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理想の先輩[フルート1]
フルートの話です。
先輩と後輩でそれぞれ思うことがあります…。
「ねえ復元早く手伝ってくれる?」
お喋りを楽しむ私と梨依に、パートリーダーで3年生の椎菜先輩が言う。その声は優しいように聞こえて、怒り気味でもあった。
「はい!」
私と梨依は急いで机を運ぶ。
帰り道。
「夢架ー、最近椎菜先輩、めっちゃ厳しくない?」
梨依が突然そんなことを言ってきた。
「どういうこと?」
「だから、去年は一緒に喋ってたのに、今年になってから練習優先!て人になっちゃったなーって」
確かにそれは私も感じていた。
「あれじゃない、最後の夏も近づいてるし、やっぱり最高学年てのはピリピリしちゃうもんなんじゃない?仕方ないよ」
「まあね。でもあたし、今の椎菜先輩好きじゃない」
マズい。梨依の言葉を聞いた私はまずそう思った。梨依は先輩が相手であろうとも真正面からぶつかっていくタイプ。これで同じパート内で喧嘩を起こされたら、私が一番気まずくなるのだ。
「だからってVS椎菜先輩にするのはやめてよ?」
「うーん…」
梨依はなにか考えている様子で一応頷いた。
世界で一番信用できない「うん」だった。