第1章4 建国開始
アリアの助言のおかげで、無事森を見つけることができたりのだったが、羽が生えたヘビに襲われる。
お助けアイテムによって、なんとか羽ヘビからピンチを免れたりのは、しばらく歩いて、湖を見つける事になった。
湖で魚をとり、食料確保できたのだが・・。
夕暮れ時、辺りはだんだん暗くなっていく。
周りを見渡したりのは、アリアに馬小屋に帰る事を提案する。
「ねぇアリア。そろそろ帰らない?」
「う〜ん。そうだなぁ・・。」
「暗いなかもし、さっきのヘビにあったら・・」
「よし!すぐ帰ろう!」
どうやら、アリアはヘビに対して苦手意識が芽生えてしまったらしい。
りのの言葉をさえぎったアリアは、りのの右肩にやってきた。
暗くなっていく森の中。
場所によっては、目だけでは見えない所まである。
「・・・きゃ」
りのがゆっくり歩いていると、突如草むらから、うさぎが飛び出してきた。
うさぎを見たりのとアリア。
しかし、2人の反応は全く違った。
「か、可愛い!!」
「か、確保ぉ!!」
りのが目をキラキラさせ、アリアもまた目をキラキラさせている。
「・・・えっ?」
少しの沈黙の後、お互い見つめ合う。
りのは怒った。
「あ、あんな可愛いウサギを、た、食べようって言うの?ダメ!反対!」
アリアは怒った。
「あ、あんなに美味そうなウサギを、み、見逃すだと?いけ!とるのだ!」
にらみ合う2人。
ぐー。
お互いのお腹が鳴る。
ほほを赤くして、お互いを見る。
照れ笑いを浮かべ、再度ウサギを見たのだが、どうやら逃げてしまったようだ。
ほっと、胸をなでおろし、再び馬小屋を目指す。
しばらく歩いていると、アリアが思い出した!とりのに提案する。
「枝をたくさん、もってかえるぞ」
アリアの意図がわからず、首をかしげるりの。
「いやいや、りのはこのまま食べるのか?火だよ!火」
アリアが呆れた顔でりのを見る。
「火って言われても・・あっ!もしかして魔法か何か?」
「残念ながら使えない。りのがつけるんだよ」
「もしかして・・火おこし?」
りのが確認をすると、うなずくアリア。
火おこしなんて無理!と言おうとしたが、考える。
火をつけないと、ご飯が食べられない。
気がついてから何も食べていないので、お腹はすいている。
すいている?
不思議に思ったりのは、確認をする。
「ねぇ?何で私はお腹がすくの?」
りのにたずねられたアリアは固まる。
少しの沈黙の後、アリアが口を開いた。
「・・・何も食べていないからだろ」
こいつ大丈夫か?みたいな目を向けるアリア。
少しイラっとしたが、顔にはださず再度、確認をする。
「そうじゃなくて。私って今死んでるんだよね?お腹がすいたりするのって何でかなぁって思って」
「ジジィも、言っていたじゃない。りのはまだ死んでいないって。だから痛い時は痛い、腹が減ったら減った。そんな事より早く枝をひろい集めるのだ」
よくわからないが、とにかく枝をひろうりの。
虫取り網に、ヘビを入れ、アリアに魚を持ってもらう。
持つと言っても、アリアが手で持つのではない。
魔法で、宙に浮かばせているのだ。
それならば、ひろい集めた枝も宙に浮かばせてほしい。
両手いっぱいに、枝を持ったりのはジト目でアリアを見るのであった。
馬小屋に、ついたりのは服を着る。
日が暮れ、少し風が冷たい。
何もない荒野だからか、とても静かな場所。
都会にこんな静かな場所があるだろうか?
