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さよならの前に[トランペット2]
今日も私は部活へ行く。
目的?もちろん楽器が上手くなりたいからだけど、決定的なものではない。
「先輩、この小節のブレスの位置ってどうしてます?」
私が声をかけた相手はだるそうにゆっくり振り向く。
「んーどれ?見して」
楽譜を求めた彼の手は私の指先にわずかに触れた。
…………………!!!!
ああああ!なんだこの状況!私は少女マンガの主人公か何か!?それなのになんで先輩はそんなに冷静なの!?
「…あの、美希ちゃん、どうしたの?」
「…あっ、す、すいません!」
知らぬ間に手に力が入っていたようで、なかなか楽譜から手を離さない私に先輩は困っていた。
手の力を抜くと当然私の手から楽譜が離れるわけで。
また先輩の手も私の手から離れるわけで、少し物寂しさを感じた。
…って、何を考えているんだ私は。
たった今の出来事とそれに対する自分の感情のせいで、私の顔はきっと赤くなっている。
それを早く隠したいと思って、結局先輩の話もほとんど聞けないでいた。
「…でも位置とかはそっちで勝手に決めていいよ、こっちがずらす。
…まあ俺の方が断然上手いし?」
小宮山先輩、そのドヤ顔とそのセリフはアウトです。
そういうところに夢中なんです。
私の恋は思ったよりも重症なようだ。
感謝の言葉をしどろもどろ口にして、私はすぐ後ろを向いた。




