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第四十一章 呪われた女子高生 その1

41.1 就職斡旋の約束


 第二回戦第一試合が終了した。


「他の怪獣が乱入って、そんなこともあるんだ」


「はい。昨日、アレスマーズロボとサメ怪獣の試合をもう一度見ておいて良かったですわ。あのサメ怪獣がアレスマーズロボを助けに来たことがよくわかりましたから」


「あの誰もがうらやむ人魚姫の怪獣だよね。もう二人はできちゃってんだろうなぁ~、いいなぁ~」


「あらあらアラトさん、もしかして、あのお二人があーんなことや、そーんなことまで、やりたい放題、好き放題で羨ましい! ボクもそんなふうになりたーい! とか考えているのですか? 正直に答えてください!」


「絶対にそんなことを思ったりするわけがありません! 僕には義理子先輩という素晴らしい女性が目の前にいますから!」


「息を吐くように嘘のつくのは止めましょう、アラトさん!」


 アラトは口笛を吹きつつ、ゆっくり視線を逸らす。


 すると、突如ギリコがアラトの顔を指差した。


「あなたは、『そりゃそうと』と言って、話題を逸らす!」


「そりゃそうと……、って、人の心読むな!」


「次のセリフは、『もしボクがあのドラゴンもどきと戦っていたら、秒殺だよね?』と言う!」


「もし僕があのドラゴンもどきと……、って、人の心読むな!」


「さらにあなたは、『ボクはもう死んでいる』と言う!」


「僕はもう死んで……、って、なぜわかる?」


「ご安心ください。まだ死んでないです」


「いっそのこと、死んでしまいたい……」


「ダメです。死なないでください!」


「ギリコって、複雑な人だね。もっと優しくしてほしいなぁ~」


「アラトさんはすぐ甘えるからダメです」


 へぇーへ、とぼやきながら肩をすくめるアラト。


 ふと思いついたように話題を変える。


「ときに、ギリコさぁ……」


「また改まって、どうしたのですか?」


「いやぁー、第一回戦突破して以来、気になってることがあってさぁ~」


「お伺いします」


「僕が優勝したら『ギリコを人間にしてもらう』って約束したじゃん」


「は、はい……」


 薄っすらと顔を赤らめるギリコ。


「そうした場合、僕の就職先ってどうなんのかなぁー、って思っちゃうわけ。だって、ギリコ・コーポレーションで雇用継続ってことないでしょ。この大会が終わったあとなんてさ」


「そうですわね。アラトさん、賢い!」


「もしかして、なんも考えてなかったわけ!?」


 アラトはギリコを責めるように叫んだ。


「そんなわけありません! そんな無責任な、非人道的な、まさかまさか……、そんなまさか」


 ギリコの目が泳ぐ。確実に狼狽ろうばいしている。アンドロイドなのに。


「や、やっぱりか……。任務任務とかいつも言うから、そうじゃないのかなぁ~、って思ってたんだよね!」


「えーとですねぇー、えーと、えーと……」


 ギリコがフリーズした。


「え、えっー! ここでフリーズしちゃうわけ? ホンマに世紀末覇者なんスか!?」


 ギリコの両肩を掴んで揺らすが、両目が開きっぱなしで無反応。


「ちょ、頼むよ~! こいつ、まさかまさかのポンコ……、オグッ!」


 知性あるロボットが嫌うNGワードは、ギリコのアッパーカットによってさえぎられた。


「イテテ……」


 涙目でアゴをさするアラト。アンドロイドの怒りの鉄拳が痛い程度で済んで良かった。


「アラトさん、十分ご存じと思いますが、そのワードは禁句です」


「はい……。お勉強になりました……」


 おびえる子犬のように縮こまるアラト。


「わたくしも謝罪しなければなりません。その件は完全になおざりとなっていました。アラトさん、大変申し訳ありません」


 ギリコが姿勢を正し両手を揃えると、完璧な謝罪モードで頭を下げた。


「わたくしからの提案を一つ。わたくしの望みを叶えてくださるわけですから、アラトさんの転職先を責任持って斡旋あっせんするというのはいかがでしょうか。

 世界征服者ですから、お望みの企業どこにでも斡旋可能です。しかも必ず入社できます」


「マ、マジっすか!? それいい! 最高だよ、ギリコ!」


 アラトがギリコに抱きつく。


「良かったですわ」


 笑顔になるギリコ。


 アラトはギリコの身体を離し、話を続けた。


「ただ……」


「ただ?」


「優勝できなかったら、斡旋してくれないんだよねぇ~。じゃ、また無職ってことじゃん」


「その点に関しましては、本社が処遇を決めることになります。この3か月間は試用期間ですから」


「思い出した。確かにそうでした……」


 アラトは渋々ながらも納得したようにサムアップした。


「それでさ、人間になりたいという話だけど……」


「アラトさん、大変申し訳ありませんが、わたくし次の予定がありますので。また後日……」


「そ、そうなんスか……」


 ギリコはパワードジャケットの強化で忙しいと言いつつ、アラトの部屋を去った。


「僕の試合は、第六試合。5日後か……ギリコがいつも自分の部屋で何してるか、気になるんだよなぁ~」


 と言って、こっそりギリコの後を追ってみたが、すぐに見失ってしまう。ギリコは彼女の部屋に戻っていなかった。


 仕方ないので、アラトは散歩に出かけ時間を潰すことにした。



【作者より御礼】

 数ある作品群から選んでいただき、かつ、継続して読んでいただいていることに、心から感謝申し上げます。


【作品関連コンテンツ】

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