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月は優しく桜を照らす  作者: 華ノ月


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19.


 奈緒が更に言葉を綴る。


 それは、美月がそういう事があったとしても、今のような施設で働く素質はあると思ったから、奈緒の目がなるべく届く場所で働いてもらう事にしたという話だった。


「……だから、昨日の事は美月には聞かないでくれるかしら?」


 奈緒が優樹に顔を向けて、静かな口調で懇願するようにそう言葉を綴る。


「……分かりました」


 奈緒の話を聞いて、そう言われたのでは優樹はそう返事するしかない。確かに美月に昨日の事を聞くのは良くないという事は分かった。


下手に美月にその話を掘り返してしまうと、美月は壊れてしまう可能性がある。それを考えると、その事に関しては聞かない方が妥当だろうと判断して、優樹はその事を受け入れることにした。


(でも……)


 それでも、優樹の心の中で気持ちがくすぶる……。


 辛いような……。


 苦しいような……。


 悲しいような……。


 奈緒からの話を聞いても、美月への気持ちが揺らぐことはないので、「このままで良いのか?」と言う気持ちが膨れ上がってくる。


 でも、それと同時にどうしようも出来ないことも分かっている。


「……で、松木の事はどうするんや?」


 優樹がそんな思いをぐるぐると考えていると、正志がそう口を開く。


(そうだ……今はそれだ……)


 優樹が正志の言葉を聞いて、我に返る。美月に対する想いをぐるぐると考えていたが、今考えるのはその事ではなく、美月を危険に晒さないためにも松木の事をどうするかを考えなくてはならない。


「とりあえず、施設の周囲をしばらく警戒するという形でどうかしら?」


 奈緒がそう言葉を綴る。


「せやな。今できることはそれぐらいやな」


 正志が奈緒の言葉に頷きながら、そう言葉を綴る。


「まぁ、この事に関しては三人だけで共有することやから、他の人には伝えないようにしておこうや」


 正志がビールを一口飲むと、そう言葉を発する。


「あの……美月さんに伝えない方が良いのは分かりますが、綾乃さんには今回の事を伝えた方が良くないですか?」


 優樹が正志の言葉を聞いて、「綾乃は?」と感じたのか、頭にはてなマークを浮かべながら、そう口を開く。


「それは止めておいた方がいいという事になったのよ」


 奈緒が申し訳なさそうにそう声を発する。


「え?どうしてですか??」


 優樹たちの施設では利用者の事に関して、スタッフ全員が共有するというシステムを用いているはずなので、なぜ綾乃にその事を伝えないのかを優樹は疑問に感じる。


「……まぁ、優樹も気付いているかもしれないが、綾乃っちは美月ちゃんの事をよく思っていないからや」


「…………」


 正志の言葉に優樹は何も言うことが出来ない。


 確かに綾乃が美月の事をよく思っていないのは、優樹もうすうす感じていた。でも、だからと言って今回の事を綾乃に伝えないのは違う気もする。


「……それに、綾乃っちは多分お前に恋心を抱いとるはずやで?」


「………………は?」





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