捌
仕事をそれなりにこなし充実感が出てきた半面、帰蝶との距離はますます遠のいていった。
たまに城内で見かける事はある。
当初は屈託のない笑顔だったり、現代語での激励だったりで気に掛けてもらえたのだが、最近は他の人間と同じように微笑んで手を振るだけだ。
しかも機嫌の悪い日があったりもするのだろう、露骨に目を逸らしたりもする。
なんとなく落ち込みかけたある日、いつも身の回りを世話してくれている年増の女中が珍しく声を掛けてきた。
何を話しかけられたのかはっきり分からなかったので、とりあえずにこにこしてみる。にこにこ。
すると、うんうんと頷いて、女中は一枚の紙を捨てようとした。
・・・ちょっと待て。
その手から、すかさずその紙を奪う。すると、そこにはやたら懐かしいマスコット的なイラストが・・・
あ。俺が完全に存在を忘れてた。あの地図。
あの地図とはあの地図である。タイムスリップを引き起こしたあの。
こんな身近に手掛かりがあったじゃないか。ここまで気付かなかった俺はバカもいいとこだ。
一瞬にして今までの憂鬱が晴れた気がした。これで、現代に帰れるかもしれない。また、帰蝶が笑ってくれるかもしれない。
それにはまず、あの岩の位置を調べないと・・・
確実な情報を掴むため、無茶を承知で俺は城内を聞きまわる事にした。
もう、残された時間が少ない予感を感じながら。




