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おうこく!  作者: 伊達 虎浩
26/33

第2章4 クローバー 中

 

 りのとアリアは、トランプすごろくというゲームをやる事になった。

 簡単に説明するなら通常のすごろくに、トランプを使用するゲームである。


「この、最初の5ターンは同時にって言うのは何故なの?」


 唯一、ひっかかるのはここであった。

 すごろくに関わらず、通常こういったゲームではターン制といって、交代しながら進めていくものなのだが、このトランプすごろくは違うらしい。


「クスクスクス。だってその方が」


「スクスクスク。面白いじゃない」


 理由を聞いて、納得してしまった。

 例えば先攻のチームが6を出し、いい事が起きたとしよう。

 そうなると後攻のチームは、6が出ますように!と祈るだろう。

 それじゃぁ面白くないとミツバとヨツバは言う。

 それはそれで面白いとりのは思うのだが、考え方は人それぞれだと思っているので、何も言わなかった。

 何故面白いと思うのかと説明するならば、6が出ますようにと祈るプレイヤーを、皆んなで見ながら、6が出たら出たで面白いし、出なかったら出なかったで面白いと思う。

 そもそも、すごろくの醍醐味ってそこではないのだろうか?そう思いながらも、ルールだと言われてしまう以上、特に反論する事もできない。

 楽しみに来たのではない。

 謎を、解明しにきたのだ。


「クスクスクス。では、コレを」


「スクスクスク。さぁ始めましょう」


「コレは?」


 りのが受け取ったのは、白い布であった。

 丁度、教科書サイズぐらいの布を広げ、りのはたずねた。


「スクスクスク。それで互いが何をしているか解る」


「クスクスクス。スタートの合図でプレイヤーが何処にいるかが映されます」


 ミツバとヨツバはそう伝えると、スタートと同時に宣言する。

 宣言すると、白い布にマップと、ミツバヨツバ、りのアリアと、表示された。


「なるほどね。とりあえずやってみましょう」


 こうして、トランプすごろくは幕をあける。


 ーーーーーーーーーー


 同時にトランプを山から一枚引く。


「ドロー」


「クスクスクス。ドローだって」


「スクスクスク。ドローだって」


「え!?違うの!?」


 若干顔を赤く染めるりの。

 遊戯王好きなら解ってもらえるはずなのだが、どうやらミツバとヨツバは知らないらしい。


「クスクスクス。お好きにどうぞ」


「スクスクスク。私達はダイヤの4」


「私は・・ダイヤのK。つまり13ね」


「お〜りの!やるではないか!」


 引いたトランプの、数字通りマスを進む。

 4マス進むミツバとヨツバのマスの上には、3進むと表示されている。

 そして、3進むと何も書いていないマスに止まった。


「何も書いていないマスは、何も起こらないってわけね」


 こうやって、ゲームのルールを確認しながら、りのはゲームを理解していく。


「1.2.3・・13っと」


「星型のマスじゃな」


 13マス進むと、星型のマスの上に止まる。

 りのが足をつけると、パンパカパーンという、ファンファーレと共に、チャレンジマス〜という、猫型ロボットのような声が聞こえてきた。


「チャレンジマスってなんじゃ!?」


 驚くりのとアリアの前に、星型の人形がやってきた。


「初めまして。僕はヒトデン」


「スターじゃないの!?」


「スターだなんて、恐れおおい」


 どうやら星型ではなく、ヒトデ型のマスだったらしい。


「それじゃぁ早速、ルールを説明するね」


 このマスではある事にチャレンジし、成功したなら報酬が貰え、失敗したら罰ゲームがあるらしい。

 そして失敗した場合、回避するならジョーカーを使えるという事らしい。


「今回のチャレンジはこれだ」


 これだの後に、ワンツースリーと思わず言ってしまいそうな、そんな掛け声とともにホワイトボードを渡されるりの。


()()()()夢のはかないを漢字にしてくれ。成功したら2進む。失敗したら一回休みだよ」


 チャレンジマスとはこういう事だと、りのは理解した。


「はかないじゃと。り、りの!難易度が高いのではないのか!!」


「フッフフ。アーハッハッハ!いいアリア?漢字には覚え方があるのよ」


 そう言って、りのはホワイトボードに文字を書き始める。


「私がチームメイトで良かったわね。え〜っと、はかない夢だったわね。いいアリア?人の夢と書いて儚いと覚えるといいわ」


「何故、人なのじゃ?」


「それは・・人は夢を見るからじゃない?」


「ワシも見るぞ?」


「・・見るんだ。多分だけど、寝てる時の夢じゃないからなんじゃないかしら」


 りのは自分の考えを伝える。

 通常人は、夢をみる。

 保育士やアイドル。

 ラノベ作家だったりと色々だ。

 しかし、それが叶う人間はごく僅かしかいない。

 だからこそ、はかないという漢字ができたのではないだろうか。


「と、とりあえず、書いちゃうからね」


 アリアと議論しても仕方がない。

 りのが作った訳ではないのだ。

 しかし、考えてみれば漢字とは不思議だと、思わないだろうか?

 例えば悲しいという漢字。

 心を非難するのだ。

 相手に非難されて、心が悲しいという事なのだろうが、だとするならば、非難した相手は()()()で、非難された私は()()()という事なのだろうか?

