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北海道の現役ハンターが異世界に放り込まれてみた  作者: ジュピタースタジオ
第一章 本物のハンター、異世界に行く
32/108

32.大きすぎる黒幕


 すっと、前に男が立ちふさがります。

「こんばんは」

「だれ――ぅ? なにかごよう――?」

 目深にかぶった黒い帽子、仕立てのいい黒服。左手に握った太い杖。

 ジニアさんの言った通りの人物ですね。その左右に別に二人。


「一緒に来てもらいますよ。エルフのお嬢さん」

「お断りします」

 僕がサランの前に出ます。

「君には用はないんですよ」

 そう言って、右手で杖に手をかけ、するっと仕込み杖を半分抜き……。


「GO!」


 ドゴン!

 ドゴン!

 ドゴン!


 僕がM870を三連射!


 いっせいに駆け寄ってきた黒服どもを僕の後ろで振り返りながら抜刀したサランがズバッズバッと二人、切り伏せる!


「ぐあっがあああ――――!!」

 帽子の男は足を撃ったのでね、倒れてもがいておりますな。


『撃つときはためらうな』

 某アクション映画の名言です。

 男に銃口を向けたまま、シャキッシャキッシャキッと今消費した分のショットシェルをチューブ弾倉に込めます。M870は弾込めの間も引き金を引けば弾が出るのでスキがありません。いい銃です。


 ばらばらとレンガ街からハンターたちが集まって来ます。

「見てたよ! 大したお手並みだな! さすがラクーンヘッド」


 銃について何の予備知識も無い人間がですね、夜にいきなりあの爆音と火炎を浴びせられたら動きが止まりますよ。三人何もさせずに撃てたのはその効果が大きいですねたぶん。


 真っ先に駆け寄ってきたのは剣を持ったジニアさん。

「ジニア、こいつか?」

 まだ腕を吊った副リーダーのベルタスさんが抜き放たれて落ちている仕込み杖を遠くに蹴り飛ばしながら聞くと、ジニアさんが頷きます。

頭に包帯巻いたアンダルさんもやってきました。


「まったく、嬢ちゃんを誘拐しようだなんて、とんでもない野郎だな」

 チーム・バリステスのメンバーも集まって来ましたよ。剣や槍を倒れた他の四人の男たちに突き付けておりますね。


「なんとかなったな。全くあぶねえことをしやがる……」

 ギルドマスター、バッファロー・バルさんがランプを下げてやってきます。

 男、足を抱えてぎりぎりと歯を食いしばっておりますね。


「帽子を取れ」

 バルさんが言うと、バリステスのリーダー、バーティールさんが槍の穂先にひっかけて倒れてる男の帽子を脱がせて放り投げました。


「……執事さん」


 驚きました。


 あの、トープルスの空中庭園でハトの駆除を頼んできたあの執事さんじゃないですか!


「クソッ、ハト殺ししか能がない男だと……」

 僕そんな風に思われているんですかね。


「知っているのか?」

 バルさんが驚いて僕に聞きます。

「ええ、トープルスの領主、ハクスバル伯爵の執事です、この人」

「貴族が……」


 全員、絶句します。


 夜に銃声ですからね。他の住人も何事かと今頃になって窓から顔を出したりしてますね。他にもやじ馬が集まって来そうです。


「貸せ」

 バルさんがバーティールさんの持つ槍を奪い取って、いきなり執事さんの胸を突き刺しました!

 えええええ――――!!


「ぐぼ!」

 執事さん、一言呻いて、がっくり……。



「……面倒なことになる。無かったことにする」


 そう言って倒れている他の4人の男の胸も次々に突き刺していきます。

 一人、腹を撃たれて虫の息でしたが、動かなくなりました。

 全員、剣や棍棒を抜いて握っていましたし、執事さんも仕込み杖を持ってましたから弁解の余地もありませんね。



 ぴゅい――――!


 バルさんが口笛を吹くと、ギルドの馬車がやってきました。

 男たちが無言で、次々に死体を馬車に積み込んでいきます。

 血の上に砂を撒いて、後始末も……。


「マスター、いきなり殺さなくても、いろいろ聞きだせたんじゃねえの?」

 バーティールさんが言うと、バルさんが首を振ります。


「家名がかかってる。多分喋らん。いや、喋られるほうが面倒だ。ハクスバル家の関係者に手をかけたと逆にタヌキ頭が縛り首にされかねん。ただの誘拐未遂犯で葬ってあとは知らん顔するほうがいい」


 ……怖いですね。警察も裁判所も無い世界ですからね。

 僕らそんな危ない橋渡ってたんですか……。


「大物すぎるってこった。ここで見たこと聞いたことはお前たちも他言無用だ。今夜のことは忘れろ。何を聞かれても知らない、寝てただ。わかったな」

 バルさんの怖い怖い顔に、全員でぶんぶんと首を縦に振って頷きます。

 僕たちも、こうなってしまってはもう何も言えませんね……。


「よし、じゃ、解散。タヌキ頭は今夜はバリステスのホームに泊めてもらえ。明日はギルドに顔を出せ。以上だ」

「あのっ」

「ん」


「みなさん、今日はありがとうございました」

 サランと二人で頭を下げます。


「いいってことよ。気にすんな」



 その後、バリステスのホームで大歓迎されましたね。

 サランがね。


「いやあハラハラしたぜ」

「すごかったなあの剣さばき。嬢ちゃん剣も達人だな!」

「パーティーに入らないか? 歓迎するぜ?」

「そっちのあなたもね。可愛がってあげるわよ」


 もうなんか勝手に酒が出てきて大騒ぎです。

 サランが、これも汚いバリステスの台所を綺麗にして料理をはじめて、みんなで飲み食いして大騒ぎ。

 まあ、朝まで寝ないでやってましたからねえ。一応、護衛してくれてることに、なるんでしょうねえ。

 うん、僕はすみっこでおとなしくしてましたよ。

 疲れたし、寝ちゃいました。



次回「事後処理って大変だ」

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