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北海道の現役ハンターが異世界に放り込まれてみた  作者: ジュピタースタジオ
第一章 本物のハンター、異世界に行く
18/108

18.ライフル選びは銃よりも弾が先


 ライフル。それは猟師の最強武器。

 狩猟においても、戦場においても、人類が手にできた最高の武器の一つです。


 散弾銃とはケタ違いの火薬量。その威力のヒミツは弾速。

 秒速400m程度の散弾銃に比べ、800mを超えるライフル弾のエネルギーは散弾銃の数倍の威力を誇ります。


 マンガやゲーム、映画で散弾銃はすごく威力があるように描写されるけど、実際に所持して撃ってみた感想は実は「たいしたことがない」だったりします。所持許可をもらって最初に持てるだけあって初心者に持たせても危険の少ない低威力の銃なんです。

 キツネ駆除にBB散弾(4.5mm)を撃ち込んだりしますけど、キツネが血まみれなんてことにはあんまりなりません。即死もしませんね。一発撃ち込んで足止めしてから止めにもう一発が普通です。あとでどこに当たったんだろ?ってふさふさの毛をかき分けてみないとわかりませんね。その程度です。

 ライフルの弾薬って薬莢が頑丈な真鍮製でしょ?

 それに対してショットガンはどうですか。薬莢プラスチックじゃないですか。

 それで十分な火薬量しか入って無いってことになります。昔は散弾銃、紙薬莢でしたからね。ボール紙です。ショットガンがライフルより威力があるわけないです。


 ライフルの300mを超える射撃距離でも数センチ以内におさまるその命中精度のヒミツは銃身に刻まれたらせん状のライフリングにあります。

 弾丸を回転させて飛ばすことによりコマのように安定させて飛ばせるのがその理由。

 僕の散弾銃もサボットスラグではハーフライフルで回転させていますけど、その命中精度はケタが違います。


 しかし、ライフルほど選択が難しい武器もないでしょう。

 事実上散弾銃は全て猟銃。狩猟に最適な銃であるのに対して、ライフルは射撃競技から軍用アサルトライフルまで性能も使用目的もバラバラでおそろしく種類が多い。


 ……とは言っても僕は猟師だからね。猟銃一択だね。


 初めてのライフルだからあまり大口径の物は避けておきたい。弾薬が極端に高いものもどうかと思う。うーん悩む。

 定番なら308ウィンチェスターか、30-06スプリングフィールドか。

 シカ、イノシシならこれで十分。

 ヒグマを撃つ人は300ウィンチェスター・マグナムも使う。

 これ以上の大口径はグリズリーやヘラジカがいるアラスカやカナダ。ゾウがいるアフリカ用だね……。

 そんな大型獣相手にするのはまだ先だな。


 猟師はどの銃を使うか、では考えません。

 どの獲物を獲るか、で考え、そのために使用弾を選びます。

 どの銃を買うかはその後です。銃の優先順位が弾よりも低いんですよ。

 308も30-06も300マグナムもライフル弾の名前です。


 うん、308にしよう。

 最初のライフルだしね。世界で最も普及しているライフル初心者にもオススメのハンティング用弾薬です。北海道の銃砲店ではこれより弱い弾は扱っていません。最低限必要な威力があるのがコレです。ホーワの30カービン弾なんかでとれる獲物は北海道にはいませんから。


 軍用の7.62mmNATO弾としても有名だけど、軍用弾として採用されたのは後の話で、元々はウィンチェスター社がアメリカ本土にいる野生動物についてはこれで全部カバーできることを前提に狩猟用に開発した小型の弾薬です。アメリカ本土で一番大きい獲物はクロクマで、ツキノワグマよりちょっと大きい程度で、シカもエゾシカよりは小さいですから。

 無煙火薬が改良されまして、短い薬莢でも十分な威力が得られるようになった戦後生まれのライフル弾なんですよ。

 だから軍用弾としては308ウィンチェスターと1906年製の薬莢の長い30-06スプリングフィールドは威力も弾道もほとんど同じです。これ大きく変わっちゃうと軍としては訓練をやり直し、マニュアルも総入れ替えになっちゃいますから同じなんです。

