表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編集

一寸帽子

むかし、むかし、ある服屋に一寸ばかりの小さな帽子がありました。


その帽子はたいそう立派な素材でできていまして、形や柄も素晴らしくお洒落でした。


ある時、お客さんが店主に尋ねました。


「やあ、おやっさん。この店の品はどれも素晴らしくお洒落だね。値段は安くないがお金を払ってかうだけの価値があるよ。ところで、気になることがあるんだが、あのちっぽけな帽子はなんだい」


店主は応えます。


「あれは『一寸帽子』でございます。その名の通り一寸ばかりの小さな帽子でございます」


お客さんは少し不満そうな顔をしています。


「確かに、一寸ほどしかないね。だがね、私が聞きたいのはそういうことじゃないんだよ。どうして一寸ほどしかない帽子を店に置いているのか聞いているんだ。しかも普通の大きさの帽子と値段がかわらないじゃないか」


店主は応えます。


「どうしてだと言われましても、この店は服屋ですので流行りのものを置いているとしか言えません」


お客さんは合点といった表情で店主に言います。


「ああ、そうか最近はこの可愛らしい帽子が流行っているのか。それじゃあ、その赤いやつを買うよ」


店主は応えます。


「ありがとうございます。せっかくですから、今被って見てはいかかがですか」


お客さんはひょいと小さな帽子を頭に乗せて、鏡を見て一言いいます。


「なるほど、なかなか洒落ているじゃないか。気に入ったよ。お勘定はここに置いておくよ」


店主は応えます。


「ありがとうございました。またお越しください」


右手をスッと挙げて店を後にするお客さんの後ろ姿は素晴らしく滑稽でした。

最後まで読んでいただきありがとうございます。今後のためにも感想をいただけると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