22.
奈緒がポツリと呟く。
美月と綾乃を二人きりにしてよかったのかが心配で、奈緒の口からそう声が出てしまった。綾乃が美月を毛嫌いしていることも知っている。でも、綾乃の言葉が本当なら、それは良いことだから止めることも出来なかった。
奈緒の中で心配が渦巻く……。
「……まぁ、綾乃っちが変わろうとしているかもしれないから、今はそれを信じるしかないんとちゃうかな?」
正志が奈緒の気持ちを読み取ったのか、奈緒にそう声を掛ける。
「そうね……」
正志の言葉に奈緒がそう返事をする。でも、その表情は不安が拭えない……。どことなく嫌な予感が駆け巡る。
(綾乃さんが変わったら、もっとこの職場は良くなるだろうな……)
その様子を優樹が見ながら、心の中でそう呟く。
綾乃の美月に対する嫌悪感が拭えることが出来れば、今よりこの職場はもっと雰囲気が良くなり、スタッフ同士でもっと意見交換や共有できることも増えてくる。そうなれば、利用者にもきっとその良い波動が伝わって、利用者ももっと前向きにプログラムに取り組めるかもしれない。
優樹の中でそんな期待が膨らむ。
そんな期待を優樹が考えている時だった。
「……優樹~、この書類を役所の福祉課に持ってってくれん?」
正志が優樹にそう言って大きめの封筒を手渡す。
「分かりました」
優樹がその封筒を受け取り、そう返事をする。
そして、外に出る準備をして、優樹はその書類を役所に届けるために施設を出て行った。
***
「ねぇ、正志……」
優樹が施設を出て行ったのを見届けると、奈緒が正志に声を掛ける。
「ん?」
正志が、そう声を発する。
「この前の居酒屋の話、覚えてる?」




