肆
その真剣な表情と澄んだ瞳はとても美しかった。
さすがに姫クラスにもなるとモデルさんあたりを起用しているのだろう。
村おこしイベントとしては、フレンドリー感に欠ける尋ね方だが、緊張してるんだろうと勝手に解釈。
「えーっと・・・名鉄岐阜駅からバスで・・・」
「違う!」
言い終わらない内にぴしゃりと言い放たれた。ちょっとムカっとした。
あまりにもその声が大きかったせいか、姫のお付きの女性と初老の男性がおろおろしている。
何かおかしかったですかね?僕。
周りの雰囲気に気付いた姫はひとつ大きなため息をつくと、こう言った。
「落ち着いて話をできるところまでついてきて頂戴。周りの者には私から伝えておくわ」
姫は俺に言った通り、初老の男性に何やら話かけると、神輿の中に入っていった。
姫が神輿に乗った事を確認してから、初老の男性は俺を見て顎をしゃくる。
ついて来い。と。
やれやれ、といった感じだ。
ただ、唯一言葉が通じて相手にしてくれそうな人物に出会えたのは収穫だった。
ケンカ別れにならないよう、極力平常心で話を合わせて、なるべく多くの情報を仕入れよう。