表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帰蝶の懐刀  作者: たばか
6/13

  連れて来られたのは、小高い丘にある寺だった。

  その寺には相変わらず現代的な物は微塵も見当たらず、一連の出来事からも否応なしに、あってはならないある結論が頭をよぎる。

  先に姫が本堂に入ると、それに続くよう促された。

  

  本堂の中央あたりで姫がこちら向きに振り向いた。真昼間だというのに本堂は異様に暗い。所々にあるロウソクの灯だけが姫の姿を照らしている。


  「・・・座りましょうか」


  そう言って姫はその場で、折り目正しく正座した。一呼吸置いて、俺もその場で着座した。

  座り込んだ後、あたりを見渡すと本堂の四方の端に人影が見える。完全に警戒されている。

 

  「大丈夫。あの人たちに私とあなたの言葉は通じないわ」


  フォローになっているのか、なっていないのかよく分からないフォローを姫が入れる。

  

  もし、そうだとしたら。

  

  あってはならないある結論が確信へと変わってしまう。


  「『どうやってここに?』では、あまりにも抽象的過ぎたわね・・・質問を変えましょう。あなたはここをどこだと思う?」


  最初の質問とは打って変わって、穏やかな口調だった。


  「ここねぇ・・・」

  

  推測だけで回答をするのは危険と思い、言葉を濁した。

  頑なに現代のどこか説を貫いても良かったが、姫のその真剣な眼差しの前では何故か躊躇してしまう。


  「そう言えば、どうしてわざわざ俺に声を?」

 

  言葉に詰まったので、こちらからも質問してみる。

  あまり、好ましいやり方ではない。


  「・・・服が・・・服装が私の知っている現代だったから」


  聞かなきゃよかった。


  これで全ての事柄が一つに繋がってしまう。言葉が通じないのも、この服を着てる限り異質な何かと見られるのも、現代知識が全く役に立たないのも。


  「・・・察したかしら?今は西暦1550年頃。つまり、戦国時代初期の日本よ」


  決定打のように姫は言った。


  タイムスリップの類はフィクションであり、ドラマやアニメとか漫画の世界だけの話だと思っていたが、現に自分がそんな目に合うとは。


  「信じるも信じないもはあなたの自由だけれど、少なくとも私達二人がこの世界で異質なのは確かよ」

  

  混乱気味の俺を尻目に、姫は機嫌よく続ける。


  「いやー・・・しかし、久しぶりに普通に喋るのって楽よねぇ。この時代の言葉って訛りがひどくて疲れるわ。全く違う言語なんだもの」


  正座の足を少し崩し、リラックスして上機嫌な姫さんである。


  俺は俺で、何とかタイムスリップの事実を受け止めつつあった。


  それと同時に、この時代で生きていくため術を何も持っていない事に背筋が凍る。

  俺が死なない為には、唯一言葉の通じるこの姫に生かしてもらう他ない。

 

  とりあえず聞き手に回ると、姫は色々教えてくれた。

  

  こっちに来たのは3週間ぐらい前で、起きたら姫の布団だった事。

  こっちに来た当初は言葉も知識もなかったが、取り巻きが勝手に記憶喪失と勘違いしてくれて、赤子に物を教えるかのようにみっちり勉強させてくれた事。

  あと、きちんと名前があって、その名は『帰蝶』と言う事。


  俺は、同じタイムスリッパーでも、降り立つ場所が違えばここまで違うのかと落胆するばかりだった。


  そして、最後に姫・・・帰蝶は寂しそうに睫毛を震わせながらこう言った。


  「・・・私ね。近々お嫁に行くらしいの」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