 ただ、30-06も改良された火薬を使うようになりましたので今は狩猟用については薬莢が大きい分、308より威力がありますけど。

 今は僕の腕前から考えて308より威力がありすぎるのも、弾が高すぎるのも、やめておきたい。


 実はこの三つの弾薬は、口径が全部同じ30口径(7.62mm)です。308、30-06、300magの順で薬莢が太く大きくなり、火薬量が異なります。


 弾頭はどうするか……。

 ここはやっぱりバーンズ弾頭でしょう。

 北海道で鉛弾が禁止されてから、銃弾は全て銅でできてる銅弾が使われてます。鉛弾を銅で被覆したメタルジャケットより少し軽い。そのため、最初はこの弾に切り替えた猟師から、「銅弾は当たらない」という誤解が広がりました。実際は、弾頭重量が変わったのでより高速弾になり弾道が変化しただけだったんですが。


 使う人が多くなって、銅弾は実は鉛弾より強力だと言う評価が出てきました。

 元々、全部銅でできているバーンズ弾頭の開発目的は、より強力な弾丸の実現。

 鉛弾だと柔らかすぎて獲物に当たると体内でバラバラになってしまいます。そのためマグナム弾などの初速の高い弾薬で使うとそのエネルギーを使いきれない。

 銅弾は硬くて丈夫なので高速で撃ち出して獲物に当たっても弾頭がバラバラにならず先端が潰れた状態のまま獲物の体内を突き進み急所に到達するので、こっちのほうが殺傷能力が高いんです。なので、最初は「銅弾は獲れない」と勝手に思い込んで嫌々銅弾を使っていた北海道の猟師も今は納得して銅弾を使ってます。


 と、いうのは猟協会の先輩たちの話だけど。



 朝、宿屋の部屋でマジックバッグを出して座る。

 金貨一枚をマジックバッグに入れて「バーンズ弾頭308ウィンチェスター」と念ずる。

 20発入りが一箱出てきました。

 よしっ、購入できるぞ! これで弾の心配は無しです。

 銀貨九枚のお釣り。一箱銀貨三枚、日本円だと一発百二十五円かな。

 ……散弾銃のサボットスラグより安いじゃないか……。あれ一発3ドルもするのに。


 鉄砲の弾って、大きさや威力で値段が変わるわけじゃないです。

 大量に作られてて一般的に出回ってるものほど安いです。小口径でもレアな弾は高かったりするんですよね。


 次は金貨を三十枚入れて、いよいよ銃本体の購入!


「レミントンM700 ステンレス!」

 頼む! 細かい品番とかは任せた!


 ……ずしっ。

 マジックバッグが重くなる。


 出てきた! バッグを開ける。


 いつ見ても不思議な光景だ。普通の黄色い鞄に、中を覗き込めば長い銃が深くまで入っている……。


 取り出すとステンレスで銀色に輝く銃身と機関部に、プラスチックの銃床。ボルトアクションのライフル。

 レミントンM700だ……。おじいちゃんが持っていたのとおんなじだ。

 おじいちゃんのはステンレスじゃなくて黒染めで、銃床もクルミ材だったけどね。

 もちろんステンレスとプラスチックになったことにより、耐候性も耐久性も飛躍的に向上しているというものです。水にぬれても大丈夫。異世界だったらやっぱりコレだね。

 鉄砲のステンレスって、錆びない成分が少ないらしくて食器みたいに錆びないってわけにはいきません。ある程度の手入れは必要。覚えておこうね。


 バッグをひっくり返す。

 金貨が二十二枚落ちた。ってことは金貨八枚。八万円っすか!

 安いなアメリカ!


 次はスコープマウントとスコープ。

「レミントンM700スコープマウント30mm、ニコン16倍・口径50mmスコープ!」


 両方で金貨七枚。スコープの値段が銃とかわらん……。

 これでも安いもんですよ。ニコンのスコープは最高です。

 ライフルのスコープはライフルより高い値段のもの買わんと性能が発揮できないぞとくどいほど先輩に言われたものです。

 光学製品はやっぱり日本製です。コストパフォーマンスが高いです。

 海外スコープメーカーの最高級品は実は中身は日本製だったりします。


 ニコンのライフルスコープはどれもアイリリーフが長いのが特徴です。

 つまり、目と接眼レンズの距離が長い。

 なので、ライフルの反動を受けても目をスコープにぶっつけるというケガがまず心配いりません。


 アメリカとかのアクション映画でも、目をスコープの接眼レンズにくっつけて見ているシーンがたまにあります。顕微鏡や双眼鏡じゃないんですから、あんなふうにして撃ったら目にスコープがめり込んで失明しちゃいますよ。