 国語の先生に今度聞いてみようと、りのは書きながら考えた。


「普通は非難ではなく、否定と言うがな」


「あっ。そっか・・あれ?聞こえてた?」


 どうやら、声に出ていたらしい。

 ポツリと呟くアリアの言葉に、顔が赤くなるりの。


「はいは〜い。では結果発表〜!成功です」


 ダッタラ〜ン的な音にのせて、成功と言ったヒトデンは手を振りながら、何処かへと行ってしまった。

 ともあれ、チャレンジマスを成功させたりのは2マス進む。

 2マス進む先は、何も書いていないマスであった。


「どうやら、何マス進むの後は無印が多いみたいね」


 目の前には、1マス戻るの文字があり、先ほどのミツバとヨツバチームも、進んだ後は無印であった。

 この事から、りのはそう推測する。


「クスクスクス。後4ターンは同時に引く」


「スクスクスク。その後は競争」


 左の腕輪から、声が聞こえてくる。

 その言葉を聞いて、アリアがりのに質問をする。


「何故、5回は同時になんじゃろな」


 アリアの質問に、りのはアゴに手をあてながら答える。


「多分だけど、5回でルールを把握させるのが目的なのかも」


 ゲームとは、数回すれば大体どういったゲームなのか、どうすればいゲームなのかが理解できる。

 りのはそう考え、アリアに答えた。

 例えば、今回のこのゲームについて考えるならば、どういったゲームかは考える必要など無い。

 トランプを使った、すごろくである。

 どうすればいいゲームなのかというならば、先にトランプを全て使用し、ゴールしたチームが勝ちという事である。


「今回、私はこのゲームを知っていたけど、アリアは知らなかったわよね?きっとそういったプレイヤーに対しての配慮なんだと思う」


「ワシなら1回で覚えるがな」


「ハイハイ。ドローっと」


「あー!!ワシが引きたかったのに!!」


 りのが引いた瞬間、アリアがりのの頭をペシペシ叩く。


「ごめん、ごめん。次はアリアが引きなよ」


 そう言いながら、引いたトランプの数字を確認すると、スペードのKであった。


「お、おぉ…やるではないか」


「フッフフ。日頃のおこないってやつね」


 腰に手をあて、トランプを天にかかげながら高笑いするりの。

 日頃のおこないが悪いから、地獄行きになりかけているのでは?と言うアリアのつぶやきは、聞いていなかった。


 ーーーーーーーー


 13マス進み、1戻るマスに止まった為、1マス戻る。


「クスクスクス。差がついてしまいました」


「スクスクスク。負けちゃうかな?かな?」


「ワシが13を出して差を広げてくれるわい」


 オリャーという掛け声と共に、アリアはトランプを引く。


「ア、アリア・・」


「何じゃ?いい数字じゃったのか?」


「コレよ、コレ!!」


「・・・ま、まぁたまにはあるじゃろな」


 アリアが引いた数字分進み、1マス戻る。

 アリアが引いたのは、スペードのAであった。


「つ、次じゃ次!!」


 オリャーと言う掛け声と共に、再びトランプを引くアリア。

 引いた数字はクローバーのAであった。

 ある意味すごい事なのだが、今は勝負の最中であり、相手より1マスでも多く進んでおきたい所でもあった。


「ア、アリア!?ま、まずいわよ」


 りのは気づいた。

 今は4ターン目の最中である。

 この先何マスあるか解らないが、1マス進む数字をすでに2回使ってしまっている。


「お腹が空いたのか?」


「ちが・・わなくないけどそうじゃなくて・・」


 通常、1マス進む為にはAを4枚所持していなくてはならない。

 何故ならば、ゴールまで残り1マスの際に使えるのはこの4枚だけである。

 例えば、ゴールまで残り2マスだったとしよう。

 2を引くか、Aを2回引かないとゴールできない。

