第11話 教室出たらいつもの部屋で衝撃的事実!?
思っていた異世界モノではなかったが、学園キャラになっていたのは神様に感謝しなければ駄目だな。
授業がどこかのダンジョンに集合しなければいけないということなので、とりあえず教室を出てそれから考えればいい。
そう思いながら教室を出たら――
「――あ。ひとし、おかえり」
「はっ……?」
「ふぉふぉふぉ。疲れたかい? ひとし」
あれ?
俺は確か教室から廊下に出たはずでは?
念のため振り返ってみると、そこには誰もいない教室が見えている。だが、目の前にあるのはいつもの居間で、いつもの二人が呑気にくつろいでいるんだが。
「……仕組んだな?」
「なんのこと?」
「ふぉふぉふぉ。わし、マッチョマンじゃろ! ひとしが好きそうだと思って頑張ってみたんじゃよ」
爺さん……あんただったのか。
しかし設定的にもう少し何とかならなかったのか?
「おい、爺さん! それとみこ様! 学園の設定はいくら何でも……ん?」
勢いで説教でもしてやろうと思っていたら、居間の空気が急にシリアスな雰囲気に変わっている。
まさか、またどこかに飛ばされるやつ?
「そろそろ真実を話す時がきたようだな。ひとし、とりあえず座りなさい」
「お、おぅ……」
爺さんがどこかのダンディな親父さんになってるんだが、変幻自在かい!
そしてみこ様は――どこにもいない。さっきまで俺を迎えてくれていたのに。訳が分からないが、俺は言われた通りに座る。
するとまるで地獄にでも落とされたかのように部屋の天井は暗闇が広がり、くつろぎスペースは、三途の川もどきのように川が流れている。
「な、なんだこりゃ!? お、おい、爺さん! これって一体……」
「今からひとしには真実を教える。心して聞くがいい」
「あ、あぁ」
何か俺やったっけ?
何となく裁かれるような空間になってるんだが。
「ひとしの家族はすでに亡く、ずっとぼっちで生きてきた……合っているか?」
ぼっちは余計だ。
「合ってる」
「実はその記憶こそが間違いなのだ。遠い昔のこととして記憶しているのかもしれないが、ひとし。かつてのお前は結婚していたのだ」
「はっ? ええ!? いや、俺はずっとぼっち……」
「辛い経験と記憶は深く沈めてしまうものなのだ。お前の父はすでに亡く、父親を会わせることは出来ないが、お前と生き別れた者ならば会わせることが出来る」
気のせいじゃなくて、マジなの?
生き別れってことは、俺に娘か息子がいるって意味だよな?
結婚の記憶も離婚の記憶も全くないんだが、でも……ずっとぼっちで社畜だったから、知らぬ間に忘れてしまいたい記憶ごと自分の中で消し去っていたのか。
「あ、会える……んだな? 俺と離れ離れになって暮らしていた血縁者に」
「一時的ではあるが、わしも神。その思いと願い、今この場で叶えてやろう!」
どこまで俺の記憶が甦るのかは分からないが、もし会えるのなら全て思い出すかもしれないな。
よ、よし、こい!
覚悟を決めてその場で待っていると、年齢にして九歳くらいの少女が俺のすぐ横にちょこんと座る。
まさかの娘だった!
息子と遊んだ記憶はほとんどないから必然的に娘になるが、だからといって娘、それもこんな幼い娘と生き別れなんて全く記憶にないんだが。
それとも離婚した後に生まれて、そのまま会わされずに成長したパターンか。
「ひとし……会いたかった。会いたくて、会えなくて……ずっと寂しくて…………」
なんかの歌詞のようにも聞こえるが、ここで茶化すわけにはいかないな。
「う、うん」
「わたしはひとしに会えないまま、消えちゃったの……」
「うん? き、消えた?」
「この姿はひとしの姿を見た時の姿。でも、今はもう――もし成長していれば、高校生くらいになっていたと思うんだ……」
俺の知らぬ間に娘がいて、だけど会うことなく娘だけが俺を目撃していたのか。
「つまり――君はもしかしてこの世にいない……のか?」
「そう、手違いで……転生したの」
……なんかどこかで聞いたことある話だな。
「手違いで転生させたのはわしのせいなのだ。まだあまりに幼かった娘が、父親と離れ離れになる悲しみは耐え難いものだった。その悲しみによって、泣いて泣き疲れて深く眠り、体調を崩し病床で眠っていた」
「それが俺の娘か?」
「そうだ。わしはその娘が弱っていた状態を見かね、回復の見込みがないなら――と、転生をさせてしまったのだ」
「はぁ……ったく、とんだ手違いじゃないか。で、転生させた娘はどこに?」
「神となり、生きている」
……ん?
それってつまり?
「ひとし。ひとしの記憶はわたしが直したの。だけど、今のひとしならきっと大丈夫……だから、解放するね」
「君が俺の記憶を?」
いったい何が何だか。
……そう思っていたのもつかの間だった。少女は俺の頭をそっと撫でたかと思えば、これまで抜かしていた記憶を全て戻したのだ。
「うっ――!? くっ……あ、頭が……」
忘れていた記憶を戻された反動で俺はその場に倒れこみ、深い眠りについた。
「――ぅ」
「起きた?」
「この可愛い声は、みこと……かな?」
「うん。そうだよ、パパ」
パパ……そうか、そう呼ばれていたんだな俺は。それがまさか、あいつと別れたうえに二度と会えなくなるなんて、起こされた朝には思いもしなかった。
みことは幼いながら俺を起こす時に、頭を撫でてくれたものだ。今もこうして撫でながら起こしてくれている。
それなのに、俺はなぜ忘れていた?
なぜ俺はずっと一人で暮らし、仕事に明け暮れていたっていうんだ?
……気づいた時には別れていた。そして、俺の一人娘であるみことと会うのも許されぬまま、俺は辛すぎる記憶を自分の中に封じたんだ。
「……みこと。あぁ、そうか……みこと、君がそうなんだな」
「うん。みことだよ。でも、もういかなきゃ……」
「そ、そんな、せっかく思い出して会えたのに!! 何でまた俺の前からいなくなっちゃうんだ! みこと、俺の大事な一人娘……」
「大丈夫、すぐ会えるよ。だから、おやすみなさい、ひとし……」
頭を撫でられながら、俺はまた眠る。
「――う……」
何度も悲しい夢を見た。ずっと心の奥深くに沈めたままの夢。
どうしてずっと忘れていたままだったのか。
「おはよう。ひとし。よく眠れた?」
「みこ様……? いや、みこと?」
「そう。わたしはみこと。今はみこ。神様」
ああ、そうか。
つまり元はと言えば爺さん、あんたが手違いをしたせいだな?
「手違いがあったんじゃよ、すまぬ」
ううむ、みこ様というかまさか自分の娘が神様になっていた件。




