12.
美月が佐野と対面に座りながら、優しく声を掛ける。
「その……キャバ嬢になるのは止めることにしたの……。でも、もし就労するなら服とかのショップの店員が良いな~って思って……」
佐野がもじもじしながら自分の就労希望場所を美月に伝える。
「私……おしゃれとか好きだし……。ファッションとかにも興味あるし……。ど……どうかな……?」
佐野が少し顔を赤くしながらそう言葉を綴る。
「それは素敵ですね。一緒にそう言ったところに就労できるようにお手伝いしますね。それですと、必要なスキルは……」
美月が優しい表情でそう言葉を綴ると、相談室にあるスキル一覧を広げる。そして、そのような場所に必要なスキルを紙に書いていき、これに沿ってプログラムをいくつか考えてみることを伝える。
「……ありがとう!美月さん!」
紙を受け取った佐野が、笑顔で美月にお礼の言葉を述べる。
「佐野さんが希望する職場に就労できるように、私たちも精いっぱいサポートさせていただきますね。一緒に頑張りましょう」
「はい!」
美月の綴る言葉に佐野が笑顔で返事をする。
そして、佐野は相談室を出ると、他の利用者と一緒に施設で行っているプログラムが開始されるまで雑談していた。
「……美月さん、ちょっといいかしら?」
相談室で佐野に相談されたことを紙に纏めている美月に奈緒が声を掛けて、部屋に入ってくる。
「佐野さんの担当なんだけど、美月さんにお願いしてもいいかしら?」
奈緒が申し訳なさそうにそう言葉を綴る。
「綾乃さんの担当のままだと、またもめごとが起こる可能性もあるからね。お願いしていい?」
奈緒がため息を吐きながら、そう言葉を綴る。
「分かりました」
美月がその事を笑顔で了承する。
そして、代わりに利用者の近藤を綾乃の担当にすることを伝えると、美月は先程の佐野の話を奈緒に伝えて、相談室を出た。
その後は、いつもの施設の日常が流れて行った。
「……お疲れ様でした」
施設での仕事が終わり、美月はそう言葉を掛けると施設を出て行く。優樹と綾乃も終業時間は一緒なので、三人ほぼ同時に施設を出た。
「あの……優樹君……」
「み……美月さん!良かったらお茶に行きませんか?」
施設を出て綾乃が優樹に声を掛けようとするが、ほぼ同時に優樹が美月にそう声を掛けたので、綾乃の声は優樹に届かない。
「お茶……ですか……?」
優樹の言葉に美月がどうしようか少し悩む。
「少しだけでしたら構いませんが……」
美月が微笑みながらそう言葉を綴る。
「じゃあ、良いカフェがあるのでそこに行きませんか?」
「はい。良いですよ」
優樹の言葉に美月は返事をすると、二人はカフェに向って歩きだす。
(なんでよ……)
綾乃が去って行く二人を見ながら、心の中で憎悪の炎が燃え上がる。
自分が優樹を誘おうと思っていたのに……。
なぜ、美月の方を誘うのか……。
美月が憎い……。
憎い……。
憎い……。
憎い……。
綾乃の中で黒い憎しみの感情がどんどん膨れ上がる。
美月の存在自体が綾乃にとっては憎しみの対象となる。
(美月さんを何とかしてでも陥れたい……)




