30.
奈緒が戻ってきて、正志がそう声を発する。
「それが……」
奈緒が困ったような顔をしながらそう声を出し、先程の松木の話を優樹と正志に話す。
「……それ、本当なんですか……?」
優樹が話を聞いて愕然と声を出す。
正志もその話に驚きを隠せない様子だ。しかし、正志はすぐにある事を考える。綾乃が本当にその事に関わっているにしても、正志の中では何かがあるようだ。
「それが本当やとしても、一つ問題があるな……」
正志がそう言葉を発する。
「問題?」
正志の言葉がよく分からなくて、優樹が神妙な顔をしながら頭にはてなマークを浮かべる。
「あぁ……、つまりだな……」
正志がそう言って口を開いて話しだす。
正志が問題という事は、綾乃がその事に関係しているとしても、本当にそれを言ったかどうかの証拠が何もないという事だった。証拠がなければ、松木の証言は弱い……。証拠がなければ綾乃を問い詰めても、「知らない」と言われてしまえばこちらとしては何もできない。
「……次は俺が話してみるよ」
正志がそう言って、相談室に入っていく。
そして、今度は正志が松木と対面になるように座り、松木に鋭い視線を向ける。その様子に松木が少し怯えたような表情になる。
「話は聞いた……。本当に綾乃さんがそんな事を言ったのか?」
正志が威圧感を漂わせながら、松木にそう言葉を投げかける。
「ほ……本当だよ!!」
松木が必死の想いでそう叫ぶ。
松木の中では自分がやったことが警察沙汰になるとは思っていなかったらしく、このままでは本当に捕まるかもしれないという恐怖感が駆け巡っているのだろう。だから、本当の事を話した。
「だが、綾乃さんが本当にそんな事を言ったという証拠がない。実行犯はお前だからな……」
正志が強い口調でそう言葉を綴る。
「しょ……証拠なら……」
松木がそう言ってポケットからあるものを取り出した。
***
「……松木君の話……本当なんでしょうか……?」




