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帰蝶の懐刀  作者: たばか
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 序


 この石垣を見るのは、これで何度目だろうか。

  

 俺は観光客用に作られた柵に身体を預けると、思わず大きなため息をついた。

 目的は、この岐阜城とやらの近くにある岩を撮影する事なのだが、いかんせん肝心の岩が全く見つからない。

 日本史の補習を免除する代わりの課題だから、歩き回るうちに歴史に興味を持たせるという趣旨が教師側からの慣例であり通例であり洗礼であるのだろうが、俺にとっては全くの逆効果だ。


 現に俺は先ほどから岐阜城天守とやらの前を何度も往復しているが、天守の中身には、これぽっちも興味がない。

 俺の無関心をよそに岐阜城天守は意外と賑わっている。中高年男女のみならず俺と同世代と思しき女子も居たりして、歴女という言葉が都市伝説でない事をうかがい知れたりする。

 そんな観光客らに、探している岩の話を聞いてみようとは思わない。

 何せ、件の岩の所在地図は担当教師の手書きであり、岩の場所以上に戦国時代の薀蓄がびっしり書き込んである。あの教師だから仕方ないとはいえ、これはちょっとひどい。

 しかも、ところどころにマスコット的なイラスト?がいて、とにかく子供っぽい。

 これが自分よりも年上の女性のが書いたものだと思うと、ぞっとする。


 そういう事情もあったりして、俺は色んな意味で孤独な戦いを強いられていた。それにしても、きょう一日でどれだけ歩いたことか。


 半ば諦め、渡された地図をカバンにしまい込もうとした時、偶然に柵と柵の間から見える岩が目に入った。岩は通路から見ると眼下、つまり崖の下にあった。

 地図に記された場所とは若干違うが、もともとの地図が地図だけに誤差の範囲だろう。

 俺はそう決めつけると、柵に跨り、岩に向けて強引にスマホを持つ手を伸ばした。

崖が案外高く、岩がかなり下にある。ちょっと怖い。

 一瞬、息を止めてシャッターボタンを押す。


 あ。


 押した瞬間目の前が真っ暗になった。次いで、異常な浮遊感を感じる。絶叫コースターを目隠しで乗っているような感覚だ。


 そのまま俺の意識は遠のき、いよいよ完全に感覚が無くなった。


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