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完璧超人の美少女モデルは、僕の前でだけ甘々でポンコツになる  作者: 肥前文俊


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第2話 相馬って透花ちゃんと付き合ってないの?

 透花が教室に入るのに続いて、僕もまた教室に入る。

 クラスメイトの視線と注目は透花に集まるため、基本的に僕の印象は薄くなる。


 僕の席は、廊下側の後ろから二番目。

 教室に入ってすぐに自分の席に座った僕は、机の下に教科書とノートを並べて入れる。


 ちらっと透花に目線を走らせると、彼女が自分の席に着いた途端、周りを囲まれていた。

 クラスでも明るく、存在感があって、コミュニケーション能力が高く、勉強やスポーツなんかの一芸に秀でた、一部の人達。


 そんな人気者たちが、透花を前にすると、少し色褪せて見える。

 なんとか反応を得ようとする姿は、どことなくペットがご主人様に構ってもらおうとする姿と重なった。


 まあ、たしかに透花は特別な存在に見える。

 彼女はとっても魅力的だ。

 美しく優しく、一部(・・)とても優秀だ。


 実際はポンコツな部分が多いのだけど、彼女はそれをうまく隠している。


 僕が透花のことをぼんやりと見ていると、前の席に座っていた先崎(さきざき)(まなぶ)が声をかけてきた。

 短髪で身長はやや高め。

 運動神経がかなり良くて、かわりに学力はちょっと残念な、名前と行動があまり一致しないやつだ。


「よっ。相馬は相変わらず几帳面だねえ。置き勉とかしないの?」

「おはよう、先崎くん。置き勉はやらないね。一応校則で禁止されてるし。君は?」

「俺は毎日ロッカーに全部入れてる。重たい荷物、毎日運びたくないしな」

「そんな感じはしてた。で、何か用事でも?」

「いや、特に用事ってわけじゃないけどさ。朝から透花ちゃんと一緒に登校してるの、やっぱ羨ましいなーって思って」

「またそれ? 透花とはただの幼馴染だって何回も言ってるだろ」

「あんな美少女と幼馴染ってだけで、人生勝ち組すぎる!」


 先崎くんが大げさに羨んで見せる。

 たしかにそうだ。僕は恵まれている。


 透花と初めて出会ったのは、僕たちが保育園にいる時からだ。

 まだ二歳とか三歳ぐらいの時分には、僕たちはお互いのことを知っていた。


 そんな小さい時から、透花は皆の中心だった。

 あまり目立たない僕とはまるで違う存在。


 だというのに、家が近所ということもあってか、透花は常に僕を隣に置きたがる。


「はあ、あんなに顔が綺麗で、スタイルも良くって、爆乳のムチムチで、マジで魅力的すぎる。なあ、相馬って透花ちゃんと付き合ってないの?」

「……ないよ。あと、聞こえるだろ。そういう品のない言い方はやめなよ」

「ゴメンゴメン。でもさ、絶対ウソだろ。あんな美人と毎朝一緒に登校してて、なんもないとかありえんって。チューとかしないの」

「本当に何もないって。幼馴染だし、そういうのじゃないんだよ。それに、君が考えてるような簡単なやつじゃないんだよ、透花は」

「でもさ、透花ちゃん、相馬には結構懐いてる感じするし、ワンチャンあるんじゃね?」

「ないない。あいつ、僕のことただの便利屋くらいにしか思ってないよ。たぶんね」

「いやー、俺だったら毎日ドキドキして無理だわ。羨ましすぎる」


 心底羨ましがって見せる先崎くんを前に、僕はそんなものか、と少しだけ優越感を覚えた。

 あまりにも距離が近すぎるからか、透花に対してドキドキする、という感覚は全然ない。


 透花は僕にとって、大切な存在だ。

 でも、隣りにいることが普通、という感じで、どちらかと言うと手間のかかる妹、ぐらいの気持ちでいた。


 ドキドキかぁ……。

 まあ、朝の甘えた態度とかはたしかに可愛らしいよね。


「あー、付き合いてー」

「どうなんだろ。透花が誰か好きな人がいるって話は聞いたことないけどなあ。そもそも彼氏募集してるのかな。あんまりそういう話はしないから分からないや」

「今度それとなく聞いておいてくれよ」

「まあ、そういう話題になったらね」

「たのむっ!」


 先崎くんの言葉を聞きながら、僕はふと自分の気持ちについて考えてみる。


 透花のことをどう思っているのか――。

 昔からずっと一緒にいて、家族みたいな存在で、特別な感情があるのかと問われると、正直よく分からない。

 確かに可愛いし、誰よりも魅力的だと思う。

 でも、それは幼馴染としての親しみや、長年の信頼が大きい気がする。


 もし透花が誰かと付き合ったり、遠くに行ってしまったらどう思うのだろう。

 想像してみると、胸の奥が少しだけざわつく。

 それが寂しさなのか、嫉妬なのか、あるいはただの習慣が壊れることへの不安なのか、自分でもはっきりしない。


 ただ一つ言えるのは、透花が笑っていてくれれば、それでいいということだ。

 彼女が困っていたら助けたいし、泣いていたら慰めたい。

 それが恋なのかどうかは分からないけれど――僕にとって透花は、やっぱり大切な存在なのだと思う。


 そんなことを話しているうちに、予鈴が鳴る。

 たしか一時間目は英語だっただろうか。


 宿題のプリントがあったはずだ。

 机の中に手を伸ばし、クリアファイルを探し出すと、先崎くんがハッと気付いた様子で、目に見えて焦りはじめた。


「やっべ、俺宿題するの忘れてた。頼む、相馬、見せてくれ!」

「仕方ないなあ。お昼、フルーツジュースで手を打とう」

「助かる!」


 両手を合わせて頭を下げる先崎くんに、僕は溜息をつく。

 本当に名前と行動が一致しないやつだ。

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