13.
綾乃の中でそんな思いが渦巻いていく。
そのために何が良い方法は無いのか?
美月と優樹を切り離す、何か良い案がないのか?
綾乃の中でどんどんと黒い感情が膨れ上がる。
憎しみの感情が綾乃を飲み込んでいく。
それが後に大きな出来事を引き起こしてしまう事になるのは、その時は誰も考えていなかった……。
***
「……なんかあったん?」
施設で残って仕事をしている奈緒に、正志が一旦仕事の手を止めて奈緒にそう声を掛ける。
「いえ……ちょっとね……」
奈緒が書類に目を落としたまま、そう返事をする。
正志は奈緒の様子で何かがあったのは察しているが、追及はしない。
「まぁ、いつでも話聞いたるから、話したいときは話すとええよ」
正志が「ニカッ!」と笑いながらそう言葉を綴る。
そして、正志も止めていた手を再度動かして、残りの仕事を片付けていく。
奈緒が正志のその様子を見て、安心感を覚える。
この施設を一緒に立ち上げてからも、正志は奈緒の一番の理解者だった。その上、奈緒が何か思い悩むことがあって、正志はそれに気付いてもズカズカと聞いてこないのも、奈緒にとっては安心感があった。
正志に余計な負担を掛けたくなくて、自分で処理できることはするようにしてきた。
「……ねぇ、今日良かったら飲みにいかない?」
奈緒が正志にそう声を掛ける。
「おう!ええで!」
その言葉に正志が笑顔で返事をする。
「よっしゃ!なら、急いで今日中に片づけなあかん仕事は超特急で終わらせたろうぜ!」
「了解!」
正志の言葉に奈緒の心がどこかほぐれたのか、少しうれしそうな表情をして、そう返事をする。
そして、二人は残りの仕事を急いで片づけ始めた。
***
「……確かに美味しいですね」
美月が運ばれてきた紅茶と共に優樹がお勧めだと言ったクッキーを一口食べて、感嘆の声を出す。
「ここはクッキーの専門店がやっているカフェなんです。ちょっと値段は高いんですが、その分、とても美味しいので一度美月さんに食べて貰いたかったんですよ」
優樹が少し顔を赤らめながら、そう言葉を綴る。
「こんなお店があるなんて知りませんでした。優樹さんは色々お店を知っているのですね」
美月が柔らかく微笑みながらそう言葉を綴る。
「い……いえ……!そこまでいろいろ知っているわけでは……」
美月の言葉に優樹が恐縮しながらそう言葉を綴る。
(ど……どうしよう……)
優樹が心の中でそう呟く。
優樹が美月をお茶に誘ったのは、昨日の事が心配だからだった。しかし、昨日の事は奈緒から美月に聞くこともしないように言われている。そして、美月の様子は昨日の事を気にしているような雰囲気でもない。
「あ……あの……」




