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第四十二章 機械生命体VSコピー兵器 その1

42.1 第二回戦第二試合 機械生命体VSコピー兵器 対戦情報


 観戦モニターに表示されている対戦情報より。


 闘技場について。


 本日の闘技場はDタイプ。


 第一回戦第十三試合で、妖狐と影妖怪が戦った廃墟の街。


 正四角柱の閉鎖された密閉空間。一辺400m、高さ25m。


 総じて、立体的な戦闘が楽しめるようになっている。


 クーゲルビーストについて。


 第一回戦では、『謎の玉』と対戦情報に表示されていた可変機械生命体。ボール形態と機械合成獣のビースト形態がある。


 ムゲンΩについて。


 第一回戦では、『???』と対戦情報に表示されていたコピー能力を持つ形状記憶粘性合金製ロボット。第一回戦の試合中、対戦相手の宇宙人狼を兵器ごとコピーし、暗黒人狼に変化している。



 §   §   §



42.2 機械生命体VSコピー兵器 試合開始前 アラトの部屋


《さぁ、第二回戦に突入し本日は第二試合、大会も折り返し地点を過ぎたぜぇ! 第一回戦を切り抜けた勝者同士のぶつかり合い、本日はどんな死闘が繰り広げられるのかぁ!》


 解説者テレオの声がモニターから聞こえてきた。しかしアラトは不機嫌な顔で無口を貫いている。それを悟ったかのように無口になっているギリコ。


 二人のあいだの空気がドンドン重たくなっていく。


『シアイカイシ、3プンマエ』


 廃墟の街中心部に物体が一つ転送されてくる。


 一つは直径5mの銀色玉、クーゲルビーストのボール形態だ。


 花の妖精との対戦で、植物モンスター群から受けたダメージにより、ボール形態への変形ができなくなっていたはずだが……。


《さてさて、それでは選手の登場だぁ!

 まずはクーゲルビースト、第一回戦で植物モンスター『ガイアナ』を一掃した凍結のブレス、とんでもない必殺奥義を隠し持っていたぜ!

 いったいどんな原理なのか。全ての物質を凍結させるが、自分だけは凍結しない、超便利チート技! あれを出されて凌げる奴はいるのか?

 ちなみにこの機械生命体、なんと治癒能力があるんだとぉ! 修理じゃなく、自然治癒だぜ! だから、第一回戦で受けたダメージが治っちゃうという、これまた便利な能力。まさしくこの大会出場にふさわしい! オラっちは、優勝候補として挙げたいぜ!》


 一方、対戦相手のムゲンΩは姿を見せない。


『シアイカイシ10ビョウマエ、9、8、7……』


 試合開始直前でそのムゲンΩと思しきもう一つの物体が転送されてきた。


 第一回戦でコピーした姿、暗黒人狼だ。スタンド式グライダーに乗っている。


《元祖ハテナ選手、ギリギリの登場! 形状記憶粘性合金製ロボットの正式名はムゲン・オメガだ、ヨロシク! さぁ、いよいよ試合開始!》



 §   §   §



42.3 機械生命体VSコピー兵器 観戦模様 アラトの部屋 前編


『……3、2、1、ゼロ』


 ボール形態からビースト形態へと変形し、機械合成獣が吠える。ライオンとヒグマが混ざったような咆哮ほうこう


 猛獣同士の見た目が強い刺激になったのだろう、暗黒人狼の出現そのものが試合開始の合図となった。


《オメガ選手、第一回戦でコピーした黒い人狼のままだぁ! ということは、宇宙人狼の必殺兵器、ミニブラックホールも健在! これはエイリアンハンター・ゼロとクーゲルビーストの模擬戦と考えていいじゃねぇ?》


 暗黒人狼がグライダーに乗ったまま上昇、二刀流高周波シックルブレードを取り出し、両手で構える。


 続いて、自律式浮遊射撃兵器オートップを6基、グライダーから射出し頭上に展開させた。


 機械合成獣のボール形態は直径5m、ビースト形態では全長8mもある。ビルに例えるなら二階半の大きさ。廃墟ビルが乱立し、障害物が多すぎて入り込めない場所も少なくない。


 しかし高さ25mしかない会場内では、廃墟ビルや折り重なった瓦礫がれきを利用し、ゴリラのような脚力で空中の敵を捉えることは、さほど難しくない。


 一方の暗黒人狼はグライダーに乗って飛び回る戦法を得意とするので、その能力を存分に発揮するには狭すぎる戦場だ。


 機械合成獣が先に仕掛けた。


 左手のサークルシールドでオートップのレーザー弾とシックルブレードを防御しつつ、暗黒人狼に飛びかかった。


 全長190cmの暗黒人狼、対人間では大きく見えるだろうが相手が悪い。機械合成獣とのパワー差は歴然だ。


 機械合成獣の片手一振りで吹っ飛ぶ暗黒人狼、廃墟ビルに叩きつけられた。コンクリートのビル壁が人型にえぐれ埋もれる。


 サークルシールドを背負い追撃する機械合成獣、左手でビルにつかまり右手でパンチラッシュ。


 空中に浮遊していたオートップが機械合成獣の背後に向け援護射撃。が、背中のサークルシールドが上手く防御している。


 すると、オートップ1基が機械合成獣の背後で自爆。ミニブラックホールを形成した。さすがに危険を察した機械合成獣は、ドスンドスンと豪快にコンクリートのビル壁を足場として蹴りながら、ビル陰へといったん退避した。


《むむっ、黒い人狼のオメガ選手、やっちまったぜぇ! 自ら放ったブラックホールが目の前にできちゃってるぞ! 文字通り自爆行為だ! うまく逃げられるのかぁ~》


 暗黒人狼はミニブラックホールに別のオートップをぶつけて消滅させる。冷静な対処によりビル壁から脱出した。


 地上に降り立つ暗黒人狼、同時にグライダーが拾いに戻ってくる。


 突如、巨大な銀色のボールが屋上から降ってきた。ボール形態に変形した機械合成獣だ。


 暗黒人狼の頭上に勢いよく落下し、下半身がアスファルトの道路に埋まる。脳天に直撃した反動で銀ボールが浮かび上がり、再び暗黒人狼の脳天にヒット、頭がペシャンコに潰れた。


 そこへグライダーが真横から銀ボールに体当たりし、さらなる追撃を遮った。同時に埋もれた暗黒人狼が脱出する。潰れた頭がナノテクノロジーで元通り復元されていく。


 グライダーに飛び乗った暗黒人狼は、その場を離れ廃墟ビルの隙間へと姿を消した。


 ボール形態のままゆっくりと地上を進む機械合成獣。暗黒人狼が放つブラックホールの脅威はわかっているのだろう、警戒しながら慎重に暗黒人狼を探している。


 どれくらい時間が過ぎただろうか。廃墟の街が静寂に包まれている。機械合成獣は停止し、敵捜索を中断した。何か危険でも察知したのか。


 突如、廃墟ビルの壁が崩壊し、中から真っ黒いモンスターが出現する。ボール形態の機械合成獣に襲いかかると、両手で持ち上げそのまま投げ飛ばした。



【作者より御礼】

 数ある作品群から選んでいただき、かつ、継続して読んでいただいていることに、心から感謝申し上げます。


【作品関連コンテンツ】

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