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月は優しく桜を照らす  作者: 華ノ月


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2.


 いつものお昼ご飯を食べる場所に着いて、奈緒が美月にそう声を掛ける。


「はぁ~い♪」


 美月が子供のような声を出しながら奈緒の膝の上でゴロンと横になる。


 美月と奈緒はいつものネットカフェに来ていた。そのネットカフェでリビングルームを借り、そこで昼休みを過ごすというのが日課だった。


「奈緒ちゃんの膝の上気持ちいぃ~」


 美月が奈緒の膝の上でコロコロと動きながら満面の笑みでそう言葉を綴る。


「ふふっ……、相変わらずね。もう少ししたらお昼ごはんが運ばれてくるからそれ食べて少し休憩したら戻るわよ?」


「はぁ~い♪」


 奈緒の言葉に美月が元気よく返事をする。


 美月の表情は大人という表情ではなく無邪気な子供のような表情だった。仕事場では大人の女性として振舞っているが、本当の美月は心がまだ少女のままだった。


 そして、美月に何があって、そのような状況になってしまったのかを奈緒は知っている。


 だからこそ、美月を自分の職場で働かせることになったのだった。



「ミートスパゲッティ、美味しい~♪」


 運ばれてきたミートスパゲッティを食べて、美月の顔が綻ぶ。


「ほらほら、注意して食べないとほっぺにもソースが飛んじゃうよ?」


 奈緒が美月の口を拭きながら優しくそう声を掛ける。


 そして、お昼ご飯を食べ終わると、また美月は奈緒の膝の上でゴロゴロと仔猫のように過ごす。


「……美月、そろそろ時間だよ」


 奈緒が腕時計を見ながら美月に声を掛ける。


「はい、行きます」


 美月の子供の表情が一切なくなり、大人の美月の表情になる。


 そして、いつものように会計を済ませると、仕事場に戻っていった。




***


「おうっ!お帰り、奈緒ちゃん、美月ちゃん!」


 美月と奈緒が仕事場に戻って来て、正志が真っ先に声を掛ける。


「お帰りなさい、奈緒さん、美月さん」


 優樹が二人に笑顔でそう声を掛ける。


「お昼休みの間、何もなかった?」


 奈緒が正志にそう声を掛ける。


「あ~……、ここではないも無かったけど、松木から電話がかかって来よってな……。面談するにしても、施設では嫌だって言ってきたんだ……」


 正志がお昼休みに掛かってきた電話の内容を話す。


 どうやら、松木は美月と面談をするにしても、自分の家か近くのカフェでと言ってきたらしく、それ以外の場所での面談は受け付けないと言ってきたと言う。


「……それはちょっと困るわね。松木君って確か一人暮らしだったわよね?その家に美月一人ではいかせられないし、家の近くのカフェって言ってもそこで暴れたりしたらややこしいことになるわ」


「せやろ?だから、面接は基本「ここで!」とは言ったんやけど、それやったら面接はしないって言ってきたんや……」


 奈緒の言葉に正志が松木に伝えた事を話す。


「……とりあえず、今日の業務が終わったら一度松木君に連絡してみるわ」


「せやな。その方がええかもな」


 松木の事は奈緒が後で電話するという事で一旦話は終わり、美月たちは午後からの業務の為の準備に取り掛かる。


(松木さん……そんなの無理だと分かっているはずなのにどうしてそんな事を言いだしたんだろう……)


 美月が先程の話を聞いて、心の中でそう呟く。


 面談で自分の家やカフェでという事は原則禁止されているのは松木も知っている事だった。それなのに、そんな要求をしてきたので、何かしらそこには意味があるのではと感じる。


(もしかして誰にも聞かれたくない悩みがあるのかな……?)


 美月の心の中でその考えが浮かぶ。


(もし、そうだとしら松木さんの要求をのんだ方がいいのかもしれない……)


 美月の頭の中でそんな思いが駆け巡る。


 美月にしか話せないのだとしたら、自分が松木の家に赴いてその話を聞いてあげるもの松木を救う一つなのではないかと思い始めていた。


 しかし、その考えが甘い考えだという事をその時の美月は感じていなかった。






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