43.
【回想】
「ねぇ、美月……。美月は優樹さんの事はどう思っているの?」
「優樹さん??」
美影の言葉に美月の頭の中ではてなマークが飛び交う。
「奈緒さんと話したんだ。優樹さんなら、美月の一番の理解者になるんじゃないかって……」
「え……」
その言葉に美月が戸惑ったような声を出す。
「優樹さんの事を考えることはできないかな?」
「でも……」
美影の言葉に美月の言葉が詰まる。
「分かっているよ、美月が思っていること……。美月は仕事の顔と普段の顔が違うから、普段の自分を知ったら引くんじゃないかって心配しているんでしょう?」
美影の言葉に美月が目を伏せがちにしながら頷く。
優樹の事は良い人だと思っている……。
でも、こんな自分を知って引かれてしまったら……?
もし、仕事でも避けられるようになってしまったら……?
そうなったら、今の所で仕事が出来なくなってしまう……。
美月の中でそんな思いが渦巻いていく。
「……優樹さんなら、信じていいと思うよ。だから、一度、優樹さんの事を考えてみて」
「美影……」
美影の言葉に美月がどこか悲しそうな声で美影の名前を呼んだ。
【回想終わり】
「……でも、よく分からないんだ……。美影には優樹さんの事を考えてって言われたけど、こんな自分を知られるのが怖いのもあるの……。でも、それよりはまた違う目的だったら……って考えると怖いんだ……。今までがそうだったから……」
「そうね……」
美月の綴る言葉に奈緒がそう応える。
美月の家は資産家の家だった。なので、美月の家の財産狙いで美月を狙った人も沢山いた。親族も美月が受け継いだ莫大な財産が欲しくて、その親族の子供を将来の相手にしないかと言う話が沢山あった。
そういう事が過去にあったので、優樹がこの事を知ってそれが目的になってしまうのではないかと言う怖さが美月の中である。美影は優樹なら大丈夫だと言っていたが、美月の中ではその不安が拭えない。
お金は時に人の心を狂わせる……。
それを分かっているから、美月は美影が言った言葉に一歩踏み出せないでいた。
「……でも、優樹君なら大丈夫よ。それは私が保証してあげる」
奈緒が優しい声で美月にそう言葉を綴る。
その言葉に美月は返事が出来ない。本当にその事を信じていいかどうかが分からない。でも、奈緒が言うのであれば、それは本当の事かもしれない。
(それに……)
美月が心の中で別の事を考える。
それは、優樹の事を考えてみないかと美影に言われた後で、美影に言われた話……。
(分かっているんだよね……分かっているけど……でも……)
美月が心でそう呟く。
「……よしっ!」
美月がそう声を発して起き上がる。
「踊ります!」
美月がそう言って、その場でいつものように歌を歌いながら踊り出す。
その事を考えないでいいように……。
その事を忘れるかのように……。
美月が楽しそうに踊る……。
そして、踊りながら一筋の涙を流す……。
――――それは、自分自身に区切りをつけるために流した一筋の涙……。
美月が歌いながら踊る……。
楽しそうに……。
悲しそうに……。
その時だった。
――――パキッ……。
音がして、美月が音のした方に顔を向ける。
「あ……あ……」
美月が身体を小刻みに震わせながら、愕然と声を出す。
その音のした場所に立っていたのは、優樹と正志だった……。




