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第四十八章 悪魔VS魔導剣士 その2

48.4 悪魔VS魔導剣士 試合模様その二 魔導剣士側


 数分前にさかのぼる。


 エルフはディメンションスネークソードによるエッジブレードワープ攻撃の第一撃を成功させた。


 エッジブレードが戻ったところで第二撃を繰り出そうとすると、悪魔が瞬間移動をしていた。


「奴め、時間停止を使ったのか。あれが額の魔眼が開く感覚、覚えた!」


 エルフは悪魔が時間停止で瞬間移動する様子をしばらく観察し、その癖とタイミングを覚えた。


「次はあの辺りか」


 エルフが培ってきた戦闘経験の勘で、次の出現場所を推測できる。


 自身の目の前にディメンションリングを一つ配置。続けて次の移動先と思しき場所に二つ目のディメンションリングを放り投げ、意図する座標にリングを浮遊させた。


 エルフに念動力の能力は無い。が、特別あつらえのディメンションリングに限って、放り投げてから好きな場所で止めること、放置しているリングを真っ直ぐ手元に呼び戻すことだけできるのだ。


 自由に飛ばせるわけではないが、戦略の幅は広がる。


「そろそろか」


 悪魔の時間停止のタイミングに合わせ、出現場所と推測した座標に向けエッジブレードワープ攻撃を仕掛けた。惜しくもヒットできず戻ってくるエッジブレード。


 同時に、目の前に配置したディメンションリングを潜り抜け、先に投擲とうてきしているワープ先のリングに姿を現す。狙いどおり、悪魔の背後にワープ移動したエルフ。


 ディメンションスネークソードを振り上げ、真っ向斬り。


「死ねぇ!」


 カキィーン!


 エルフの雄叫びと同時に響き渡る刃物同士が接触する金属音。


 エルフの目の前でディメンションスネークソードが砕け散った。


「なにぃー!?」


 驚愕きょうがくするエルフ。


 ディメンションスネークソードが斬りつけたのは、悪魔の円形魔法陣から刃を覗かせている『刀剣破壊斧』だったのだ。



 §   §   §



48.5 悪魔VS魔導剣士 試合模様その三 悪魔側


 砕け散ったディメンションスネークソードを見て、悪魔の口角が吊り上がりニヤリとする。


「おやおや、まんまとわたしの誘導にまっていただきましたな」


 『刀剣破壊斧』は、悪魔クロノスサタンが第一回戦で帝王ガリュウザを倒した時に戦利品として奪っていた武器。物質界に存在するありとあらゆる伝説的な神器、聖剣、法具類を破壊できる、『魔宝玉』に付属する唯一の秘宝なのだ。


 ただし、『魔宝玉』と『刀剣破壊斧』の両方が揃っていないと効果は得られない。


「いえね、あなたのその武器ディメンションスネークソードはわたしにとって脅威だったですよ。剣術の心得など皆無なうえにバリアで防げないわけですから、非常に厄介としか言わざるを得ません。

 おまけに空間を切断できるとなると、そこに障害物ができてしまう。時間を停止させた時ですら影響すると面倒ですからね。

 そういった訳でして、あなたに襲ってもらい『刀剣破壊斧』で破壊するというのがわたしの当初からの作戦でした。

 これで怖いものがなくなり、遠慮なく攻撃できますな、ハハハハ!」


 憤怒の表情をき出しにするエルフ。


「ぬぅぅぅ~、おのれぇぇぇ~」


 エルフはわなわなと震えながらも、目の前に出現している悪魔の円形魔法陣——エルフの固有空間のように武器を収納することができる——から刀剣破壊斧を奪い取った。


「盗難はよくありませんな。仕方ありません、それはのちほど回収するとしましょう」


 悪魔は余裕を見せながら、エルフの周囲で多数の円形魔法陣を出現させた。


「さぁ、ミラージュ殿。これは防げますかな」


 ぐるりとエルフを取り囲む多数の円形魔法陣から破壊魔法弾を斉射。エルフがまとう真紅のロングコートに破壊魔法弾の一斉発射が近距離で直撃し、漆黒のワンピースごと粉々に破壊していく。爆炎の中、手にしていた刀剣破壊斧が邪魔だったのか、エルフはそれを地表へと投げ捨てた。


 エルフは火だるまになりながらも、その場に移動してきたディメンションリングを逆戻りし、元の場所に出現する。

 燃えさかるコートと服装全てを勢いよく脱ぎ捨てた。



 §   §   §



48.6 悪魔VS魔導剣士 観戦模様 アラトの部屋


「さてと、もう決着つきましたし、観戦を終了します」


「ちょっと、待ったぁー! ダダダダメでしょ、今消しちゃ!」


「このあと、アラトさんが期待するような展開は何一つありませんから」


「いや、思いっきりあるよね。これぞホントの、今でしょ!」


「はい。ですから今消します」


「いや、そうでなくて」


「そうでなくて、どうなんですか?」


 アラトは何か言いかけたが、ギリコが悲しそうな目をしていることにハッと気づいた。そして思った。昨晩あんなにギリコのことで悩んだのに、自分はなんてバカなんだと。


「ご、ごめんギリコ。もう見るの止めよう」


「本当にいいのですか、アラトさん」


「うん、もう見ない」


 と、やりとりをしている間に、エルフ脱衣後の映像がアップで映し出されていた。


 真紅の三角ビキニに、真紅のハイヒールとサイハイソックス、ロンググローブ。頭に女戦士をイメージした翼のような形状のゴールドオーナメント、右肩にショルダーアーマー。


 そして赤毛のショートヘアーに赤い瞳。エルフの尖った耳。


 透き通るような白い肌、引き締まった腹筋、見事なプロポーションは女性の肉体美を全面に醸し出している。そして男性は皆、美しい肢体から妖艶な香りが漂っていると妄想するに違いない。


「あー、もしもし? アラトさん? 消しますよ」


「うんうん」


「はい、もう見えません」


 ギリコは本当にモニターをオフにする代わりに、アラトに目隠しをした。


「うんうん」


「鼻の下、伸びてます」


「うんうん」


「もしもし」


「うんうん」



【作者より御礼】

 数ある作品群から選んでいただき、かつ、継続して読んでいただいていることに、心から感謝申し上げます。


【作品関連コンテンツ】

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