8.
――――トゥルルルル……トゥルルルル……。
奈緒のスマートフォンが誰かからの着信を受けて鳴り響いた。
***
「……よっと……」
優樹はあの場から離れた後、美月を近くの公園に連れて行き、ベンチに座らせた。
「美月さん、大丈夫ですか?」
優樹がまだ放心状態の美月に声を掛ける。
しかし、美月は目の焦点があっておらず、何が起こったのか把握していない様子だ。
(どうしよう……)
優樹が今の状態の美月をどうしていいか分からずに、心でそう呟く。
(病院に連れて行くのも違うし……)
美月の様子を見てその事も考えたが、病院に連れて行ってもどう説明すればいいかが分からない。
このままの状態も良くないと思い、優樹は奈緒に電話を掛ける。すると、奈緒が電話に出た。
『もしもし、どうしたの?』
電話越しに奈緒がそう口を開く。
「忙しいところすみません!実は……」
優樹がそう言って、美月と松木がファッションホテルの前にいたことを話す。
『それで美月は?!』
電話の向こうで奈緒が大きな声で優樹にそう尋ねる。
「今一緒にいます!ただ、美月さんの様子が変なんです。何があったのかを聞こうとしても、放心状態と言うか……。……今いる場所ですか?ここは……」
優樹が奈緒に今の美月の状況を説明すると、奈緒が何処にいるのか聞いてきたので、その場所を伝える。
『……そこに行くわ!』
奈緒が電話越しにそう声を発して通話が終わり、優樹は奈緒の到着を待つことにした。
***
「……はぁ~……」
綾乃が部屋に設置してあるローテーブルに顔をくっつけながらため息を吐く。
優樹に自分の気持ちを伝えようと思い、告白しようとした矢先に優樹が席を立っていってしまったので、綾乃は諦めて家に帰ってきた。
(まぁ、まだチャンスはあるよね……。同じ職場だし……)
綾乃がため息を吐きながら、心の中でそう呟く。
(それにしても、美月さんってやっぱりムカつく……)
綾乃が心の中で美月に悪態を突く。
利用者に慕われている美月……。もしかしたら、優樹も美月に惹かれているのではと感じて、心の中で憎悪の気持ちが膨らんでいく。
(なんか起こって美月さんが辞めてくれれば一番いいのに……)
綾乃の中で黒い感情が渦巻く。
美月が憎い……。
美月を苦しめたい……。
美月を貶めてやりたい……。
グルグルと黒い感情が溢れるが、どうやったら美月を貶めることが出来るかが分からない。
「お風呂、入ろ……」
綾乃はポツリとそう呟くと、着替えを持って浴室に向かった。
***
「……優樹君!!」




