29.
「……綾乃っち、なんて言うとったん?」
奈緒の電話が終わり、正志が奈緒にそう声を掛ける。
奈緒は先程の電話の内容を正志に話す。
「……てことは綾乃っちは全く関係ないという事やな……」
奈緒から綾乃が話したことを聞いて、正志がそう言葉を綴る。
「とりあえず、松木君に事情を聞いてみるわ」
奈緒がそう言って、相談室に待機させている松木の所に行く。
相談室に奈緒がやって来たと同時に松木はそっぽ向く態度をとる。
「何があったか話してもらうわ」
松木と対面するように奈緒が椅子に座り、松木を鋭い目で見ながらそう言葉を発する。
「なぜ、美月を抱えていたの?」
奈緒の言葉に松木はそっぽ向いたまま答えない。
「美月を抱えて何処に行くつもりだったの?」
その言葉にも松木はやはり何も答えない。
奈緒がこれでは埒が明かないと判断したのか深く息を吐く。そして、鋭い目を松木に向けながら言葉を吐く。
「とりあえず、警察に電話させてもらうわね」
「け……警察?!!」
奈緒の言葉に松木が初めて声を発する。
「えぇ、そうよ。美月がなぜあんな状態になっているかも調べて貰わなきゃいけないわ。もし、処置が必要という事であれば病院も手配しなきゃいけない……」
奈緒の言葉に松木の顔がみるみると青ざめていく。
「お……俺じゃない……俺は提案されたから……その事を飲んだだけ……」
松木が身体を震わせ、蒼白になりながら途切れ途切れにそう言葉を綴る。
「誰に提案されたの?」
奈緒が鋭い目つきで松木にそう言葉を放つ。
「あ……綾乃さん……」
「?!」
松木の口から出てきた人物の名前に奈緒が愕然となる。
「本当に綾乃さんなの?」
奈緒が確認するように松木に尋ねる。
「うん……。協力するって言ってくれて、今回の事は綾乃さんが手配してくれたんだ……。他にも……」
松木がそう言って話し出す。
今回の事は綾乃の協力で実行したということ、綾乃から松木に処方されている睡眠薬を少しペットボトルに混ぜて飲ませればいいと言われたこと、その後で美月を抱えてホテルに連れ込めばいいと言われたこと……。
「もし、それが本当だとしたら、松木君のやったことは立派な犯罪よ?」
奈緒が毅然とした態度で松木にそう言葉を投げかける。
奈緒の心の中で、綾乃に対する不信感が募っていく……。
「ちょっと、このままここでまた待機してもらうわ」
奈緒が松木にそう声を掛けて相談室を出て行くと、そのまま優樹たちがいる場所に戻ってくる。
「……なんて言ってた?」




