15.
居酒屋にやって来た正志と奈緒は、奈緒の希望で個室の部屋に入った。その部屋は周りにお客さんが居ないので、ゆっくりとその部屋で酒と肴を楽しむことが出来る。そして、奈緒がその部屋を選んだので、正志は話があるんだろうという事を瞬時に察した。
「……松木の利用停止に関することなんやないか?」
奈緒がなかなか口を開かないので、正志がそう言葉を発する。
その言葉に奈緒はどう言おうか悩む。その様子を見て、正志が話し出す。
「急に松木を利用停止にするくらいやからな。てことは、それくらいの事をしなきゃいけない何かが起こったちゅうことやろ?じゃないと、利用停止にする必要はあらへんからな」
正志が運ばれてきたビールを飲みながらそう言葉を綴る。
そして、更に言葉を綴る。
「それに、奈緒ちゃんが思っているのは、松木を利用停止にしても、その事を松木が大人しく受け入れるとは思っていないんやろ?きっと、松木の事やから何かをしでかす可能性がある……。それを心配しているんとちゃうか?そして、それは多分、美月ちゃんが絡んでいる……」
正志の綴る言葉に奈緒が戸惑う。
「実は……」
奈緒が閉じていた口を開き、正志に昨日の事を話し始めた。
***
「……じゃあ、また……」
「ご馳走様でした」
カフェを出て、優樹がそう声を出す。今回のお茶は優樹が声を掛けたので、美月の分も優樹が支払いをした。美月は自分の分は自分で払うと言ったが、優樹が「誘ったのは自分だから」と言って、お金を払おうとする美月の手を押し戻し、会計を済ませた。
「気を付けて帰ってくださいね」
優樹が美月にそう声を掛ける。
美月はその言葉にお礼を言って、その場を去って行く。
優樹は去って行く美月を見届けると、自分も家に帰るために道を歩きだす。
道を歩きながら、なぜ美月が昨日の事を覚えていないのかが気になるが、かといって誰かに聞くわけにもいかない。
聞くことが出来るとしたら奈緒しかいないと考え、昨日の事を奈緒に聞いてみようかと頭を巡らせながら、優樹は家に帰っていった。
***
「……なんでよ?!なんでなのよ?!」
綾乃が部屋で怒りを露わにしながら、壁にクッションを投げつける。
綾乃は苛立ちで溢れ返りそうになっていた。
『優樹は美月の事を好きなのかもしれない……』
そんな考えが頭の中をぐるぐると駆け巡る。
美月に何か弱点は無いのか?
そして、優樹を自分の方に向ける方法はないか?
(……やっぱり邪魔なだけよ……)
綾乃が心でそう呟く。
自分の方に優樹を振り向かせるにしても、美月の存在がその事の邪魔になってしまう。そうなると、美月を今の職場から排除するのが一番いいが、それは難しい。
(ムカつく……ムカつく……)
綾乃が苛立ちながらそう心で呟く。
そして、気持ちを少しでも静めようと、少し夜の散歩に出掛けた。
***
「……成程な、そんな事があったんや……」




