多めに草を持って、牛小屋に戻るのであった。
牛小屋に入り、牛がいる扉をあける。
「ほら見ろ!怒っているぞ」
「えっ!あれって怒っているの」
りのは再度牛を見る。
わらに背中を預けて足を組み、両手を後ろに回してこっちを見ている。
「ねぇ?なんか態度おかしくない?」
アリアに小声で話しかける。
今にもつまようじで歯を磨きそうな態度に若干、イラっとするりの。
「いやいやいやいや。ゴン太の気持ちになってみろ。お腹をすかせたらああなるぞ」
「ゴン太って言うんだ・・」
アリアの言い分も少しは解る為、ゴン太に満面の笑みで接する。
ゴン太の前に大量の草を置いてりのは告げる。
「ゴン太!お腹いっぱい食べていいのよ」
りののファンなら泣くか気絶級の笑顔をみせる。
「・・・ぺ」
「・・・・・」
ゴン太は草に唾をはいた。
プチっと音がなる。
しかし、自分が悪いのだ、我慢がまん。
りのは深呼吸をして落ち着く。
「だらしないわね」
「じゃあアリアがやってみせてよ」
「いいだろう。ゴン太の名付け親でもある私なら造作もないことぞ」
アリアはゴン太の鼻先に行って両手を広げ満面の笑みで告げる。
「ゴン太!久しぶりじゃのぅ。ほら。私が持ってこさせた草じゃ!食べるがよい」
くるくる回ったり、人差し指をたててウインクしたりするアリア。
「・・・・フンーー」
「・・・・・・」
ゴン太の鼻息をあびるアリア。
ブチっと音がする。
「この恩知らずが!!!サーロインステーキにして食うてくれようか」
アリアはゴン太の耳に嚙みついた。
「モ、モ~」
痛いのかゴン太が転がる。
りのはそっとその部屋を出るのであった。
牛小屋に背中をあずけて何もない荒野を見渡す。
「ダメ。ここで何かしないと昨日と一緒になっちゃう・・そうだ!」
りのは牛小屋にあったくわをとりにいく。
まだ喧嘩している妖精と牛を無視して再び外に出る。
「よし!このへんかしら」
地面を触って柔らかそうな所を探す。
くわを振りかぶって掛け声と共にくわを振り落とす。
ザク。
くわを振り落とす。
ザク。
くわを振り落として、手前にひく。
ザッザー。
畑を耕すかのごとく黙々と作業に没頭する。
「ハァ・・ハァ・・”リィエルちゃん”がほしい・・所ね」
額の汗をぬぐってため息をつく。
牛小屋の方を見るがまだ2mも進んでいない。
「く・・」
牛小屋の壁を背もたれにして眠る牛。
その牛の頭の上で眠る妖精。
イラっとしながらも、首を横に振って作業を再開させる。
「水着姿になるか・・でも肌がやけちゃうし・・日焼け止めクリームがほしい」
アイドルにとって日焼けは重大な問題である。
「太陽はワシの天敵って言ってた”忍ちゃん”の気持ちが解ってしまうわ」
何かあると直ぐ大好きなアニメで例えてしまうりの。
りのがアニメ好きというのはファンの間にも知られている。
アニメ握手会!?と題しておこなうイベントは、ファンがものまねをして握手し、りのが当てれなかった場合のみ一緒に写真撮影を行えるというイベントを何回かやった事がある。
未だに不正解がなく、マネージャーに怒られた事もあった。
しかしファンはそれはそれで喜んでいるので、強くは言えないマネージャーの困った顔を思い出す。
社長に呼び出され、わざと間違えたりするのも立派なファンサービスと言われた事もあった。
私はそれは違うと反論した。
ファンに嘘なく付き合っていく事こそが立派なファンサービスだと思うから。
昔の事を思い出しながらやっていると、いつのまにか5m進んでいた。
「ハァ・・ハァ・・手が痛い」
両手が赤くなってしまっている。
「豆になっちゃうわね」
普段力仕事はさけている。
筋肉がつくと写真撮影の時困るからだ。
「も・・もうダメ」
大の字で荒野に寝転ぶ。
フフフ。”りのは荒野を目指す”ね。
あの名作を思い出しながら空を見上げていると、アリアがやってきた。
「何をしているのだ?」
目元をこすりながらアリアがたずねる。
「やっとおきたの?」
りのは上半身をおこす。
「見ての通りあの森まで開通させて、水か温泉をこっちまでひっぱるのよ」
遠くにある森の方角を指差すりの。
森はここからは見えない。
「りの帝国はここから始まるんだわ」
りのは右拳を握りしめて力説する。
そんなりのにアリアはこいつは大丈夫なのだろうか?と心配になるのであった。
次回第1章6 りの帝国崩壊??
※ここまで読んで頂きありがとうございます。
さて振り返りますと、お助けアイテムでシャンプーと水着を出させていただきました。
これには理由がありまして、昔の人は(江戸時代ぐらい)髪を”糞”で洗うという習慣があると調べた結果なりまして、さすがにりのに洗わすわけにはいかず、シャンプーをださせていただきました。
水着も流石に全裸で木登りさせるのも・・と出させていただきました。
長くなってしまいましたが、次回もお楽しみに。