第2章4 クローバー下
りのとアリアは苦戦していた。
初めてやるゲームなのだから仕方がないとりのは思っているのだが、負けず嫌いなアリアは顔を赤くしている。
「アリア。あんまりイライラしないで」
「しておらぬ!」
どう見ても聞いても、イライラしているのが丸わかりである。
それはそれで、このゲームを楽しんでいるのだろうが、私にあたらないでほしい。
「ねぇアリア?このゲームの事を少し考えてみましょう」
「考えるも何も、トランプを引くだけなのだから、運のゲームじゃろ?チャレンジマスはアレじゃが・・」
トランプやすごろくで遊んだ事がある人であれば、アリアの気持ちが解るだろう。
だがしかし、カイジや天、ノゲラやライアーゲームなど、アニメや漫画、ラノベが好きな人ならそうは思わないだろう。
「運のゲームじゃないわ!いいアリア。ゲームには必ず、必勝法が存在するはずよ」
運の要素が強いのは解っている。
しかし、これはこの勝負だけに限った事ではない。
サッカーや野球といったスポーツ。
競馬やパチンコといったギャンブル。
アイドルや声優といった仕事。
様々なものはみな、運で出来ている。
無論、努力や知識、才能が必要だとは思うが、どんなにそれらを兼ね備えていたとしても、運が無ければ無意味だ。
ここでいう運とは、組み合わせだったり、抽選だったり、その日の体調、天候などである。
「必勝法?必ず勝つ方法があるというのか?」
「えぇ。私はそれを、アニメで学んだわ!」
両手を腰にあて、自信満々に言い切るりのを見て、アリアは少し落ち付きを取り戻した。
「考えてみてよ。このゲームでおかしい点があるとすれば、最初の5ターンは交互にプレイするっていうところよ」
「それはワシらみたいな初心者の為なんじゃろ?」
最初りのはこのルールを、5ターンの間にこのゲームの基本操作、ルールを覚えるものだと解釈していた。
「えぇ。多分それは間違いじゃないと思う。どんなゲームにも、チュートリアルがあるから・・けど、コレを見て」
りのはそう言うと、やまからジョーカーのカードを取り出した。
「このジョーカーは、使用する事で、一回休みとか、スタート地点に戻るとかの嫌な事を回避できるっていうルールでしょ?つまり、最初の5ターンでは絶対に使っちゃいけないカードって事よ」
「そもそも最初の5ターンで使うヤツはおらんと思うがのぉ」
最強カードを、最初から使う人は少ないだろう。
りのもそれは理解している。
「まぁまあ聞いて。そもそも5ターンの後は、交互というルールは廃止される。つまり、カードを引いて進んでまた引いてが繰り返されるって事でしょ?」
「まぁそうなるじゃろな」
「ということは、チャレンジマスで時間がかかる場合に、ジョーカーを使うのがこのゲームのセオリーなのよ。でも、最初の5ターンは交互に進んでいくというルール」
そこで、ようやくりのが何を言いたいのかを理解するアリア。
「なるほどのぉ。最初のチャレンジマスで時間がかかった場合、相手はチャレンジマスが終わるまで進めないという事か」
「そういうこと。だから、ジョーカーの使いどころを間違えないようにしなくちゃ」
「ん?それが必勝法なのか?」
「必勝法は別にあると思うけど、重要な事なのは間違いないわ。それと残りのトランプの数字も重要ね」
現在りの達は、Aと13をそれぞれ3枚使用している。
ゲームはまだ序盤であり、この先何があるかは解らない以上、これは覚えておく必要がある。
例えば、この先チャレンジマスみたいなところで、13のカードを2枚使えばスタート地点に戻らなくていいという事態になったとして、使います!と答えてしまうと、りの達は13のカードが1枚足りず、スタート地点に戻されてしまう。
こういう場合に、ジョーカーを使うのがセオリーということだ。
「なるほどのっと、どうやら2回休みが終わったようじゃの」
「えぇ。10分って長く感じてしまうものね」
りの達は、おてつきマスというマスに止まってしまい、2回休みになっていた。
ミツバとヨツバはまだ後ろだが、差は縮まっている。
スッと立ち上がり、やまからトランプを引くりの。
「・・・12ね。ふー。とりあえず、頑張って勝ちましょう」
勝って、トランプ王国から情報を入手する。
りのが国を作る為に欠かせない、重要な目的である。
アリアは黙ってうなずくのであった。
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12マス進むと、2本の剣が交差しているマスが見えてきた。
「あれって・・武器屋かしら?」
ロールプレイングの定番中の定番である、武器屋のマーク。
トランプすごろくに武器など必要があるのかと、りのは疑問に思う。
「考えても仕方がないじゃろ。ほれ、行くぞ」
アリアにうながされ、武器屋のマークのマスの上に立つりの。
「しょ〜ぶ、マス〜」
地面からそんな声が聞こえてきたのは、りの達がマスの上に立ってすぐであった。
驚いたりのは一歩下がる。
どうやら、武器屋のマークではなく、バトルのマークだったようだ。
「よいしょ。よいしょ。やぁやぁ。モグ助だよ」
「・・・どうも」
地面から現れたのは、工事現場などで見かける黄色いヘルメットを被ったモグラであった。
「僕と長話しでもする?それともルールを聞く?」
「長話しって・・・すいません。ルールでお願いします」
「ふーん。あっそう。じゃぁルールを説明するよ。今回やってもらうのはトランプどぼんといったゲームだ。失敗したら3回休みだから気をつけて。はい。ルールだよん」
トランプどぼん。
ルールは簡単である。
ある決められた数字に対し、越えてしまった方が負けというルールである。
例えば、10を超えたら負けというルールだとしよう。
先攻、後攻を決め、互いに数字を出していき、10を超えてしまったら負けというシンプルなルールである。
しかし、これはトランプどぼん。
当然、トランプを使う。
その為、先攻の人が11以上のトランプを使った場合、最初の一手で勝負は決まる。
プレイヤーのトランプが無くなった場合、やまからトランプを全て回収し、ゲームを再開する。
「なるほどね・・ということは、使用するトランプはこのやまから?」
「その通り!僕は全ての数字を2枚ずつ持ってスタートする。さぁ今回こえてはいけない数字は・・100だよん」
「質問!100ピッタリはセーフでいいんだよね?」
りのの質問に、モグ助はうなずくのであった。
「じゃぁ先攻、後攻を決めようか・・よいしょ。僕は10だね」
「・・アリア。お願い」
りのに頼まれたアリアは、トランプを1枚引く。
数字は3だった為、りの達は後攻となった。
「さぁ始めるよ!最初の数字は・・13だ!!」
「こっちは2ね」
こういう風に、お互いがトランプを引いていく。
現在15である。
相手に勝つ為には、100ピッタリのところを、自分が言えば、いや、引けばいい。
だが、好きな数字をチョイスできないのが、このゲームの難しいところであった。
次回 ミツバとヨツバ 上
さて、いかがだったでしょうか?
トランプどぼんというゲーム。
こちらはオリジナルというより、昔子供の頃に遊んだ事がある遊びを、トランプを使っているだけであります。
今思えば、何ていう名の遊びだったのか・・。
やり方は単純です。
作中にあるように、まず数字を決める。
次に先攻、後攻をジャンケンで決める。
1〜3の好きな数字だけ足せる。
決めた数字をこえたら負け。
負けたらしっぺや、でこピンとかですね。
もしかしたら、皆さんやった事があるのではないでしょうか?
やった事がない方は、よかったらやってみて下さい。
長々とすいません。
では、引き続きお楽しみ下さい。




