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第四十章 合体怪獣VS巨大ロボット その2

40.3 合体怪獣VS巨大ロボット 試合模様その一 巨大ロボット側 後編


 飛翔というよりも浮遊しているという表現がマッチしている合体怪獣。巨大ロボはジョット噴射フルパワーで合体怪獣に体当たり、そのまま正面からつかみ急降下。合体怪獣の背中を大地に叩きつけるように我が身もろとも地表に激突した。


 大地が揺れ、大きくえぐれる。舞い上がる砂埃は強風で吹き飛ぶ。


 そこから巨大ロボと合体怪獣の地上肉弾戦へと発展した。


 マウントポジションから翼をもぎ取り飛行能力を奪いたい巨大ロボ、身を起こそうと激しく暴れる合体怪獣、双方のパワーは互角に見える。


 長い首を利用し、口から吐く炎を巨大ロボの顔に吹き掛ける合体怪獣。顔を防御した隙に起き上がり、尻尾先端の鉄球で巨大ロボの胴体を殴りつけた。


 が、その尻尾をうまく掴み取り、逆にジャイアントスイングにつなげる巨大ロボ。投げ飛ばすと同時にジェット噴射で飛翔、空中で合体怪獣の下半身を捉え、背中を地面に叩きつけた。プロレスでいう『パワーボム』のような豪快な技をむりやり空中から繰り出したのだ。


 悲鳴ともとれる苦しそうな咆哮ほうこうを上げる合体怪獣。それでも即座に起き上がり、巨大ロボと正面から対峙した。


 突如、首から尻尾までつながる無数の背ビレ、背中全面にある無数のイボのような突起、それに両肩の大きな角がチカチカと発光し始めた。まるで機械仕掛けのおもちゃのように点滅する。


『ウォーニング。EMPの発動兆候検知』


「対EMP相殺装置作動!」


『コマンド、アクセプト』


 防御態勢で身構える巨大ロボ。


 すると、合体怪獣の背中全面が一瞬閃光を発し、電磁パルスの波動が周囲に広がった。生体EMPが発動したのだ。


 電磁パルスの波動が巨大ロボを襲う。ケンシロウのコックピットにもその衝撃が伝わった。コンソールや各種ディスプレイがショックで一時的に停止する。


 硬直するロボット。


 アレスマーズロボは雷撃対策同様に、パルスザウルスのEMP対策も突貫で実行していた。電磁パルスの波動を相殺する装置の追加だ。


 しばしの間を置き、コックピット内のシステムが正常に戻る。


「アズ、システムチェック」


『暫定システムチェックによりオールクリア。対EMP相殺装置90%以上の効果を発揮しています』


「ヨシ! うまく凌いだ、見事だ!」


『イエス、ケンシロウ』


「さて、次の戦略は……」


 しばらく敵の倒し方を考察するケンシロウ。


「奴を倒すにはファイナルスマッシュサンダーが必須。しかし、移動する奴に命中させるのは至難の業。あれをやるしかない……」


『ケンシロウ、アレをやるのですか?』


「あぁ、一度も試したことはないが、アレしかないだろう。奴はおそらく、翼のダメージで飛行を躊躇ちゅうちょする。今がチャンスだ」


『成功確率75%。威力は70%までダウン』


「それだけあれば十分だ。ヨシ、作戦実行!」


『コマンド、アクセプト』


「アレスマァァァァーズ、ジェット、ウイィィィィング!」


 ケンシロウの号令とともに空に舞う巨大ロボ。


 地上から巨大ロボを見上げる合体怪獣。ケンシロウの予測どおり、飛ぶのをためらっているようだ。


「アレスマァァァァーズ、ファイヤァァァァー、キャノン! 全弾発射!」


 両肩から計22発の火球焼夷弾かきゅうしょういだんを全弾連射した。合体怪獣本体を狙わず、炎で周囲を取り囲む。火が燃え移らない肉体をしているが、炎の熱さは苦しいはずだ。


 続けて、上空から合体怪獣に向け急降下突撃する巨大ロボ。


「アレスマァァァァーズ、パァァァァーンチ!」


 空飛ぶ鉄拳が巨大ロボの降下する加速も加えて勢いよく殴りつけた。大地に倒れる合体怪獣。そのままジェット噴射で合体怪獣の両肩を地面に押しつけ、仰向けの状態で地表に張りつけた。


 降下を途中で止め、再び上空へと舞い戻る巨大ロボ。


「アズ、このまま空中でファイナルスマッシュサンダー発射準備。ウイングの放電パネルは照射後に展開」


『コマンド、アクセプト』


 ファイナルスマッシュサンダーはアレスマーズロボの最終必殺奥義。


 エネルギー充填時間は30秒、さらにビーム照射が30秒間。本来は地上に立ったまま停止して発射する兵器だ。しかもウイングに内蔵されている放電パネルも使用するため、物理的に飛行しながら発射はできない。


 しかし、ケンシロウが実行しようとしているのは、ビーム照射開始と同時にジェットエンジンを停止して、ウイングの放電パネルを展開しようとしている。いわゆる禁じ手、まさに邪道まっしぐらなのだ。


 おまけにアレスマーズパンチで敵を押さえつけているわけだから、エネルギー供給バランスの影響で破壊力は70%まで劣化する。しかし背に腹は代えられない。ヒットしなければ倒せないのだ。


