二人の標
……ファンタジー?
…いえ、二人の冒険譚です。
-2075年12月下旬。
真っ白な雪が夜な夜な降り続き、辺り一面雪景色となった夜。
足跡一つない積雪の上に、二種の足跡が転々と残っていた。
しかしそれも、降り続ける大雪で霞み、やがて消えた。
足跡のその先では、辛うじて窓が残る宿泊施設かあり、
その一部屋では蝋燭の明かりが仄かに洩れていた。
「なぁ、寒いのだ。もっと温かくならぬのか?」
部屋では微かな蝋燭の火に手を翳して不満そうに言う"少女"と、
「…耐えてくれ、あと数日で今年も終わる」
少し顔をしかめ、返答に困り果てる青年が二人とも座り込んでいた。
「だが寒いのだっ、レイならどうにかなるだろう?」
「流石に俺でも気温変化は出来ないぞ、マリア」
紅色のドレスを身に纏った少女、マリア・スカーレットは困り顔で眉間に皺を寄せているレイカラ=ヴィトンを不満そうに睨み付けた。
「というかだな、どうしていつまでも此処に居るのだ!もう"日本"は滅んで無くなったのであろう?」
「……3年前の戦争でな。…だが、まだ此処に残る理由は幾つかある。お前もその一人だぞ」
二人はまともな格好をしてはいるが、周りは廃墟だらけで他に人が居る気配は全くしなかった。
実際に、もう"渋谷"だったこの地区に残っている人々は、この二人しか居なかったのだ。
だが、二人は日本がまだ存在していた頃の街は知らないし、二人が話す言語も英語で日本語など全く飛び交ってはいなかった。
「……だが、マリアの言うことは最もだな。もうそろそろ、行動しなければ…」
「怪我が完治したからか?私とレイが会った頃は、レイは戦争で重傷だったからな」
14歳という幼い外見に似合わず年寄りが使うような口調のマリアは懐かしそうに語りだした。
「…あれは3年前の終戦直後だったな、海外からのイギリス使節として呼ばれたお父様の付き添いで私は東京に来たのだ」
「…だがその直後に核が落とされ、マリアは地下に避難した。護衛を務めたのが俺だった。…その時に人口の8割が死に絶え、上と天皇だけが避難した」
…俺は、その秘密が知りたい。
…マリアを置いていった父親も、俺を"造った"研究所のことも。
「…レイ?」
「……ああ、すまない」
無意識に険しい顔をしていたようで、僅かに幼さの残る顔を不安そうに変化させていたマリアの頭を撫でる。
「そろそろ休もう、俺が番をする」
「いつもすまんな、私ももう少し年を取っていれば出来たものを…」
申し訳ない、と一言謝ったマリアはそのまま埃っぽいベッドの上に横たわった。その内寝息が聞こえてくる。
レイカラは少しだけ窓から空を眺め、そして蝋燭の火を吹き消した。
明日は少しだけ東へ向かおう、そこに確か研究所があったはず。
考えることで眠気らしいものを紛らわしながら座り込み、
そして世が更けた…
今回は起きてしまった第三次世界大戦後の話を想像したものです、
何となくではありますが少しずつでも物語を作っていけたらと思ってはおります。
個人的にクールで冷静な主人公に似合わない、少女を付けたし、冒険させたいと思いました!
頑張ります(^^)/