32.
「……大丈夫かな?」
家に帰ってきた優樹はソファーに腰掛けると、そう小さく呟く。
優樹は美月の事が心配だった。だが、かといって自分に出来ることがないので、その事に歯痒さも感じている。
それと同時に松木がしたことに怒りも湧いて来る。
美月に何かの薬を飲ませたこと……。
そして、もしかしたら前回と同様に松木は美月をホテルに連れ込もうとしたのかもしれない……。
もし、本当に連れて行かれて事が起こってしまったら……。
「っ……!!!」
優樹がその事を想像して怒りの感情が溢れてくる。
許さないという気持ち……。
そんな事は絶対にさせないという想い……。
いろんな怒りの感情が優樹の中を駆け巡っていく。
「落ち着かなきゃ……」
自分がこんなんではいけないと感じ、優樹は気持ちを落ち着かせるために、冷蔵庫からビール缶を取り出し、一気に喉に流し込む。
「ふぅ……」
アルコールで張りつめていた感情の糸が少し緩んだのか、少しだけ平静さを取り戻す。
そして、飲み切ったビール缶をゴミ箱に放り込み、ソファーに戻っていく。
「僕が美月さんを守れたらいいのに……」
優樹はソファーに座って身体を丸めると、小さくそう呟いた。
***
「……おはようございます」
次の日、美月はいつもと同じ様子で出勤してきた。
「お……おはようございます……」
優樹がやって来た美月にそう声を掛ける。
「ど……どうしたんですか?!」
美月が祐樹の顔を見て驚いたように声を出す。
「いえ……ちょっと……」
優樹が「あはは」と空笑いしながら言葉を濁す。
昨日の夜、優樹はなかなか寝付くことが出来なくてさらにビール缶を開けて一人で飲んでいた。そして、ようやく眠くなってきたのが夜中の三時を過ぎていたので、ほとんど寝ることなく出勤してきた。その為、眼の下にはうっすらとクマが出来ており、顔色もあまり良くない。
「優樹~、飲み過ぎ注意やで~」
正志が優樹の肩をポンポンと叩きながら、そう声を発する。
「す……すみません」
「まぁ、人間飲みたいときもあるから気持ちは分からんでもないで。でも、仕事に支障がこない程度にはこれから抑えよな!」
「はい」
正志も昨日の事は分かっているので、優樹にその事を注意することはしない。でも、やんわりと叱咤して、これからは気を付けられるように促していく。
「おはようございます」




