第五十一章 ナース攻防戦&アラト絶体絶命 その1
51.1 ナース攻防戦&アラト絶体絶命 前編
第二回戦第六試合終了。
アラト辛勝、第三回戦進出。
アラトは例によって、またホテルの医務室に運ばれた。
看護ロボが負傷箇所の手当てを終えると、病室を出て行く。独り残されたアラトの全身は、包帯まみれだ。
「あーあ、ギリコ早く来てよぉ~、寂しいよぉ~」
コンコン。病室のドアをノックする音。
「はーい、どうぞ!」
「失礼します」
ピンクのナース服に身を包まれた女性が入ってきた。
アラトの意表を突き、ギリコがナースコスプレをしてやってきたのだ。
「ちょ、こんちくしょーめ、そんなん、反則だって!」
ワンピース系のナース服で、超ミニと白のサイハイストッキングがエロさを醸し出す。
さらに、いつものビジネスライクな営業スマイルよりも断然ソフトな表情。フワフワと柔らかい髪型にアレンジし、ふっくらと優しい印象の化粧で顔の丸みが増している。
総じて、思わず甘えたくなるようなナースに仕上がっていた。
戦闘モード『金髪版クレオパトラ・ヴィーナス』の変身具合もそうだが、小悪魔女子高生コスプレに続き、ギリコはこの手のキャラ作りが得意らしい。
「なんちゅー姑息な……、どんだけ卑怯なことするねん、エロかわゆすぎるぞい! ぬぉぉぉー、心の声、ダダモレやぁ!」
「とっても嬉しいですわ、アラトさんに喜んでいただいて」
「ギリコってさぁ、ホント小悪魔だよねぇ~、なんでそんなに男を喜ばせるの上手なんスか?」
「日々、お勉強に勤しんでおりますので」
「絶対、成人向け漫画とかで偏った学習してるよね」
「そのほうが、アラトさんにとっても都合がよろしいのではないですか?」
「た、たしかに……、って、違ぁ~う!」
「アラトさん、ダメですよ、嘘は。小説を執筆する際には、必ずビシッと、ズバンと、本音丸出しで心理描写してくださいね。約束ですよ」
「そんな約束しないもん」
「そんな与太話はさておき、お体はいかがですか?」
「よたばな……、んーと、一応、大丈夫」
「わたくしの看護のおかげですね。さすが大丈夫義理子さん、頼りになる素晴らしい女性ですわ」
「自分で言うな! てか、手当てとかなんもしてないよね、ギリコナースは」
「そんな、非道いですわ。わたくし、アラトさんの対戦中、ずっと無事で帰ってくることを心からお祈りしているのですよ。
わたくしのお祈りがなければ、アラトさんは今ごろ、ぼろ雑巾のようにボッコボコにされて、全身複雑骨折で再起不能、顔も見れないぐらいグチャグチャになっていたかもしれないのに、どうしてそんな非道いこと言うのですか? ギリコ、泣きたくなります」
「泣きたいのこっちだわ! 『非道』とか単語使って、なんか血も涙もないような言いっぷりで、いったい僕にどうしろと?」
「仕方ありません。こうなったら、アラトさんにはお詫びとして、わたくしが見聞を広げるために惜しみなく協力していただきます」
「ものすごく一方的で、ものすごぉーく嫌な予感しかない……」
ギリコナースがアラトのベッドに近寄り、アラトの掛け布団を剥がそうとした。
「チョイ待ち! 今、スッポンポンなんですけど。さっきのナースロボが全身包帯巻くのに、おパンツも脱ぐことになって……」
「ちょうど良かったですわ」
掛け布団をグイグイ引っ張るギリコナース。
「ダメだと言うに!」
「おかしいです、アラトさん! おんぼろナースロボにカラダ許して、超絶美人先輩には許さないって、あり得ないです!」
「どういう意味だよぉ! なんか突っ込みどころ満載で、何から反応すればいいかわからんわい!」
「寝言は寝てから言ってください、新人さん!」
アンドロイドのパワーに勝てるわけないので、アラトが押し相撲の駆け引きの要領で布団を手放す。ギリコナースは勢い余って掛け布団を握ったまま後方へと倒れた。
包帯グルグル巻きの裸体を晒してしまったアラトは、急ぎ枕を両足で挟み込み、大切な場所をガードする。
一方のギリコナースがスッテンと転んだ瞬間、超ミニナース服の中に潜む、ピンクのおパンツを拝見してしまったアラト。
(なぬぅー、こ、こんな時に、サービス回とか、マジ、止メレ!)
ますます、枕でガードしている部位をギリコナースに拝見されるわけにいかない。
布団を握ったまま、ゆっくり起き上がるギリコナース。
「さぁ、覚悟を決めてください、新人さん」
「いやぁ、待って! ここはきちんと話し合おう、義理子先輩!」
「ダメです」
「なんでだよう! そもそも、どしてこんなことすんのさぁ?
アニメや漫画にだって、こんなムチャするヒロイン存在しないよ!?」
【作者より御礼】
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