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おうこく!  作者: 伊達 虎浩
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第1章11 花壇をつくろう 下

 

 りのは疑いはじめていた。

 結構歩くが、お目当ての花は見つからない。

 見つからないどころか、辺りはでかい草が生え揃い、まるで、自分が小さくなったような、そんな気分になる。


 アリアは疑いはじめていた。

 結構歩くが、お目当ての食べ物が見つからない。

 見つからないどころか、辺りはきのこ草が生え揃い、食べ物を探しづらくしている。

 このままではまずい。


「なぁ?」「ねぇ?」


 アリアとりのの声が被ってしまう。

 先にどうぞ、とお互いが譲り合う。

 アリアが一つ咳をし、りのにたずねた。


「何処に向かっているのだ?」


「・・・えっ?・・えええーー!!」


 アリアに質問されたりのは、大声をあげて驚いた。


「ちょっ、ちょっと待って。アリアが道案内してくれるんじゃないの?」


 先ほど、四花(よばな)を見かけたら教えてあげると、言っていたじゃない!とりのはアリアに質問する。


「いゃ、見かけたらそりゃぁ教えるが、それとこれとは別じゃろ?」


 アリアに返された返事は、もっともな答えである。

 言われてみれば確かにそうだと、りのは唇を噛みしめる。


「もしかして、私達って・・迷子?」


 キョロキョロと辺りを見渡すが、でかい草しかなく、右を見ても左を見ても草、草、草しか見えない。

 何でこんなにでかいのよ!とりのは心の中で叫ぶのであった。

 りのの考えをよんだのか、アリアが解説する。


「これは、きのこ草じゃな。見ての通り葉っぱがきのこのような形をしておる事から、そう名付けられたのだ」


 得意げに語るアリアを、どうでもいいなぁっとりのはシラけた目を向けるのだが、ある事に気づいた。


「ア、アリア。あれもきのこ草なの?」


 りのが指さす向こうには、70cmぐらいの草が生えていた。

 うなずくアリアを見て、りのはこの草を、くわで掘りおこした。


「・・きのこ草は食べれんぞ」


 きのこっていう名前だからって、食べれんぞと注意するアリア。


「た、食べないわよ!そうじゃなくて、ほらコレ!傘に見えない?」


 くるくるときのこ草を回す。

 どうやら茎の部分は硬く、折れにくいみたいだ。

 これなら、雨が降っても安心だと、りのは考えたのだが、葉っぱの部分は開きっぱなしである。


 しかし現状、雨を防ぐ方法がない為我慢するしかないと、りのはアリアにきのこ傘を保存してほしいとお願いする。


「雨よりも食い物を探しなさいよ全く・・。」


 ブツブツ呟くアリア。

 私にとっては大問題なんだからとりのはアリアを見て、説明しようとしたができなかった。


 アリアは私の胸に隠れるから濡れないじゃない!と言おうとしたのだが、隠れられるスペースがある事を、恥ずかしく感じてしまったからである。


「ま、元気を出せ」


「う、うるさい!」


 りのが何を考えていたのか、アリアは理解しているようなそんな口ぶりに、ドキッとする。

 そんな些細な一悶着があったが、りのは気づく。


 迷子だったことを。


 迷子になった場合の、助かる手段をご存知だろうか?


 色々な方法がある。

 時計を使う方法や、コンパス、太陽もしくは月、星の位置や雲の流れから判断する方法様々あるが、一番の方法は何か?簡単である。


 ポジティブでいる事である。


 これは様々な知識を持ち合わせていても、ネガティブな気持ちになった場合と、知識は全くないが、ポジティブに考えていた場合とでは、ポジティブな考え方をしている方が、助かる率が高いという結論がでている。


「ポジティブに考えて行動しましょう」


 りのは、首を軽く横に振り、握り拳を作って宣言する。


「左よ!左にきっといい事が待っているはずだわ」


 自分の直感を信じ、りのは歩きだした。

 しかし、りのはこの方法で見事、温泉を見つけている。

 アリアは、静かにりのの肩の上で反論する事なく、見守るのであった。


 しばらく道なりに歩いていると、いい香りが辺りを包み込んだ。

 間違いない。

 この香りは花の匂いだと、りのは確信する。


 アイドルという職業がら、花を見る機会や触れる機会が多いりの。

 番組収録の時もそうだが、一番多いのはやはり、ファンからの差し入れの時である。


 ぬいぐるみ(キャラクター)やフィギュア(キャラクター)も群を抜いて多いが、花を貰う機会も多い為、香りでどんな花か解るのだが、この香りは解らなかった。

 りのにとって未知の香り。

 つまり、お目当ての花なのかもしれないと、期待に胸躍らせ自然と駆け足になる。


 そこで目にした光景に、りのとアリアは言葉を失った。

 辺り一面を真っ赤な花で埋め尽くされたその場所は、奇跡と呼ぶにふさわしい場所であった。

 足の踏み場がないわけではない。

 歩けるように咲いているからこそ、奇跡に近いと感じたのだ。


「き、綺麗・・。」


 そう表現するしかできないこの場所で、アリアと呆然と立ち尽くすりの。

 この花が、色々な色に変化するのかと思うと、ずっとここで見張っていたい、そんな気分になるのだが、残念ながら、そんな事を言っている場合ではない。


「アリア。これが四花で間違いないわよね?」


「もちろんじゃ」


「じゃぁお願い」


 アリアの呪文で四花を少し持って帰る事にしたりの。


 牛小屋の前で、綺麗な花を眺めながら、優雅に紅茶でも飲みたい。


 そんな夢をいだきながら、りのは牛小屋へと帰っていくのであった。


 次回第2章1 神様の訪問 


 ※ここまで読んでいただきありがとうございます。

 ここで第1章は終了となります。

 第1章では、水瀬りの、アリア、2人の性格であったり物語のコンセプト作りといいますか、こういうお話しです的な部分となります。

 火をつける為に、虫眼鏡を使ったり、魚を捕まえたり、猿と仲良くなる方法であったりと、もし皆さんが無人島に遭難してしまったら?的な感じで読んでいただけると、また違った見方もできるのではないでしょうか?

 おうこく!はそういうテーマともう一つのテーマでお届けする予定の作品となっております。

 そのもう一つのテーマが、第2章からはじまっていきますので、是非楽しんでいただけたら、幸いです。

 では次回もお楽しみに。

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