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天井裏のウロボロス  作者: 夙多史
Volume-01
38/228

Section5-4 捜索

 秋幡紘也は諫早孝一と合流していた。

「孝一、そっちはどうだった?」

「ダメだ。見つからない。彼女は飛べるからもう遠くに行ってしまっている可能性もある」

 そうなると捜しようがないが、ウェルシュはまだ近くにいると言っていた。

「これは俺の勘だが、たぶん、ウロは西区からは出てないと思う」

「そうか、勘は大事だ。オレも知り合いにメールで情報提供を呼びかけたが、あまり期待はしないでくれ。朝っぱらから熱心に働いてくれる物好きはそんなにいないんだ」

 紘也としては、孝一が協力してくれていることだけで満足だった。

「それで紘也、彼女の行きそうな場所とかわかるか?」

「わかるならもう探してるよ。あいつと出会ってまだ一週間も経ってないんだぞ」

 騒がしくて、楽しいことが好きで、強くて、友達想い。彼女と過ごしてわかったことだ。でも、辛い時にどうするのかは見当がつかない。彼女の内面、裏側というものを、紘也は全く理解していなかった。

 ただ出て行くように言っただけで、あの一度巻きついたら離れないアナコンダのような彼女が傷つき、涙を流して去っていった。

 捨て猫を見つけた時の彼女の態度が脳内にフラッシュバックされる。

 もしかして紘也は、彼女の心の傷を、トラウマを抉ってしまったのだろうか?

 ズキリ、と胸に痛みが走る。体はいくら傷ついても〝再生〟するが、心はそうじゃない。今もどこかで泣いているのだろうか? だとしたら、一刻も早く彼女を見つけ、せめて『嘘だ』の一言だけでも言ってやらなければならない。

「そういえば紘也、愛沙や葛木には連絡したのか?」

 物思いは孝一の言葉で中断した。

「葛木は昨日のこともあるからやめておいた。てか番号知らないし。愛沙は何度かけても出なかった。たぶん携帯忘れてどっか行ってるんだと思う」

「この時間だと……犬の散歩ってところか。どうする? 一応、鷺嶋神社まで行ってみるか? 案外、愛沙が家出少女みたいに匿っているだけかもしれないぞ」

 電話に出ないのがそういう理由かもしれないと孝一は言っている。その可能性は否定できない。鷺嶋神社は西区にあり、紘也の家からも近い。

 けれど釈然としない。それは恐らく、ウロが愛沙の家をまだ知らないからだ。少なくとも彼女と行動していた時に鷺嶋神社へ行った記憶はない。

 一つの可能性として、ウロと犬の散歩中の愛沙が偶然出会ったと考える。

 泣いているウロを見かけたら、愛沙なら放っておくはずがない。

 愛沙がウロと一緒だとすると、場所などどこだろうと変わらない。

 ――愛沙も危険だ。

 ウェルシュは一般人には手を出さない。それは墜落した飛行機から人々を救助していたことからも窺える。だが、ウロボロスと関係があると思われたらどうなるかわかったものじゃない。

「紘也、どうやら、居場所がわかりそうだ」

 と、孝一が口元に笑みを浮かべて路地の先を見ながら言った。そこでは、最近ではすっかり見慣れてしまった黒装束たちが忙しなく移動していた。

「葛木の陰陽師か」

 個種結界を感知できる彼らが動いているということは、もう戦闘は始まっているのだ。

「あっちは市民公園の方だな」

「行こう、孝一」

 二人は頷き合うと、陰陽師を追って駆け出した。孝一のことだ、どうせ来るなと言っても無駄なのだ。それにここまで手伝わせておいて、今さら『帰れ』はない。紘也だったら間違いなくキレる。

 走りながら、紘也は念のためもう一度愛沙に電話をかけてみた。だがやはり、あの間の抜けた留守番電話のメッセージしか返って来なかった。


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