第四十章 合体怪獣VS巨大ロボット その1
40.1 第二回戦第一試合 合体怪獣VS巨大ロボット 対戦情報
観戦モニターに表示されている対戦情報より。
闘技場について。
本日の闘技場はFタイプ。第一回戦では一度も使用されていないため、今回初めて戦場となる屋外闘技場。
広大な自然の中、直径5kmの円形範囲を戦闘可能領域としている。会場を判別する枠や柵などは存在せず、高さ制限も無い。障害物の少ない荒野で構成されるが、一部海岸線も含まれる。
もう一つの屋外闘技場Eタイプと比べて、かなりの広範囲。空中戦も存分に披露できる。
戦闘可能領域を出てしまうと負けになるので要注意。モンスターが戦闘中に逃亡した場合、大会運営の警備スタッフが対応することになる。
合体怪獣ドラゴジランについて。
第一回戦第二試合で勝利した恐竜パルスザウルスが、対戦相手のドラゴンを食した結果、合体怪獣が誕生した。パルスザウルスと区別するために、大会運営がドラゴジランと命名している。恐竜の進化版として出場継続。
見た目は上半身が金龍ハイエスト、下半身がパルスザウルス。
能力は、両方の性質を継承しているものと推測される。
主な攻撃方法は、火炎のブレス、雷撃、超音波攻撃、マイクロ波攻撃、電磁パルス——EMP——と想定。
体長25m:首を伸ばして立った状態の身長。尻尾の長さは含まない。
アレスマーズロボについて。
搭乗操縦者:綾乃光寺 剣志狼
VSTOL式ジェットウイングで飛行可能。
武装兵器
・アレスマーズハンドビーム
・アレスマーズパンチ
・アレスマーズウイングミサイル
・アレスマーズグレネード
・アレスマーズファイヤーキャノン
・アレスマーズファイナルスマッシュサンダー
全長20m。
§ § §
40.2 合体怪獣VS巨大ロボット 試合開始前 アラトの部屋
『シアイカイシ、3プンマエ』
観戦モニターに映る広大な荒野、画面奥には海岸線が見える。波打ち際は激しく飛沫を上げ、流れる暗雲は分厚くて速い。嵐の前触れのような悪天候。
その薄暗い空の中、接近してくる巨大な影が見える。アレスマーズロボが鳴り響くエンジン音とともに飛来し、荒野へと舞い降りた。
停止する巨大ロボのジョットエンジン、待機状態へと移行した。合体怪獣ドラゴジランの姿は見えない。
モニターを見ていたアラトが、急に口を押さえる。
「や、やべぇ、ワクワクするけど、あの恐竜がドラゴン食ってるシーン思い出す……。オエッ」
「大丈夫ですか、アラトさん」
「な、なんとか……。ありがと、ギリコ」
「たしかに、あの怪獣は侮れないです。ここはぜひ、アレスマーズロボに勝利してもらいましょう。
もしアラトさんがこの怪獣と対峙したら、ゴキブリみたいにプチッって踏み潰されちゃいますから、ちょっとかわいそうです」
「ちょっとかわいそうレベルで済めばいいけどね……」
『シアイカイシ10ビョウマエ、9、8、7……』
カウントダウンが始まった。同時に荒野の外れで、虹色の発光体が空間に出現し、巨大な物体が転送されてくる。徐々に明らかになるその姿に、大きく広げたドラゴンの翼がある。
§ § §
40.3 合体怪獣VS巨大ロボット 試合模様その一 巨大ロボット側 前編
「アズ、待機状態解除。さて、敵は手強いぞ、気を引き締めろ!」
『コマンド、アクセプト』
『……3、2、1、ゼロ』
「アレスマァァァァーズ、ジェット、ウイィィィィング!」
ゼロと同時に、両者とも天空へ向け急上昇。
『アズ』はアレスマーズロボの戦闘操縦支援システムAI。
そのアズに指令を出すパイロットがケンシロウ。飛翔コマンド、攻撃コマンドを指示する際は、声を張り上げるのだ。
合体怪獣のベースであるパルスザウルスは、ティラノサウルスのような体躯でもともと空を飛べない恐竜だった。ドラゴンを取り込むことで翼が生え、空を駆け巡ることが可能になる。若干やせ細った体躯へと変貌したが、元のドラゴンよりも明らかに機動性が落ちている。
「アズ、飛行速度はこちらが上、空中戦はこちらが有利だ。畳みかけるぞ!」
『イエス、ケンシロウ』
「アレスマァァァァーズ、パァァァァーンチ!」
飛翔する鉄拳兵器と化した巨大ロボの前腕部が合体怪獣を連続で殴りつける。雄叫びを上げ抵抗する合体怪獣。ジェット噴射で強烈なパンチを浴びせるが、龍の鱗が弾き返しているように見える。
「アレスマァァァァーズ、ファイヤァァァァー、キャノン!」
バックパックの両肩部分から火球焼夷弾を発射、合体怪獣にヒットする。肉体を燃焼させるはずが、金の鱗に点火しない。
その隙に、元に戻るアレスマーズパンチ。
「アレスマァァァァーズ、ハンド、ビイィィィィーム!」
巨大ロボの両手の平から光線発射、合体怪獣も火炎のブレスで応戦し相殺する光線と炎。
「アレスマァァァァーズ、グレネェード!」
巨大ロボの腰部分に内蔵された中型ミサイルを左右二発ずつ連射。合体怪獣に直撃したが、すぐに体勢を整える。
「クッ、ダメージ無しなのか!」
『アファーマティブ』
「一回戦のシーギメラスと違って、こいつに再生能力はないはず」
『ドラゴンを捕食することで失った頭部を新しく生成しています。しかし、捕食無しでの再生はできません』
「あのドラゴンの鱗が強靭だ。ならば鱗の無い翼が弱点。奴が応戦できない攻撃を仕掛け、地上での肉弾戦を試みる。アレスマーズSSR合金の頑丈さで勝負するぞ!」
『イエス、ケンシロウ』
「アレスマァァァーズ、ウイングミサイル、フルバァァァースト!」
アレスマーズロボ必殺技の一つで、計七十二発の小型ミサイルを、ウイングからマシンガンのように連射する攻撃だ。
合体怪獣はまたもや火炎のブレスを吐き、襲いかかってくるミサイル群を迎撃する。2~3割は撃墜したものの、大多数は直撃を許してしまう。
『対象に54発直撃、ダメージあり』
狙いどおり、合体怪獣の翼にダメージを与えていた。飛翔能力を奪うほどではないが、明らかに飛行速度が落ちている。
巨大ロボを睨めつける合体怪獣。頭部の角が静電気を帯びてパチパチと鳴り火花を散らす。
『ウォーニング。雷撃の兆候検知』
「放電パネル展開!」
『コマンド、アクセプト』
合体怪獣の放つ雷撃が巨大ロボットに直撃した。
アレスマーズロボは第一回戦の勝利直後、合体怪獣ドラゴジランとの戦闘も想定し、雷撃——ドラゴンが放つ雷撃データをベースとして——の対策を講じていた。
背中と脚部にあるウイングに内蔵されている放電パネルを利用し、雷撃の一部をエネルギーとして吸収、余分な電気を外部に放出という改良を実施していたのだ。
「アズ、ダメージ報告」
『ダメージゼロ%。ケンシロウのアイディアが成功しました。対象はドラゴンの能力も吸収していますが、威力は低下しています』
「了解した。ヨシ、奴に突進、肉弾戦だ!」
『コマンド、アクセプト』
【作者より御礼】
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