五話「出発」
村長との話のあと、俺はイーヴィーと一緒に村の外れの丘に立っていた。風が穏やかに吹き抜け、草がさらさらと音を立てている。平和な村を背にして、俺はこれからのことを考えていた。
「イーヴィー、そろそろ出ようと思う」
「了解しました、主。次の目的地は決まっていますか?」
イーヴィーが静かに問いかけてくる。その声には、どこか迷いを許さない確信があった。
「いや、はっきりとはしてない。でも、ずっとここにいても何もわからない。あの遺跡が何なのか、俺たちがどうしてそこにいたのか……それを知るには、もっと外の世界を見ないとダメだと思う」
イーヴィーは軽くうなずくと、遠くを見やった。俺も同じように視線を上げ、村の外の広がる景色を見つめる。森、山、川――知らない世界が広がっている。
「主、推奨される方角があります。一番近くに人の痕跡があるのは、南の方向。そこには比較的規模の大きな集落か、街のような構造物が存在している可能性があります」
「わかった。じゃあ南へ向かおう」
俺は軽く息を吸い、決意を胸に込めた。旅の目的はまだ漠然としているけど、それでも進むしかない。
村を出発する朝、村人たちが見送りに来てくれた。特に親しくなった子供たちは、少し寂しそうな顔をしている。
「また来てねー!」
「気をつけてね!」
俺は手を振り返しながら、笑顔で別れを告げた。村での時間は短かったが、心に残るものだった。
そして、イーヴィーと共に、俺たちは新たな一歩を踏み出した。