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おうこく!  作者: 伊達 虎浩
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第1章8 畑をつくろう 上

『登場人物』

水瀬 りの

 現役高校生アイドル。不運な事故にあって死んでしまったが、神さまが半分生き返らせてくれた。

生き返る為には、何もない荒野に国を作る事である。

アリア

 りのの手助けをする為、神さまからいただいた妖精。

1日3回まで、お助けアイテムをだしてくれる。


【本編】


りのはご機嫌であった。

鼻歌を歌いながら、くわを持ち上げ、昨日の続きを黙々としていた。

恵みの雨という言葉を何かの小説で読んだ事がある。

恵みの雨は、枯れた木や荒れ果てた荒野を潤したり、水不足に悩む町の人々や動物にとっても、死活問題となっている。

そしてこの荒野にも、どうやら当てはまっていたようだ。


「なんて楽ちんなの」


昨日に比べて、雨のおかげで土が柔らかくなっている。

くわを振り上げ”ヒトリゴト”を口ずさみながら、ザクザクと掘り進む。

しばらく続けていると、アリアが休憩にしたら?と声をかけてきた。

アリアの提案を受け入れて、馬小屋に背を預ける。

猿山連合国から持ってきた果物を、アリアとゴン太、おさるさんと食べ始めたりのは、あることに気付く。


「おさるさんの名前どうしようかな」


「あぁ。そいつはモッキーだ」


「名前つけるの早っ・・まぁ可愛いからいいか。よろしくねモッキー」


モッキーの頭を撫でながら、スイカを頬張るりのは思いつく。


「ね、ねぇ、アリア?スイカの種を植えて、スイカ畑にしない?」


「おお!それは名案だな!ププププププ」


「ちょ、ちょっと。スイカの種を飛ばすのやめて」


大事な種を吐き出すアリアに焦って注意するりの。

アリアが種を吐き出す光景に、懐かしさを覚えながらりのは、アリアが吐いた種を拾い集める。

最近では、種無しスイカとか、カニの身をむくのがめんどくさくないようにと、むいてあるカニの身だとかが売られているが、みんな解っていない。

種がたくさんつまっているスイカこそ、甘みが素晴らしく、みずみずしいスイカであり、むくのが難しいカニの身だって味が違う。

そう考えていたりののお腹が鳴った。


「カニカニカニカニカニこれいかに?」


お腹をさすりながら、カニ☆ドゥーラックを口ずさむりの。

とりあえず畑の作り方を調べようと、サバイバル本を開く。

畑ってガーデニングと同じ作り方だっけ?とりのは首をかしげる。


畑を作るのは簡単なようで簡単ではない。

土や肥料、虫や動物対策も必要になってくるし、実がみのるまで時間もかかる為、根気強さが必要になってくる。


りのは考える。

土は、まぁ大丈夫だろう。

虫も、周りを見渡すが見かけない。

肥料はゴン太やモッキーに任せるとして、やはり問題なのは水であろう。


「ね、ねえ。アリア?じょうろって出せる?」


「だせるも何も知らんよ」


お助けアイテムはランダムなので、アリアには解らない。

しかし、先日のシャンプーの時みたいに、うまくいくのでは?とりのは考えたが、もしうまくいかなかったらと思うと使うか迷ってしまう。


「いゃ、水問題はとりあえず置いといて、畑を掘ってからどうするかを考えよう」


元気な時に掘って、休憩する時にどうするかを考える。

これが、何かをする時の正しい過ごし方だ。


りのはスイカの種をなくさないように、ポケットの中に入れ、作業を再開させる。

これと同時に、昨日の目的でもあった、森までの開通作業もおこなう。



昨日は温泉かお水と考えていたが、実際開通させてどうするのか?

泥水は飲めないし、温泉に入るには、かなり深く掘らないといけない。

開通させる事ができれば、いちいち森に行かなくても良くなると考えたが、何も考えていなかったと反省する。


見切り発車もいいところだ。


hiroto先生じゃあるまいし。


りのが先生をdisっていると、モッキーがやってきた。


「ん?どうしたのモッキー?」


モッキーはりのの腕を引っ張りながら、森を指さす。

どうやらモッキーは、森に行きたいみたいであった。

確かに、喉が渇いたわねとりのは考える。

どうせ森に行くなら、じょうろがほしい。


「アリア!お助けアイテムをお願い」


「ん?もう使うのか?ま、まぁりのがそう言うならかまわんが・・シポル」


アリアが呪文を唱え、出てきたものを見たりのは絶句する。


「こ、これってあれだよね?神社のお参りとかでよく見かけるやつ」


でてきたのは”ひしゃく”とよばれるものであった。

しかし有り難いことに、木でできた”手桶”もついている。

最近はホースやバケツがある為、街中や住宅街では見かけなくなったが、お墓参りではよく使われているものであり、神社には今でもひしゃくは置いてある。

昔はひしゃくと手桶は一家に一つは置いてあり、夏の暑い日には手桶に水をいれ、それをひしゃくですくって、庭にまいたり、玄関先にまいたりとしていた。


「今でも置いてあるのってサザエさんのお家ぐらいじゃないかしら?」


りのは手桶にひしゃくを入れ右手に持ち、左手はモッキーに掴まれる。

アリアは頭の上に乗ってきた。

チラっとゴン太を見ると、牛小屋の日陰部分で気持ち良さそうに寝ていた。


「で、でもこれで両方安心よね?」


手桶に水をくんで帰れば、畑に水をまけるし、のどが渇いたら飲めばいい。

しかし、神社に置いてあるやつひしゃくについて考える。


「これって本来、口の中や手を清める為の道具であって、飲む為に使っちゃっていいのかしら?」


りのの言う通り、本来神社に置いてあるひしゃくの理由はそれであり、暑い日に少しでも涼しくしようとしてまいていたあの光景も、本来は水をまいて玄関先を清める効果があるといわれる”うち水”が、いつのまにか、暑い日に水をまくのは、温度を下げる役割だからだと勘違いされた為である。

その為本来であれば、ホースやバケツから水を撒くのは間違っていなくもないが、お正月など祝い事の時には是非、ひしゃくを使ってほしい。


ちなみに、ひしゃくには種類があり、神社に置いてある中で正しいとされているのは、木製である。

たまに見かけるアルミ型のひしゃくは、汁物用らしい。

りのはこの事を知らない為、悩んだ挙句結論をだす。


「ま、飲んで体を清めるって事で大丈夫よね」


実に現代っ子らしい発言に、アリアはりのの頭の上で、頭を抱えるのであった。

こうしてりのは森の中へと入って行った。


次回第1章8 畑をつくろう 下

※ここまで読んで頂きありがとうございます。

さて今回はいかがだったでしょうか?

ひしゃくについて書かせていただきましたが、一応調べて書いております。

神社に置いてあるアルミでできたひしゃくについて、もし間違っていたらごめんなさい。

調べて書いたのですが、念のため。

しかし、作品中にも書きましたが、今でも水をまいてますって方や、見たって方はいらっしゃいますでしょうか?

ではこの辺で、次回もお楽しみに。

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