 空気銃だったらそれでもいいですが、ライフルのスコープと目の距離は最低10cm以上無いとダメです。

 変なスコープ買ってね、目をスコープにぶっつけてケガをして、それ以来構えが硬くなっていつまでたっても腕が上がらないハンターを知ってます。

 僕はニコンのライフルスコープ、オススメですね。


 ウキウキしながら組み立てて、スコープを取り付ける。

 ついにライフル……。僕のライフル、あこがれのライフル。

 これで僕もやっと一人前の仲間入りの玄関口の手前に来た。


「すごいねえ。でもなんか前持ってたやつよりスマートだよね」

 うん、散弾銃と比べたらほっそりしていて、頼りなさげに見えるかもねサラン。

「でもね、威力も射程距離も前の倍以上なんだよ」

「へえー……」


 僕が嬉しそうなんで、サランもニコニコしてる。

「ゴメン……金貨十五枚も使っちゃった」

「そんなの私とシンなら一週間で稼げる額だよ。全然気にしないでいいよ」

「……ありがとう」

 涙でそう。



 僕が異世界でレミントンM700なんて極々、普通の、旧式で、しかも()()の猟銃を使うことをヘンに思う人もいるかもしれないな。

 軍用銃だのアサルトライフルだのスナイパーライフルだのもっとカッコいい銃、もっと高性能の銃がいくらでもあるだろうって。

 でもね、猟銃ってのは、なんだかんだ言ってやっぱり猟に使うにはこれが最適でね、昔から使われていて今も使われていて、多くの猟師に選ばれ続けているこれが一番なんです。

 なんてったって、()銃って、言うぐらいですからね。

 ここまでおじいちゃんの選択は間違っていなかった。つくづく思う。

 だからおじいちゃんが使っていたこれで正解なんだ。


 僕はおじいちゃんのライフルは受け継ぐことはできませんでした。

 散弾銃十年の使用経験がないと許可が出ないという法律の壁はどうしようもない。おじいちゃんのライフルは警察に引き取られて、廃銃になっちゃった。

 ……古かったもんね。猟協会でも、もらってくれる人はいなかった。


 M700は主要な弾薬が全部そろっています。プレイリードッグを撃つための22口径バーミントからアフリカの猛獣相手の大口径マグナムまでよりどりみどり。

 オートは特定の弾薬の専用設計が多いけど、ボルトアクションライフルは関係ないからちょっと設計を変えるだけでどんな弾でも撃てる。

 将来的にもっと大威力のライフルが必要になって買い替えても、使い方はおんなじです。手慣れた銃を使い続けることができるのがM700のいいところ。口径の種類の多さは断トツです。用途別でいろんな口径の銃をそろえても全部レミントンM700で統一できるってところがいいんです。