 カードの枚数でいえば8枚。

 同様に、ゴールまで残り3マスだった場合は、3を引くか、2とAを1回ずつ引くか、Aを3回引くかしないとゴールできない。

 カードの枚数でいえば12枚。

 そして、Aの代わりになるカードは存在しないという事である。

 つまり、Aはとても重要なカードだという事である。


「なるほどのぅ。しかしまだ残り2枚あるじゃろ」


「そ、そうなんだけど・・」


 トランプは全部で54枚あり、4枚使用した為、残りは50枚である。

 50枚の内Aは2枚残っている為、確率でいうのであれば、50分の2=25分の1の確率である。


「ワシに任せておれ・・オリャー」


「・・ア、アリア」


 顔を引きつらせるりの。

 トランプの数字は、ハートのAであった。


 ーーーーーーー


 アリアの有り得ないヒキのおかげで、ミツバとヨツバチームが追いついてきた。

 丁度、りの達がいるマスに止まった。


「クスクスクス。5ターンあってKを2回使用したというのに」


「スクスクスク。まだこんな所にいるなんて」


「ぐぬぬ・・」


 返す言葉が見つからないとは、この事である。

 Kを2枚使用したという事は、2ターンで、26マス進んだという事であり、現在りのアリアチームは27マス目である。

 つまり3ターンの間に、1マスしか進んでいないという事だ。


「スクスクスク。5ターン以降は布を見ながらになるわ」


「クスクスクス。ペアーチームの名前の数字を見て頂戴」


 ヨツバとミツバに言われた通りに布を広げると、名前の上に、赤く塗り潰された5という数字がある。


「クスクスクス。私達が1枚引くと」


「あっ!6に変わった」


 黒い文字で6と書かれている。


「スクスクスク。ここからはターン制。1回休みの場合は青くなり、チャレンジマスの場合、黄色くなる」


「クスクスクス。チャレンジマスには制限時間がない。しかし、ここからはターン制」


「なるほどね。制限時間がないという事は、終わるまで待たないといけないのね。でもそれじゃあ・・」


「クスクスクス。相手がチャレンジ中は5分後に1枚カードを引く」


「つまり1時間かかってしまったら、相手は12回トランプを引けるという事ね」


 通常のすごろくとは違うルールである。

 2時間もかかってしまったら、負けは確定してしまうだろう。


「スクスクスク。うまくジョーカーを使う事ね」


 チャレンジ中は、5分経つと腕輪から音がなる仕組みらしい。


「クスクスクス。私達は11」


 嬉しそうに、トランプを見せるヨツバ。

 りのは深呼吸をして、トランプを1枚引く。


「私達は13ね・・」


 またしてもKを引いたりのであったが、りのの表情は浮かない顔をしていた。


「やったのぉって何じゃ?何故浮かない顔をしておるのじゃ?」


 アリアは喜び、りのの頬に、キスのご褒美でもやろうかと思ったのだが、りのの浮かない表情を見て止まる。


「スクスクスク。どうやらお姉さんはこのゲームを理解し始めているようね」


「クスクスクス。それに比べて妖精さんったら」


「な、なんじゃと!!」


 クスクスクス。スクスクスク。

 アリアを見て笑うヨツバとミツバ。


「アリア!行きましょう」


 ヨツバとミツバに、くって掛かろうとするアリアにりのは軽く注意をし、マスを歩きだした。


「クスクスクス。先攻、後攻のトランプ勝負を忘れてしまいましたね」


「スクスクスク。先攻でも後攻でも結果は同じ」


 ヨツバとミツバは、声を揃えて宣言する。


 私達の勝利は、揺るがないと。


 次回 第2章4クローバー 下

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