第1章3 りのの冒険
お腹が空いたので、食べ物を求めて木がある場所を目指すりのと妖精アリア。
何もない荒野を歩いていると、遠くの方に木が見えてきた。
「木、木が見えてきた・・や・・た」
思わず涙ぐむりの。
木かと思われたが後ろの方にもたくさんある事から、アレは森?と気分が高鳴る。
「あ、ありがとうアリア」
「お、お礼なんていいから食べ物をもってきなさい」
照れくさそうにそっぽを向く妖精を微笑ましく思い、思わず微笑んでしまう。
森があるという事は、もしかしたら湖か川が流れている可能性が高い。
期待に胸を躍らせつつ森へと入っていった。
高さ20mはあるだろうか?
でかい木の間を通り抜けつつ、りのは空を見上げる。
こうやって、葉と葉の間から差し込む光を見上げたのはいつぶりだろうか。
中学の遠足・・いや小学校の林間学習の頃だろうか・・。
都会で、女子高生アイドルとして活動している自分を振り返りながら考える。
木と木の間から流れる風は心地よさと安心感を与えてくれる。
空気も美味しいし、いっその事ここに国を作ろうかと考えていると、アリアが声をかけてきた。
「なぁなぁ・・お腹すいた」
そうだったとアリアに言われて思い出す。
自分は食料を探しに来たのであったと我に返る。
辺りを見渡してもあるのは木、木、木、木しかない。
「う・・もう少し奥に進みましょう」
あんまり奥まで行くのはためらわれたのだが、今は非常事態だ。
何も出てきませんように。
祈りつつ先へと進むのであった。
少し進んで行くと、目の前の草が音を立てる。
その音にりのは驚き、近くの木の後ろに回り込んで様子を伺う。
ガサガサと音を立てて、姿を見せた音の正体は・・ヘビであった。
しかし奇妙な事にそのヘビの背中には、昆虫のトンボみたいな羽がついている。
「ひっ!・・・ヘビ・・羽・・?」
見たことがない動物に、驚くりのはアリアに何なのかたずねる。
「ん?アレは羽ヘビじゃな」
「はね・・ヘビ?」
りのはおそるおそる再度木の後ろからヘビを盗み見る。
りのとアリアに気付いたのか、ヘビが舌をだしながらこっちを見ている。
「ひっ・・こっち見てるよ・・」
「シャー」
サササと動きだしたヘビが、りの達に牙を向けて近づいてくる。
1歩2歩と後退りするりの。
「に、逃げ、ひっ」
りのがヘビに背中を向け走り出す。
後ろを振り返るとヘビが追ってきているのが目に見える。
「ひっ、ちょ、ちょっと待って!なんで飛んでるのよ」
「そりゃぁ飛ぶでしょ。羽だってあるんだし」
りのが走り、アリアはりのの横で両腕を頭の後ろに組んで飛んでいる。
「それ・ハァ・よ・ハァ・どう・・しよう・・」
走りながら考えるのだが、いいアイデア等思い浮かばない。
普通、生活の中でヘビに追われる事などまずない。
動物園で勤務していても、まずないだろう。
野生動物がいる場所ならと言ってもマネージャーにNGをだしていた。
「へ、ヘビの・・ハァ・・対処方法なんて・・知らない」
しかも空を飛んでいるヘビ。
「だらしないなぁ」
アリアが呆れ顔でこっちを見てくる。
「そんな事言ったって・・ん?」
1本の木をりのが右に、アリアが左にかわした時の事だった。
「もしかして?」
もう一度同じようにする。
「ねぇ・・あのヘビ。アリアを追っかけている気がするんだけど・・」
「・・ん?そんなわけ・・」
アリアが後ろを振り返る。
ヘビと目があった。
「うわぁ!なんでなんでなんで」
ヘビの立場からしたら、アリアは一口サイズだからなのだが、逃げながらそこまで頭がまわらない。
「あっち!あっちの方が太っててうまいぞ!」
アリアがりのを指さしながら酷い事を言ってきた。
「ななな何て事をいうのよ!アリアが追われてるんだからあっちいってよ」
「何て事を言うのだお前は」
アリアがりののほっぺたにくっついて離れよようとしない。
「け、喧嘩している場合じゃないわよ」
「そ、そうだな」
そう言って2人は後ろを振り返ると・・ヘビが目の前にいた。
「ひっ・・ななな何とかしないと・・そうだ!」
「「お助けアイテム!!」」
2人でそう言って顔を見合わせる。
「はやく、はやく」
「解ってる・・シポル」
アリアの右手が光ると何かがでてきた。
「・・・これって?」
細い木の棒の先にわっかがついていて、わっかには網みたいなのがついている。
「む、虫取り網!?え?何?捕まえろって言ってるの?ねぇ?ねぇ」
「し知らないわよ!はやく何とかして」
何とかと言われても虫取り網なんかでどうしろというのだ・・。
「・・・!!そうだアリア!ちょっと網の先端を掴んで前に行って」
「・・・?それでいいのか?」
仕方なく網の先端を掴んで前を飛ぶ。
掴んだ瞬間、りのは急ブレーキを踏む。
アリア目掛けてヘビが口をあけて飛んでいく。
アリアの持っていた網にヘビが収まるのだが、網越しに見える光景にアリアは手を離して悲鳴をあげる。
網にヘビが入った瞬間、りのは網を地面に叩きつけた。
「ハァ・ハァ・やった・・」
息を切らせながら、その場に座り込む。
網の中でヘビがおとなしくなった。
「りのぉ」
涙を流してりののほっぺたにアリアがくっついてくる。
「これで食料は大丈夫だな」
「え?え?食べるの?」
驚くりのにアリアがチッチチと指をふる。
「あぁ言い忘れていたが、料理は私がやってやる」
「え!そうなの!」
「だってりの料理できないじゃない」
「・・・う・・どうしてそれを・・」
りのは顔を曇らせる。
「家では親に、職場ではロケ弁かマネージャーに買わせるか」
「う・・」
心当たりがありすぎて何も返せない。
「そ、それはそうと喉が渇いたわね」
走って汗もかいたし喉も渇いた。
りのは再び湖か川を探して立ち上がる。
湖が見えてきた。
「み、湖・・湖・・やったー!」
両手を広げ泣きながら近くに駆け寄る。
湖の中に両手を突っ込み、水をすくい口元に持っていく。
「う・ぐぐぐ・・ぷはー。お水ってこんなに美味しかったかしら」
水道水とは違う少し甘い水。
これが天然のお水なのだろうか。
頭を突っ込み、顔をバシャバシャして、汗をかいた肌を洗い流す。
もう一度顔を突っ込んで目をあけた時だった。
(な、何かいる・・さ、魚?)
