弐
俺は作戦を変えることにした。
第一村人との接触に失敗した俺にはもはや、自力での解決しか方法がないように思える。
さっきの女性が特殊だったというケースも考えられなくもないが、遠巻きに俺を見る、この部落の人間の視線は冷たく、まともに取り合ってはくれそうにない。
村八分とはこういう状態を言うのだろう。俺、何もしてないけどな。
とにかく、ここの村人はみんな敵だ。完全アウェイだ。
という訳で、俺はこの部落で一番大きな通りを探してみることにした。
こんな部落でもバスぐらいは通っているだろう。バスが走っていればバス停がある訳で、そこにはおおよその地名なり情報があるに違いない。
できれば、JRか名鉄の駅へ直結のバス停だと助かるんだが。
淡い期待を抱きつつ歩を進めていると、遠くの大きな山が視界に入った。その山の山頂には城があり、黒塗りのはっきり言って地味な城だった。
どうせ建てるなら、もっと派手な方が観光効果もあるだろうに。
その地味な城を横目で眺めつつ道を行くと、ひときわ大きな通りに出た。
その道は舗装こそされていないものの、バスが通るには十分な幅員があり、日常的に車両が往来していても不思議ではない。なかなか期待できそうだ。
俺は大通りに出ると、敢えて城の方へ続く方角を選んだ。
この際、バス代がどうとか歩く距離がどうとかは問題じゃない。
肝心なのは言葉が通じる事。相手をしてもらえる事。確実に家に帰る事だ。
まかりなりにも観光施設であるナントカ城に居るであろう、観光案内人を頼りに俺は一歩を踏み出した。