 性能第一、実用第一、カッコは二の次さ。




「試し撃ち行ってくるー!」

「私も行く」

 いやスコープ合わせするだけだからねサラン。


「調整するだけだよ。狩りはしないよ。今日は休んでてもいいし、買い物に行ってもいいよ」

「行く。面白そうだし」

「うん、じゃ、一緒に行こ」



 東門をてくてくと歩いてきて、農村もなくなり、荒野になります。

 岩があるな。あそこにするか。

 スプレー缶で岩に十字を書きます。

 歩数で距離をだいたい測り、岩から離れてニコンのレーザーレンジファインダーでさらに正確に測る。

 これゴルフ用品なんですけどね、500mまで距離が測れて便利ですよ。

 ぴったり50m。まずはこんなもんでしょうね。


 地面に布を敷いて、バックパックを置き、そこにM700の先台を載せて伏せの姿勢で銃を置く。

 ボルトを上げて後ろに引き、トリガーガード内の上にあるボルト・ストップ・リリースを押すと後ろにボルトを引き抜くことができます。

 この状態で後ろから銃を見ると銃身の丸い穴が丸見えです。

 ここで銃身を覗いて、岩にスプレーした十字を銃口の中心に見えるように置いておく。それからスコープを覗いて、十字線がずれていないかを見ます。

 ボアサイティング(※1)という手法です。

 うん、だいたい中心にありますな。ここで大きくずれていないということは銃もスコープマウントもスコープも正確に作られているということですな。いいですね。


 ボルトをセットし、バーンズの308を排莢口(エジェクションポート)に入れてボルトを前進させ下に回す。


「サラン、これ付けて」

「なに?」

「耳栓。すごい音するから」

「うひゃーっ」

「ほら……こうやって……」

 やってみせる。うまくできませんか。あっはっは。

 サランの横に長い耳をつまんで耳栓を押し込んでやります。

「あうんっ……」

 変な声出すな。


「撃つぞ――!」

「どうぞー!」


 銃を撃つとき、銃を何かの上に乗せて撃つのを委託射撃と言います。当然ブレが少なくなり命中精度が上がりますので撃つときは立ち木でも柵でも利用できるものはなんでも利用しできるだけ委託すべきです。

 ただ、その場合でも先台は必ず手のひらの上に乗せないといけません。

 握らなくてもいいです。乗せるだけ。

 固いものに乗せたり、柔らかい物に乗せたりすると着弾が変わります。実銃には反動がありますからね。だから、委託したいものに手を置いて、その上に銃を置きます。

 そうしないと、委託する物が無く手だけで支えて撃った時に着弾が変わります。

 直接銃をなにか構造物に押し付けて撃つのも厳禁です。

 最悪なのは銃身を直接何かに乗っけることです。アレはダメです。発射の際に銃身は振動しますので跳ねるんですよ。乗せるなら少なくとも先台にすべきであって銃身は触れている物が無いようにしなければなりません。

 僕は置いたバッグの上に左手を置いて、その手のひらの上に銃の先台を載せてます。


 ライフルに二脚(バイポット)を付けて、完全委託でスコープ調整したのに、その銃を猟に持っていったら外れたーとか言う人はこれをやってませんね……。

 バイポットでスコープ調整したなら、猟で撃つときもバイポットを使わないと当たらないってことはあり得ます。スナイパーの人は例外なくそうしてますからね。


 ドォ――ン!


 とんでもないでっかい音がして砂ぼこりが巻き上がり、スコープの視界がオレンジ色の炎で眩み、肩に蹴られたような衝撃が来きます。

 さて、見に行きましょうか。


「……音すごいね。みみせんしてても、シンのてっぽうより大きいかも」

「強力だからね」

 二人してちょっと大きい声で会話するのがなんかおかしい。


 上に5センチ、右に2センチぐらいずれましたかね。


 スコープのターレット(※2)をカチ、カチ、カチ、と調整します。


 ターレットに書いてある1click=1/4in―100ydとあるのは100ヤード(91m)で1/4インチ(6.35mm)動くという意味です。

 50mだと1クリック3.5ミリと覚えておいて、Down方向に14クリック回します。左右は右にそれていましたからL方向に5くらいかな。


 スコープでは1click=1/4MOAと書いてある場合もあります。

 MOAはミニッツ・オブ・アングルという意味です。ミニッツは時間の分と同じ。角度で言うと1度を60分割した角度という意味になります。一時間が60分なのと同じですね。

 一回のカチッは角度にして1度の60分の1の、さらに4分の1という意味です。

 実際には100yd=1/4inと移動量は事実上同じ。

 アメリカ製スコープは100yd表記、ヨーロッパ製のスコープはMOA表記が多いですね。


 次に100m距離を取り、もう一発!


 ドォ――ン!


 今度は下に2センチ、右に1センチぐらい。

 100mだと1クリック7ミリと覚えましょう。ニコンだと最初から1click=7mm/100mってターレットに書いてあります。

 UP方向に3クリック、L方向に1クリック。


 次に150m離れて……。

「ちょっとちょっとシン!」

「ん?」

「こんなに遠くで当たるの?!」

「うん」

 サランがびっくりですな。そりゃそうだよね。


 スコープで照準する時は視差が起きないように注意。つまりスコープの外周がすべて真ん丸に見えているように、スコープの中心に目があるようにして撃たなければなりません。これがずれていると着弾がずれます。具体的に言うとスコープの上下左右のどこかに像が欠けて三日月型に暗くなっている状態では撃つなということです。

 照準のやり方は人によって違いがありますのでコレが正解ということはありませんが、僕の場合だとスコープの像が正確に呼吸に合わせて垂直に上下するよう構えを整えます。この時銃が斜めになっていたり、上下の移動が斜め方向なのはダメです。それを確認してから、タイミングを見て標的に十字線が一致する瞬間に息を止め、引き金をそっと引くというやりかたをしています。ほとんどの人は発砲の瞬間は息を止めるということを自然にやっていると思います。


 ドォ――ン!