風の音を聞きながらりのは考えていた。
アイドルとしてデビューして約3年。
ファンの応援のおかげで、色々な県にお邪魔する事ができた。
こんな自分を、応援して下さって本当に感謝の言葉しかでない。
最初の頃に比べたら、握手会も凄くたくさんの方が来て下さる。
それはとてもいい事だと、マネージャーは言うけれど私は複雑だ。
もちろん来て下さるのは嬉しい。
たくさんの方にお会いできるのも嬉しい。
しかし、人数が増えるとその分お話しをする事が少なくなっていく。
ある握手会では、来てくれてありがとうしか言えなかった。
時間がなかったからだ。
私はもっとお話しがしたい。
最初の頃のように、今日はここが良かったとか、ここが駄目だったとか・・フフフ。
思わず思い出し笑いをするりの。
私のファン第一号は変わったおじいちゃんだった。
いつもダメ出しをしに来てくれる。
つまらんといいながらほぼ毎日。
私は”ダメ出しおじいちゃん”と命名してあげた。
そんな私に、あだ名にセンスがないと、またダメ出しをする。
おじいちゃん、寂しがってなきゃいいな・・・。
ご飯を食べることを忘れて、ひと思いに更けていると、いつの間にか寝てしまうりのであった。
季節はおそらく春なのだろう。
だろうというのは確認する手段がないので解らないからだ。
桜が咲けば春。
セミが鳴けば夏。
紅葉すれば秋。
雪が降れば冬。
しかし、何もない荒野なので解らない。
昨日行った森の中には、桜はなかった。
しかし、夏というにはそれなりに涼しい。
5月ぐらいかなぁっとりのは、目もとをこすりながら考えていた。
「・・おはよう・・アリア・・」
軽くあくびをしながらアリアに挨拶をする。
「ふぁ~あぁ。うむ。おはよう・・って昨日寝ちゃったから、ご飯食べれなかったじゃない!」
豪快なあくびをし、りのの鼻先で怒るアリア。
「ごめん、ごめん。あれ?食べなかったの?」
「焼かなきゃ食べれないって言ったじゃない!何の為に枝を集めたのよ!」
「そうっだったんだ・・ごめんね。じゃぁ火をおこすから・・あれ?」
「・・?どうした?」
「もしかして・・・傷んでない?」
ヘビはともかく魚は生ものだ。
あまり料理が得意じゃないりのも、それぐらいは解る。
りのがたずねると、アリアがニヤリと笑う。
アリアは両腕を組んで得意げに語りだした。
「フフフ。食べ物に関しては、ぬかりないのだ。見よ!」
そう言ってアリアは呪文を唱える。
「シポエ」
昨日とは違う呪文を唱えたアリア。
アリアの手から光が輝き、光の中から綺麗に切られた魚とヘビがでてきた。
「昨日下ごしらえを済ませ、私の魔法で冷やしておいたのだ」
「おぉー。ありがとうアリア」
「れ、礼はいいから早く火をおこせ!」
頬を赤く染めてアリアは横を向くのであった。
火おこしなどやった事はないが、昨日お助けアイテムサバイバルの本を、手に入れたので大丈夫!と思っていたのだが、考えが甘かったと後悔するりの。
「いったぁ・・」
木の上で棒をクルクルこすりつけて火をつけようと頑張ったのだが、全くつかない。
”もみぎり”という古くから伝わるやり方である。
他にも”ゆみぎり”や”まいぎり”とよばれるやり方があるが、専用の道具がいる。
専用の道具とはタコ糸である。
摩擦熱で火をつけるのは無理だ・・。
自分には無理!と諦めたりのは、アリアに助けを求める。
「アリア!お助けアイテム」
「もう使うのか?」
「火がつかないことにはどうしようもないんだもん」
「・・・それもそうだな・・シポル」
本日最初のお助けアイテムは・・・虫眼鏡であった。
「たしか・・小学校の時にやったような・・」
「いいか!絶対、虫眼鏡を太陽に向けて、直接自分の目で見るなよ」
「・・そう言えば理科の授業で習ったような・・火傷して失明するとか言ってたような」
「うむ。火傷とはちょっと違うが危険だと解っておればよい」
取り敢えず虫眼鏡を木の枝の上にもっていき、太陽の光をあてる。
だが、全くつく気配がない。
「ねぇ?これってつくの?」
「知らん」
再び待つが全くつく気配がない。
「手が疲れてきたんだけど」
「疲れないように工夫すれば」
アリアにそう言われてりのは、虫眼鏡が倒れないように太い木の枝で固定する。
待っている間、暇なのでこれからの事を考える。
国を作るといってもどうすればいいのかわからない。
当然サバイバルの本に載っているわけもなく、アリアに相談する事にした。
「ねぇ?国ってどうやって作ればいいかな?」
「国は簡単に作れるぞ」
「え!本当に?」
「例えば、りのが自分の部屋を手に入れた時の事を思い出してみろ。国が手に入った気分ではなかったか?」
「言われてみれば・・あの時は国というより、城を手に入れたって感じだったけど・・」
「うむ。それと同じで、今りのがここで宣言すれば、ここはもう国なのだよ」
「なるほど・・じゃあ生き返れるのね」
「いやいや、今国が出来てジジィをよんだら間違いなく地獄行きじゃぞ」
「そ、そうよね・・ハハ」
アリアの助言もあって、何となくだが希望が見えた。
火がつくのを待っているのだが、つく気配がない。
本当につくのだろうか?
りのは気になって、虫眼鏡越しに太陽の光があたっている所を触る。
「熱ッ・・熱い!?」
どうやらちゃんと熱はもっている。
これなら・・と再び待つりの。
「待っている間に何かしよう・・そうだ!名前」
「名前?」
飽きたのか疲れたのか、りのの頭の上にいたアリアが聞き直す。
「国というのは名前があるものじゃない!」
「そういうものか?」
「そうよ!それに気分もでるし」
「気分ねぇ」
りのは両腕を組んで考える。
りのは首を傾げ、時には横にふって考える。
「こ、これだわ!」
「うん?決まったのか?」
アリアに聞かれたりのは自信満々に、こう答えた。
「りの帝国」
それを聞いたアリアは、こいつ・・何処かを滅ぼすつもりなのがろうか?と不安になるのであった。
次回第1章5 りの帝国
※ここまで読んで頂きありがとうございます。
さて、今回はいかがだったでしょうか?
最初、お助けアイテムでライターをだして色々と書いてですね、いやこれでは当初のテーマから外れると、書き直しました。
虫眼鏡を使った実験の話しを書いた時、とても懐かしく感じましたが今もやっているんですかね・・?
あまり長くなってはあれなので・・この辺で。
では引き続きお楽しみください。