『聖なる甲虫』『オルゴール』
『聖なる甲虫』
われこそは、世界の王だ!
自由自在の、神の使者。
関わり合いの、無いものはなし。
その名声を、知らぬ者なし。
光輝ある、その名はうんこ!
皇后の名は、うんちであるぞ。
皇族も、沢山おるぞ。
うんにょにうんぴ、うんごにふんと。
食事中なら、ごめんなさいね。
医学博士は、こう言いますね。
「便の調子は、穏やか安し」。
われら王家の、一族は、
聖スカラベが、厳護せし神。
エジプトの、生ける神。
『オルゴール』
珍重な オルゴールあり。
黒い唐桧を、優しく包む、
装飾は、質素で優美。
手指の脂で、艶んで光り。
懐かしの、手触りからか、
蓋を開ければ、故郷の音色。
嗄れた、義祖父の面影。
ヘッセの歌が、流れ出た。
世に抗って、死をも望みし。
その歌よ、ドラムは回り、
櫛歯は震え、奏でるよ。
鈍く曇った、金の太鼓が、
真鍮の詩、歌ってる。
オルゴールこそ、わが心かな。