 地上で鉄拳から脱出しようともがく合体怪獣。


 空中で静止する巨大ロボ。胸部装甲パネルがX字に展開され、その内部から四つのビーム照射装置が露出した。


『エネルギー充填完了』


「いくぞ! アレスマァァーズ、ファイナル、スマッシュサンダァァァァー!」


 四筋のサンダービームが照射される。


「ジェットエンジン停止、ウイング放電パネル展開」


『コマンド、アクセプト』


 空中で飛行エンジンが停止し、同時に背中と脚部のウイングが放電パネルとして展開されていく。


 巨大ロボは、想像を絶するほどの絶妙なバランスを保った。ビーム兵器を発射する反動と重力とを見事に制御し、空中で姿勢を維持しているのだ。


 戦闘AIアズの優れた能力だと言えよう。


 強力な雷撃系のビームが地上の合体怪獣にヒットしている。


 パルスザウルスが捕食したドラゴンは、もともと炎龍であり雷龍でもあった。第一回戦でも闘技場を囲むバリアの雷エネルギーを吸収して、凄まじい雷撃を放っているのだ。


 今現在のドラゴジランにも雷龍の能力があって然るべき。


 しかし、アレスマーズロボが繰り出すファイナルスマッシュサンダーの破壊力は、闘技場バリアの雷エネルギーを遥かに上回っている。全ての雷エネルギーを吸収できたとしても、凄まじい熱エネルギーで身を燃やし尽くしているに違いないのだ。


 実際、最初だけ頭部の角が帯電し雷エネルギーを吸収したのが見てとれた。が、すぐに苦しい表情へと変わり、逃げようともがき始めたのだ。


 雷撃ビームの照射が終了した。


 ブスブスと体表から白煙が上がっている。相応のダメージがあったのか、合体怪獣は静かに抵抗を止めた。


「ジェットエンジン始動! いったん地上に降り、体勢を立て直す」


『コマンド、アクセプト』


 アレスマーズパンチで合体怪獣を押さえつけたまま、地上に降り立つ巨大ロボ。


 合体怪獣に接近し、与えたダメージを確認する。あらゆる攻撃を跳ね返した屈強な龍のうろこが胴体からがれ落ち、不死身のよろいぎ取ったかのように見える。


 しかし四肢の一つを失っているわけでもなく、五体満足で大ダメージを与えた印象はない。


 第一回戦でパルスザウルスが金龍ハイエストと戦った時に、恐竜の皮膚は金龍の火炎ブレス攻撃であまりダメージを受けていなかった。それを考えれば、合体怪獣ドラゴジランは、雷撃と高熱攻撃の両方に強い耐性があっても不思議ではないのだ。


「信じられん。あの攻撃でも鱗が剥がれた程度で済んでいるのか……。しかし、チャンスであることは間違いない。もう一度ファイナルスマッシュサンダーを放つ! アズ、可能か?」


『アファーマティブ。ただし、アレスマーズパンチを回収してください。エネルギー補給が必要です』


「了解した、頼むぞ」


 合体怪獣を押さえつけていた鉄拳兵器がジョット噴射を緩め、離れようとした。


 その刹那せつな、自由の身となった合体怪獣が起き上がり、尻尾の鉄球でアレスマーズパンチ右腕を叩き落した。地面に叩きつけた鉄拳を踏みつけ、ジョット噴射のバーニア部に尻尾の鉄球を突き刺す。エンジン部を容易に破壊され、右腕の鉄拳兵器は沈黙した。


 左腕だけが巨大ロボに戻る。右腕を失い、同じ作戦は実行できなくなった。


 一瞬戸惑い、隙を見せてしまう巨大ロボ。合体怪獣は素早く接近し、尻尾を振り回し右脚部のサブウイングを破壊した。


「なにっ、しまった! 奴の狙いはウイングか! おのれ、アレスマァァァァーズ、ハンド、ビイィィィィーム!」


『ネガティブ。左腕へのエネルギー供給が終了していません』


「くっ、いったん空中へ、アレスマァァァァーズ、ジェット、ウイィィィィング!」


 合体怪獣が逃がすまいと、巨大ロボの右足を両手でつかんだ。そのまま、腕力で地面に叩きつける。


「なぜ奴に、こんなパワーが残っている……」


 その答えは、ある意味明らかだった。


 もともと獰猛どうもうな性格のドラゴジランだが、完全に目がわっている。鼻息も荒い。とどのつまり、激怒しているのだ。


 当然、プライドもあるわけだが、それ以上に痛い思いをして辛かった、仕返しをしてやる! そんな意気込みが、その赤い双眸そうぼうからヒシヒシと伝わってくるのだ。



 §   §   §



40.4 合体怪獣VS巨大ロボット 観戦模様その一 アラトの部屋


「これは良くない兆候です。あのドラゴン、いえ、合体怪獣ですか、かなり本気で怒っています。これで勝ったりしたら、『お前の敗因はたった一つだ』とか言いそうな勢いです」


「え、そうなの? ギリコ、そういうのわかるんだ」


「はい、間違いありません。アズとかいうAIが教えてあげないのがいけないです。ポンコツです。わたくしが代わってあげたいですわ」


「ものすごぉぉぉぉぉーく、猛烈なライバル心持ってることがよくわかりました、義理子先輩。」



【作者より御礼】

 数ある作品群から選んでいただき、かつ、継続して読んでいただいていることに、心から感謝申し上げます。


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