表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
北海道の現役ハンターが異世界に放り込まれてみた  作者: ジュピタースタジオ
第一章 本物のハンター、異世界に行く
35/108

35.ヒドラ退治


「ヘビは美味かったけど、ヒドラはもっと美味しいのよ!」

 へーそうなんですかおネエさん。

 他のメンバーも同意します。


「ああ、持って帰ったらメチャメチャ高く売れるんだけどな。さすがにそれは無理だからなぁ。でもいくらか干し肉にしたり、あれはいい金になったな」

「なんといっても皮が高く売れたなあ」

「皮は持って帰れるけど、肉は無理だからな。腐っちまうよ」

「その場でヒドラを食える。まあ、ハンターの特権だな」

「食い残しちゃうけどね……」


 昨日はそんな話をしまして、今日は朝から見つけたヒドラの道を追跡します。


「フンだ。新しい」

「近くにいるな……」

「音を立てずに、慎重に近づくぞ」


 ……。

 ゆっくり、ゆっくり進みます。


「……いた」


 川のある水辺。

 とぐろを巻いて寝ていますね。

 いや、休んでいるだけですか。ヘビって寝るんでしょうかね?

 川の上流、200mぐらい先にいます。脱皮したばっかりですか、まだ皮が少しこびりついています。体が落ち着くまではあんまり動きたくないってことですかね。


 でかいです!

 とぐろの直径が5mはあります。胴回りは予想通り50~70cmというところでしょうか。太いです。

 頭が……四つあります。

「頭はいくつかな」

「四つですね」

「ってそれ遠眼鏡(とおめがね)か! いいの持ってるなシン!」

「えっそんなのあんの。貸して貸して!」


 大人気ですね双眼鏡。盗賊騒ぎの時バーティールさんは一度見てますが、みんなで順番に見てはすげえすげえと大喜びです。

 ケンカになりそうですわ。


「頭が四つだが、もう一つ小さいのが生えかかってる。五頭だな」

 バーティールさんがうんと頷く。

「……大物だね」

「バリステス最大の獲物になるな」

 緊張感がこちらにも伝わってきます。


「さて、俺たちだと弓で射かけて、取り囲み、斬れるところから斬りつけて少しずつ弱らせて、首を順に斬り落として動かなくなるまでずっと戦闘。シンならどうする?」


 この世界大物を一撃で倒す方法はありません。傷を多数作って出血死を狙うのがハンターのセオリーですか。でも僕だったら……。


「皆さんは隠れて遠くから取り巻き、僕は川岸の高い位置から胴の太いところに向かって数発射撃。弱って動きが遅くなったところで頭を順番に射撃ですね。ヘビの生命力考えたら撃った途端にバタバタかなり暴れるとは思いますが、弱るのを見守るのが一番安全かと。あれだけ大きければ逃げても追えますし隠れようがありません。弱って休んでいるところをまた狙うこともできると思います」


「なんというヘタ……慎重さ。さすがハト殺しねえ……」

「いや、俺らだって毒牙は怖いしな。安全に狩れるなら文句はねえよ」

「皮が高く売れるからな、あんまりみんなで切り刻むのは確かにやりたくねえ」

「賛成です」

 うんうんと頷くメンバー。


「じゃあ、シンとサランは別動隊で川岸の高い所から狙え。あそこがいいだろう」

 そういってバーティールさんが崖の上を指さす。

「俺たちはこっそり間をおいて取り囲んでおく」

「開始の合図は?」

「シンの魔道具はバカでかい音を出すからな。それでいいだろ」

「了解」

「了解」

「賛成です」

「じゃ、頼むぜシン」

「わかりました」

 そう言って、僕とサランは藪をかき分けて斜面を登っていきます。

 慎重に、音を立てないようにゆっくりと。


 崖の上に到達し、息を整えてから崖上から顔を出します。

 上から見るとすごい迫力です。ぐるぐると巻いたとぐろの上に四つの頭を載せて、それぞれの頭が四方向を向いていますね。警戒しながら休んでいるということですか。五つ目の生えかかった頭は首の根元で寝ています。

 この大きさなら天敵はいないでしょう。舌をちろちろ出したりすることもありません。惚け切っておりますな。なので、四つの首の付け根がとぐろの真上あたりに鎮座しております。狙うならそこでしょうか。

 距離100mってところ?