 ドォ――ン!

 ドォ――ン!


 3発撃ちます。


 三か所の着弾を見に行くと……。

 スポッティングスコープが無いから的まで往復するのが面倒かも……。


 歪んだ三角形の形に着弾してます。三角形の大きさは5cmぐらい。

 初めてのライフルで僕の腕前だとこんなもんですかね。

 エアライフルやサボットスラグでの経験が生きてます。上出来です。


 この三角形の中心を着弾点とすると、左右はピッタリ。

 上下は2cmほど下ですか。

 150mなら1クリック1センチですね。

 戻って、UP方向に2クリック回します。

 これで、150mでゼロインできたことになります。

 僕の腕前だとこの辺が一番よく使う距離になるでしょうか。


 その後、距離を変えて撃ち続けます。

 50mで上下0cm。

 100mで3cm上。

 150mで上下0cm。

 200mで7cm下。

 250mで20cm下に着弾しますね。

 つまり250mで狙う時は、目標の20cm上を狙う、ということになります。

 僕の腕前だとこれが限界でしょうか。

 スコープの十字線に目盛りが付いていますので、それを参考に上下を決めればいいですね。


 250mを次々着弾させます。

 うん、スコープは12倍にセットしたときちょうど目盛りがキリよく合います。ニコンの目盛りはそういうふうにちゃんとできています。

 上から150m、200m、250mと覚えておきましょう。

 300mは自信ないです。僕の腕だとまぐれ当たりしか期待できません。


「終了!」

「岩がボロボロだよ……すごいね威力。距離もとんでもないし」

「ねっ。凄いでしょ?」


 ……。


 不機嫌そうに頬を膨らませてプンします。

 異世界でも女の子のやることはおんなじですね……。


「あの、なにか気に障りましたか?」

「私の出番がなくなっちゃう」

 あー……、それでか。


「そんなことはないよ。こんなにばかでかい音のする武器、すぐどこから撃ったか見つかっちゃうよ。隠れて猟をするときはサランの弓のほうが断然有利です。こんなものしか使えない僕がマヌケだと思ってくださいよう……」


 ニカッ。


 うん女の子はやっぱり笑顔です。単純で助かりました。






――――作者注釈――――

※1.ボアサイティング

 銃身を後ろから覗いて穴から見える標的に、スコープなどの照準器を合わせる方法。

 新品のスコープはもちろん照準があっていないので、近距離で撃っても標的に当たらず、どっちに調整したらいいかわからないこともあるのでスコープを取り付けて最初にこれをやっておいたほうがいい。

 実際の射撃では反動もあるし弾丸も重力に引かれて落下するので、この方法だけでは合わせられない。あくまで最初の一発を的から外さないためにやる手法。


※2.ターレット

 スコープの微調整ダイヤルのこと。通常、着弾が下にずれてたらUP方向に廻し、左にずれてたらR方向に廻してやると修正できる。狩猟用スコープの調整ダイヤルはたいていカバーが付いていて、触れても回らないようにできている。つまり一度合わせたらもういじらず、狙いどころを変えるだけなのが普通。タクティカルタイプでむき出しになっているものも、引っ張りながらでないと回せないとか、なんらかのロック機構がついている場合が多い。

 国内に300mを超える民間射撃場が無く遠距離の試射ができない日本のハンターは、スコープを調整しないと当たらない距離を射撃する機会はまずない。もちろん日本では射撃場以外での試射は禁止されているので、一度射撃場で合わせたスコープのターレットを猟場でカチカチ回すハンターは日本にはいないと思われる。

次回「ハト殺しのシン」

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>>性能第一、実用第一、カッコは二の次さ。 ごもっとも。カッコよさなんてのは使う内に生まれるものですし、獲物を確実に仕留める為の猟銃ならば尚更ですね。当たらなければ話になりません。 そして、M70…
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