38.
奈緒が相談室のドアを開けた状態で、施設にいる正志にそう声を掛ける。
奈緒の言葉に正志があるものを手に相談室にやって来る。
そして、それを机の上に置く。
「……じゃあ、これはどう言う事かしら?」
奈緒の言葉に正志が机の上に置いたもの……ボイスレコーダーの再生ボタンを押す。
『ねぇ……、良かったら私が協力するわよ?』
『え?綾乃さんが?』
『私が美月さんと松木君を二人きりに出来るような状況を作るから、その時に美月さんとそういう事をすればいいわ』
『でもさ、そういうことって大人しくさせてくれるとは思わないけど……』
『簡単よ。松木君、確か睡眠剤を処方されているよね?それを飲み物に混ぜて飲ませれば意識は朦朧として反抗できなくなる……。そういう状況を作って美月さんを襲ってしまえばいいのよ……』
『成程……。それなら美月さんとそういうことが出来る可能性が高いってわけか……』
『また、その状況を作れそうな時に連絡するから、松木君の携帯番号を教えてくれる?』
『あぁ、分かった』
ここで、正志がボイスレコーダーを止める。
「……これは綾乃さんの声よね?」
奈緒が綾乃に静かな声で、でも威圧的にそう言葉を綾乃に告げる。
その言葉に綾乃の顔は真っ青になっており、身体は小刻みに震えていた。
『なぜ、こんなモノがあるのか……?』
綾乃の中で自分の計画がガラガラと音を立てて崩れていく。でも、ここでこの事を認めたら自分はこの施設を辞めるだけでなく、場合によっては社会的排除される可能性もある。
「わ……私の声じゃないです!」
綾乃が叫ぶようにそう声を発する。
「こ……こんなの……私は知りません……!ま……松木君が私を陥れるためにこんなものを作ったんじゃないんですか?!」
綾乃が叫ぶようにそう言葉を綴る。
その言葉の端々には、「絶対に認めてなるものか!」と言う強い想いが見え隠れしている。
「……じゃあ、あなたは松木君がこの音声を作ったというのね?」
奈緒が冷静な口調でそう言葉を綴る。
「……せやったら、これを警察に持っていってこの音声が作られた音声か調べるしかないな……」
「?!!」
正志の言葉に綾乃が愕然と驚く。
「ま……松木君は問題視されていた利用者ですよ?!私の言葉より松木君の言葉を信じると言うんですか?!」
綾乃が怒りを露わにしながらそう言葉を吐き出す。その表情は醜く歪み、悪魔のような形相が見える。
「せやから、綾乃っちの言葉が本当かどうかを確かめるためにもこれを警察に持っていって調べて貰うんや」
正志が淡々とした口調でそう言葉を綴る。
その言葉に綾乃は他に逃げ道がないかを考えるが、何も思いつかない。
「……じゃあ、調べてくれるところに持っていく……で、いいわね?」
奈緒がそのボイスレコーダーを手に取り、そう言葉を綴る。
「……や……辞めます!こ……これで良いでしょう?!」
綾乃がそう言葉を放って相談室を出て行こうとする。
「まだ終わってへん!」




