7.
優樹がカフェの窓からある光景を目にして、小さく声を発する。
「……ごめん!これ、僕のお茶代ね!」
優樹がテーブルの上に自分の飲み物代を置くと、慌てて外に飛び出して行く。
綾乃は突然何が起こったのか分からなくて、しばらく呆然としていた。
***
「……ここだよ、美月さん」
「……え?」
松木が案内してくれた場所を見上げて美月が呆然としながら小さく声を発する。
そこはファッションホテルの建物だった。
「入ろうよ、美月さん。俺の悩み、聞いてくれるんだろ?」
松木がそう言って、美月を手を引こうとする。
その時だった。
「……何やっているんだ?!」
優樹が慌てた様子で美月たちの元に駆け寄ってくる。
「美月さん!なんでこんな所に?!」
呆然と立ち竦んでいる美月に優樹が声を掛ける。
だが、美月は何が起こっているのか分からないのか、その場で立ち尽くしたまま答えない。
「松木君、一体何があったか話してくれない?」
美月が固まったまま動かないので、松木に何があったかを尋ねる。
「べ……別に……何も……」
松木は悔しそうな顔をしたまま、何があったかを話そうとしない。
「とりあえず、また改めて話は聞かせてもらうよ」
優樹が松木に厳しい表情でそう声を掛ける。
そして、そのまま動くことが出来ない美月を抱えると、その場を去って行く。
「ちっ……。後ちょっとだったのに……」
美月を抱えて去って行く優樹を見ながら、松木が小さな声で舌打ちしながら呟いた。
***
「……はぁ~、あと少しね……」
奈緒がパソコンを打ちながらそう声を発する。
「おう!後これで完了やな」
正志も自分のデスクでパソコンとにらめっこしながらそう声を発する。
施設では、奈緒と正志はいつものように残って、残りの業務を片付けていた。
「そういや、松木に電話は繋がったん?」
正志がパソコンを打ちながら奈緒にそう声を掛ける。
「それが繋がらないのよ。だから、明日もう一度電話して見るわ」
正志の言葉に奈緒もパソコンを打っている手を止めずにそう返事をする。
「松木も美月ちゃんには素直なんやけどな~。人を選んでいるところがあるでな」
正志が一旦パソコンの手を止めて、傍に置いてあったコーヒーを飲みながら、そう言葉を綴る。
「そうね……。他の利用者の事を考えると、利用停止っていう方法もあるけど、それだとね……」
「せやな……」
奈緒の言葉に正志がため息を吐きながらそう声を発する。
奈緒と正志が考えているのは、松木を改善することをせずに利用停止にすると、この施設はそういう人だと簡単に切り捨てるという風に世間では取られてしまうかもしれない。場合によってはこの施設の悪い噂が立つ可能性もある。
それを考えると、今の段階で松木を利用停止にするのではなく、松木を改善させるのがこのような福祉施設では必要だった。
「……とりあえず、一度面談するのが良いやろな」
「そうね……。美月だったらいいってことだけど、それはそれでどうかと思うけどね」
正志の言葉に奈緒がため息を吐きながらそう言葉を綴る。
「まぁ、せやったら美月ちゃんがいい方向に持ってってくれることを願うしかないやろ」
正志が気軽な口調でそう言葉を綴る。
その時だった。




