第1章11 花壇をつくろう 上
『登場人物』
水瀬 りの
現役高校生アイドル。不運な事故にあって死んでしまったが、神さまが半分生き返らせてくれた。
生き返る為には、何もない荒野に国を作る事である。
アリア
りのの手助けをする為、神さまからいただいた妖精。
1日3回まで、お助けアイテムをだしてくれる。
【本編】
やっぱり殺風景よね。
りのは何もない荒野を眺めながら、そんな事を考えていた。
朝食は皆んなでバナナやらを食べて過ごし、湖で顔を洗ったり、水着に着替えて制服を洗ったりした。
(制服といっても、ワイシャツと下着、スパッツなどだ)
水着の上からカーディガンを羽織り、スカートを履いて、新しいお水をくみなおす。
ひしゃくで、スイカの種を植えた所に水をやり、洗ってきた洗濯物を牛小屋にかけて、現在牛小屋に背中を預けて休憩中である。
「う〜ん。やっぱり何もないと、イマイチ何もやっていないように、見えちゃうわね」
本当は、くわで穴を掘ったり、スイカを植えたりとしているのだが、看板やビニールハウスなどが無いため、事情を説明しないと解らないありさまである。
りのは、達成感がほしかったのであった。
そうだ!と何か閃いたりのは、木の枝を数本、スイカを植えた所に持っていき、線を描き始めた。
植えた所を四角形で囲い、四角形の4箇所、角っこの方に木の枝をつきさした。
まるで、ボクシングのリングみたいに見える光景を前にして、アリアを呼んで感想を聞く。
ふむふむ・・なるほど。
横が危なくないか?とアリアに指摘されて、りのは納得する。
今はまだ、何も無い畑ではあるが、いずれはスイカが実る予定だ。
横がガラ空きだと、スイカを食べられてしまう可能性がある。
主に、牛と猿にだが。
モー?っと鳴くゴン太を横目でチラリと見ながら、対策を考えるりの。
それならば!!っとりのは釣り竿を持ってきて、釣り糸をスイカ畑の木の棒に、糸を張り巡らせて囲むようにする。
お手製のボクシングリングの完成である。
「良し。これなら横から侵入はできまい」
りのが両手を腰にあてながら、小声で呟やく。
アリアは、上からの侵入はどうするのか?と思ったが満足そうなりのを見ると、何も言えなかったのであった。
「ちょっと思いついたんだけど、この調子で、ガーデニングを作ろうと思うんだけど、どうかな?」
「ガーデ・・ニン・・グ??」
「花壇よ、か・だ・ん!つまりはお花を沢山植えたいのよ」
それなら初めっからそう言ってほしいと、アリアは心の中で呟いた。
そんなアリアに気付かずに、りのは宣言する。
「りの帝国は、お花がたくさんある、綺麗な国にするのよ!!お城の周りには沢山のお花がある。なんて素敵な国なのかしら」
「・・・お城があればな」
アリアがつっこむが、善は急げ!!とりのはくわを片手に、森へと向かって行くのであった。
森の中。
毎日通っている為、流石に疲れる事も少なくなってきたし、毎日少しずつくわを振っている為、体が慣れてきたのか、筋肉痛も減った。
危ない箇所も大体解る。
りのは慣れた様子で、森の中をつき進む。
お花、お花、と心の中でつぶやきながら、お目当ての花を探す。
「な、なぁ?お花って何処にあるんだ?」
アリアの質問に、りのは不思議に思いながら、たずねかえした。
「普通に考えれば、森の中でしょ?まさか・・この森にはない・・の?」
「ある事にはあるが、お花の種類じゃよ」
アリアに説明されて、ようやく何が言いたいのかを理解する。
つまり、花の種類によっては無いものがあるという事だ。
言われてみればそうだろう。
向日葵がほしいと言っても、季節が関係する。
同様に、チューリップもコスモスもパンジーもそうだ。
「・・・綺麗な花なら何でもいいんだけど」
りのはこう答える事しか、できなかった。
今が何月何日なのか解らない為、どんな花が咲いているのかが解らない。
綺麗でいい匂いのする花であれば、何でもいいとは思うのだが、アリアの言葉を聞いて目的が決まる。
「四花はどうじゃ?とても綺麗で一年中咲いている花じゃ」
一年中ってすごい・・と言う、驚いた表情で呟くりのを見て、何故か勝ち誇るアリア。
「気温や湿度などに関係する花。名前の通り四色に変化する事からその名前がついたとても綺麗な花だよ」
アリアが言うには、暖かくなると赤い花を咲かせ、暑くなると黄色い花を咲かせ、寒くなると白い花を咲かせる花らしい。
「いい、すごくいいわ!りの帝国にピッタリじゃない!アレ?四色よね?一色足りないけど?」
「ふむ。普段はピンクの花を咲かせており、さっき言うた通り、様々な色に変化して、丁度四色なのだ」
現実世界にはない花。
りのは改めて、ここが異世界なんだと認識する。
羽が生えた蛇に、襲われたりとした時にも認識させられたが、この世界になれてきたからなのか、ここが現実世界に思えてならない。
その事をアリアに伝えると、アリアは目をパチパチさせ、固まっていたかと思うと、急に怒りはじめた。
「良いかりの!!私は妖精なのよ!!」
あっ、なるほどと、りのはアリアが怒っている理由に納得してしまう。
言われてみれば、妖精とずっと一緒に過ごしているんだから、異世界にいる事を認識し直す必要性がない。
「ごめん、ごめん。それじゃぁピンク色の花を探せばいいのね?」
「ぐぬぬ、まだ言い足りないが、大事な事だから先にそっちを優先させよう。騙し草という花を知っているか?」
「騙し・・そ・・う?詐欺師か何か?」
「詐欺師が何なのかを聞きたい所じゃが、ふざけてる場合じゃないぞ」
ふざけているつもりはなかったのだが、アリアが真剣な表情をしているのをみて、重要な事なのかもしれないと、りのは姿勢を正した。
「騙し草は人々や動物、植物、何でも騙してしまう花じゃ。騙して楽しむ所を除けば、害はない花じゃよ」
「何、その悪趣味な花。けどちょっと気になるわね」
「りんごだと思って喜んで近づくと、騙し草だった時の絶望感はハンパない」
言われてみればそうかもしれないが、りんごと花を見間違える事なんてあるのだろうか?
りのは首を傾げた。
「・・信じてないな。とにかく、何かを見つけても広い食いしたり、歓喜したりするなよ」
騙し草に何か因縁的なものがあるのか、アリアは騙されるもんかと、ブツブツ呟いていた。
とにかくと、話しをまとめてアリアに確認をする。
ピンク色の花を探し、何か食べ物があっても広い食いしたりせず、アリアに確認すればいいのね?と。
りのはくわを片手に、アリアを連れて森の奥の方に進んで行くのだったが・・・。
「り、り、り、りの!!!肉!肉!」
「あ、あんな所にサーロインステーキが落ちてる訳ないじゃない!!」
騙し草に騙されてしまうのであった。
次回第1章 11 花壇を作ろう 中
※ここまで読んでいただきありがとうございます。
やっとファンタジー感がでてきたかなと。
火を起こしたり、釣りをしたりと、現実世界っぽい話しばかりでしたので、異世界ファンタジーじゃないじゃないと、思われていないか心配でしたが、やっとファンタジー感あふれる話しになっていきます。
あまり書くとネタバレ的な事につながるかもなので、この辺で。
では、次回もお楽しみに。