「ぷはー。ア、アリア何か、さ、魚みたいなのがいる」
「おぉ!!ホントか?」
アリアが目を輝かせる。
「よし!りの!とるのだ」
「ムムム無理無理無理」
首を横に振るりの。
「しかしそれではりのの食う物がないぞ」
「さっきのヘビ1人で食べるきなの」
そう答えたりのだったが考える。
(ヘビを食べた事何てないし、食べるなら魚の方がいいし・・)
もう一度湖に顔を突っ込み確認する。
20~30㎝ぐらいだろうか?
釣るにも道具がない・・そうだ!
「アリア!虫取り網を使うからさっきのヘビを持っていて」
虫取り網なら魚をとれると考えて、りのはアリアに指示をだす。
アリアから虫取り網を渡され、りのは制服を脱ぎ、靴下と靴を脱ぐ。
キャミソールにスパッツ姿で、虫取り網を手に持つ。
「よし!じゃぁ行って来る」
そう言ってりのは湖に飛び込む。
とても綺麗な光景に目を奪われてしまう。
綺麗な水は透き通っていて、目を開けると地上とは違う別世界が広がる。
下を見るとサンゴかただの石なのか解らないが、綺麗な色をした物がある。
また、その周りを熱帯魚らしき小さな魚が泳いでいる。
(とても綺麗・・)
地上に生きているだけでは、絶対に拝めない光景・・否、世界が拝める。
ずっと見ていたいと思ったが息がもたない。
一度息継ぎをしに戻り、再度戻る。
魚、魚と辺りを見渡し、お目当ての魚を見渡す。
(いた・・よし!)
そ~っとお目当ての魚の後ろに回り込む。
(今だ!)
思いっきり虫取り網を振りかぶり振り落とす。
(・・重っ)
水中では空気抵抗とは違った抵抗力がある。
またその抵抗力は様々な抵抗力がある。
形状抵抗、造波抵抗、摩擦抵抗、うず抵抗などあり地上とは全くの別世界だ。
魚はスーっとりのから離れていく。
(・・息が)
もう一度息継ぎをしにもどる。
「ハァ・・ハァ・無理・・」
「大丈夫かぁ~」
「だ、大丈夫なわけないじゃない」
「・・のようだな・・お助けアイテム使うか?」
「そ・・そうね・・お願い」
アリアがシポルと唱え、本日最後のアイテムがでてきた。
「こ・・れは?・・本?」
題名を見てりのは歓喜する。
本には”サバイバル”と書かれていた。
ばっと本にしがみつき読む。
「そうか・・よし!」
そう言って再度湖に戻る。
水中で魚を取るには持久戦が必要である。
魚を取るのではなく、取らせてもらう。
このもらうが重要なのだ。
虫取り網を水中でプカプカ浮かせる。
自分は虫取り網が浮力で浮かないように、棒をもって待機する。
魚が網に入った瞬間に、虫取り網をクルっとひねる。
(や・・た・・)
りのは網を持って魚の逃げ道を塞ぎ、急いで地上に戻る。
バシャっと顔出し、地上に戻ったりのは右手で網を持って、左手で棒を持ち天に掲げ叫ぶ。
「と、とったわーーーー!!」
どこかで聞いたようなセリフを叫ぶりの。
辺りはシーンと静まり返っていた。
次回 第1章4 建国開始
※ここまで読んで頂きありがとうございます。
水中の抵抗力を調べながら書きましたが、間違っていたらごめんなさい。
この作品は現代の若者に向けたと言っていますがどうでしょう?
何もない無人島みたいな世界で生きる為の知識をお持ちでしょうか?
この作品はそんな作品にしていきたいと考えております。
どうぞ最後までお付き合い頂けたら幸いです。
では次回もお楽しみ。