 背負っていたバックパックを前に置き、その上にレミントンM700ライフルを載せて見下ろし射撃します。弾は308ウィンチェスターを四発フル装填し、横に予備弾を並べます。スコープから覗くと……バッチリですね。外しっこない距離です。ライフルは距離100mで500円玉ぐらいの大きさにしか散りません。


 ヒドラから50mぐらい距離を取ってメンバーのみんなが配置に着きます。

 ここから見えますね。手を振るとみんな手を振り返して来ます。OKですね。


 ヘビは心臓があるところが胸としたら、その上が首。

 つまり、首の付け根が集まってる太い部分の真ん中に心臓があるはず。普通のヘビだったら心臓の場所なんてわかりませんが、これはヒドラだからね!

「サラン?」

「周囲になにもなし」

「撃つよ。耳塞いで」


 距離比較的近いし、見下ろしだからスコープの十字線より少し上に当たるはず。

 的がでかい! でも心臓があるとしたら……。


 ドオ――――ン!! (ドォ――――ン……ドォ――――ン……ドォ――ン)

 銃声の木霊を聞きながらボルトをチャキッと操作!

 ぐわっ。

 四つの頭を持ち上げて周囲を見回すヒドラ!

 その首の付け根の下にもう一発!


 ドオ――――ン!!


 とぐろが解け、血がびゅっびゅって吹き上がってまき散らしている!

 心臓か、それにちかい大動脈に当たったか!


 ドォ――――ン!!

 暴れ出した!

 のたうち回ってる!


 裏返った首の付け根にもう一発!


 ドォ――――ン!!


 どこに当たったかはわからないけど!

 たぶん当たった!


 みんな駆け寄ってきますけど、暴れてのたうち回るヒドラの立てる水しぶきにまだ攻撃できる状況じゃありません。遠巻きに状況を見ています。

 チャキッカシャッ。排莢口から直接一発放り込みボルトを閉じます。


「シャアアアアア――――ッ!」

 頭が一つ持ち上がって盾を持つミルドさんを威嚇します。


 その頭を……。


 ドォ――――ン!!


 びし!

 眼球が飛び出し、ばたっと倒れます。

 残り三つ!


 もう一つの頭がまたミルドさんを狙います。


 チャキッカシャッ。


 ドォ――――ン!!


 頭がぼこって膨らんでぱっくりと割れます。

 残り二つ!


 おネエさんのファイアボールが頭の一つに当たります。

 火に包まれています。ぶんぶん頭を振っていますね。

 もう一つの頭がバーティールさんの槍と対峙中。

 しゅっ。しゅっと一杯に口を開いた頭が飛んできます。

 あれは怖いですね!

 頭は狙えませんが、首の付け根ぐらいなら……。


 ドォ――――ン!!


 ビシッ!

 首に当たりました!

 とたんに首の動きが悪くなります。

 ざく!

 バーティールさんの槍が顎から脳天まで突き刺さります。

 ぶんぶん頭を振るヒドラ。

 バーティールさん槍から手を放して離れました。

 しっぽがビュンビュン薙ぎ払われています。他のメンバーは近づけません。


 おネエさんが燃やした頭に弓のラントさんが次々に矢を突き立てています。

 バーティールさん、「斬るな――! 皮に傷がつく!」と声を上げてみんなに離れるように指示しました。


「サラン?」

「大丈夫。周囲になにもなし」


 のたっのたっ……。

 動きが悪くなるヒドラ。

 完全に死にきるまで、すこし時間がかかるでしょう。

 そのまま監視を続けます。


 皮も肉も高く売れるそうですから、あんまり穴開けたらダメでしょうね。

 猟協会の合同駆除で、飛び出したシカにみんなで一斉射撃して穴だらけにしちゃったことありまして、引き取ってもらえなかったことがあります。

 十五分ぐらい見守ってると、完全に動かなくなりました。


 バーティールさんが崖の上の僕らに向かって手招きします。

 終了です。



次回「ヒドラを食べよう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