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おうこく!  作者: 伊達 虎浩
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第2章2 新世界 上

 『登場人物』

 水瀬 りの

 現役高校生アイドル。不運な事故にあって死んでしまったが、神さまが半分生き返らせてくれた。

 生き返る為には、何もない荒野に国を作る事である。

 アリア

 りのの手助けをする為、神さまからいただいた妖精。

 1日3回まで、お助けアイテムをだしてくれる。



【本編】


 神さまは突然やって来て、突然去って行く。

 何をしに来たのかと言えば、この国の言語を私に授け、人?を探せとの事だった。

 神さまが去った後、アリアに話しかける。

 無論、神さまが言っていた事に対して、聞きたい事があったからだ。


「ね、ねぇアリア?神さまが言っていた事って本当なの?」


「解らん」


 馬小屋に背中を預け、流れる雲を見上げながら呟くりのに、アリアは両腕を組みながら、りのの頭の上で答える。


「わ、解らんって・・」


「解らんもんは解らん!しかし、エロジジィが言っていた事が本当なら、これはチャンスじゃ」


 アリアにそう言われ、りのは考える。

 神さまが嘘を付くはずがない。

 そもそも嘘を付く理由がない。

 嘘なら、この国の言語を自分に授けるだろうか?


 それに、アリアが嘘をついている可能性も低い。

 あれだけ、お腹空いたと言っていたのに、自分の側から離れなかった。

 もし誰かがいると知っていたら、ご飯の為に迷わず教えてくれる筈だ。

 りのは首を横に振り、両手で顔をパンっと叩く。


「良し!希望が見えて来た」


 正直に言えば、一人では限界があるとりのは思っていた。

 しかし、そう思わないように自分に言い聞かせていたのだ。


 限界だと思ってしまったら、何をやっても上手くいかなくなる。

 上手く回っていた物が、回っていない気になってしまう。

 歯車とはそういうものだ。


 だが、やる前から限界を決めつけてしまうのと、やってから限界を決めつけてしまうのとでは、大きな違いがある。

 恐らく神さまは、それを見に来たのだ。


 国を作れば生き返らせてくれる。

 しかし一言で、国と言っても色々ある。

 貧しい国、豊かな国、人口が多い国、少ない国。

 暑い国や寒い国。

 りの帝国を作ると決意したが、ではりの帝国とはどういう国なのか問われたら、今の段階では何も答えられない。


「何もない・・あっ!ねぇアリア」


「ん?」


「ちょっと、りの帝国ってどんな国ですか?ってリポーター風に聞いてみてよ!」


 リポーター風ってなんだよと、アリアは目をキラキラ輝かせるりのを見ながら、心の中で呟いた。

 まぁ、聞いてやるだけ聞いてやるか。

 アリアはリポーター風にりのにたずねた。


「りの帝国、初代国王水瀬りの様。りの帝国について、一言、一言いただけませんか?」


 りのの鼻先で、右手をあげるアリア。

 初代国王と言う響きに、りのは何とも言えない感情が込み上げてくる。

 人は誰だって、一度は王様や、お姫様に憧れるものだ。

 りのは頬を少し赤くしながら、アリアの質問に答えた。


「何もない国です」


「なめんなよ」


 国ですの「で」の部分でアリアから飛んでくる厳しい指摘。

 じょ、冗談だよハハハと言うりのを、アリアは呆れた様子で見ていた。


「おほん。冗談はこのぐらいにして、正直限界は限界なのよ」


 りのはアリアに、限界について語りだした。


 人は一人では生きていけない生き物である。

 何故か?

 答えは簡単である。


 人間とはそういう風にできているからだ。


 普段の日常生活で、自動販売機でジュースを買ったとしよう。

 130円入れてスイッチを押す。

 何気ない日常の一コマである。

 では、これに関わっている人がどれだけいるのかを考えてみよう。


 自動販売機を作った人。

 自動販売機を置いた人。

 自動販売機のジュースを作った人。

 自動販売機のジュースの入れ物を作った人。

 自動販売機にジュースを補充した人。

 自動販売機にジュースを入れる為にジュースを、補充する人に届けた人などなどだ。


「で?何が言いたいのだ」


 ダメだ。

 何気ない日常の一コマの中に、色々な人が関わっていると言いたかったのだが、どうやらダメらしい。

 りのはアリアの食いつきそうな話しに変えて話す。


「和風おろしハンバーグってあるじゃない?」


「どちらかと言えば、デミグラスソースハンバーグ派だな。何だ?くれるのか?」


「持ってないわよ!私は両方好きだな」


「ず、ずるいぞ!!なら私は全部だ!!!」


「あーーずるい!ってそんな話しじゃなくて」


「では何なのだ?」


 アリアが、話し長い的な態度をとってきたので、若干イラッとしながらも続ける。


「アリアは言ったわよね?国は誰にでも作れるって」


「あぁ言ったぞ」


「りの帝国はお城!お城がないとダメなのよ!」


 りの帝国はお城がないとダメ!というのは、りのが決めた事である。

 決めた事と言うが、これはとても重要な事である。


「イチゴのショートケーキがあるじゃない?もし、そのショートケーキにイチゴがなかったとしたら、それはイチゴのショートケーキではないでしょ?それと同じなのよ!」


 りの帝国にはお城が不可欠である。

 お城無くしては、りの帝国とは呼べない。

 呼べないという事は、国が完成せず、生き返る事が出来ないという事である。


「なるほど」


「解ってくれた??」


「うむ。チーズケーキ派になろうということだな」


「・・・違うから」


 一言でお城を作ると言っても、お城は一人では作れない。

 作る為には、必要な物があり、それは人と、材料と道具ではないだろうか。


「つまりはね、家を作る時もそうだけど、作るには、職人さん達が必要なのよ」


 デザインは、りのにでもできるかもしれない。

 しかし、それ以外が全く解らない。


「コンクリートで固めていけばいいんじゃないのか?」


 アリアが両腕を、首の後ろに回しながら、りのに提案する。


「多分それでは、ダメだと思う」


 そもそも、コンクリートの固め方が解らないのだ。

 りのはアゴに手をあて、推理する探偵のように呟いた。


「家だけではなく、医者も必要になる。それ以外にも美容師さんだったりも必要になってくるわね」


「コックさんが欲しいぞ」


 りのの呟きに、アリアが答える。

 もし、風邪をひいた時、髪が凄く伸びてしまった時、栄養面に関してなど、りの達にとって重要不可欠な事を話し合う。

 さすがに髪が伸びきっても、死ぬ事はないのだが、女の子として譲れないものがあるのだ。


 りのとアリアがそんな会話をしていると、モッキーが森の方から、こっちへと向かってきた。

 どうやら、神さまが来ている間に森に行っていたみたいだ。


「お疲れーーっす」


「・・・・!?」


 モッキーが、右手を上げながらやってくるのだが、同時に不思議な声が聞こえる。

 若い男の声であった。


 アリアと目を見合わせるりの。


「オィオィ。大臣様のお帰りだZE?バナナでも差し出せってんだYO」


 お手上げポーズをとりながら、首を横にふるモッキー。


「しゃ、喋ったぁぁぁぁぁああああ」


 りのとアリアは、モッキーから逃げるように走りさるのであった。


 次回第2章2 新世界 中

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