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カラス

作者: はる

あるアシナガバチの話

カラス


アシナガバチが一頭いた。


ある時、いつものようにイモムシが居そうな花の裏を物色しているとたまたま声が聞こえてきた。


鳴き声や音と表現した方が良いかもしれない。


そもそも彼女は他の虫たちの言葉なんて分からないのだから。


音のなる方へ意識を向ける。

彼女の複眼のいくつかがカメムシの集まりを捉えた。

近づく予想より沢山いる

もっと近づく予想より遥かに沢山いる。


そのうちの1頭に食らいつこうとした瞬間

その集まりは

集まりというより群れ

群れと言うより集合体は彼女を飲み込んだ……


どれくらいの時間が経ったか

意識に光が戻る

地面に這いつくばっていたのにも関わらず蟻たちに見つからなかったのは幸いだった


六肢四翅(ろくしよんし)の起動確認欠損なし

いつもの完璧な私だ

しかし何が起きた視界の端にカメムシ達の亡骸が見える


巣に持ちかえるか?

少しの逡巡不意に声が聞こえてきた


「俺達を喰わせるのか?」


仲間の声とも違う不気味な音だった


音の出処を探る


「俺達を喰わせるのか?」


再度同じ声声の出ているだろう方角に意識を向ける


そこにはカメムシ達の亡骸しかない


「もう喰わせられぬだろう?」


そんな事はない。

仲間以外は餌だ。


「事実俺達のことを肉ではなく亡骸だと認識しているじゃあないか」


……


意識せず分かってしまった。


私と、このカメムシの亡骸は同じなのだ。


「そうさ。俺達とお前達の差なんて無い」


「そうやって蟻に足を噛みちぎられていても痛みなんて感じないだろ?」


足の1本が無くなっていた


嫌だ。完璧な私で無くなる


「元々完璧からは程遠かったじゃないか」


「スズメバチには体格で負け」


翅がもがれる


「蝶には優雅さで負け」


腹が裂かれる


「カブトムシには硬さで負けている」


蟻たちに運ばれる私の足や腹の一部が視界に入る


蟻の巣に運ばれ肉団子にされ喰われていく


あのカメムシの笑い声が聞こえてきた


そこで、目が覚めた。


生きている亀虫達が怯えた眼差しでこちらを見ている

「おい、起きちまったようだぞ」

「だからさっさと逃げようって言ったんだ!」


そうだ、こいつらを丸めて巣に持ち帰らなければ


「ひぃ!やっぱり襲ってくる気だ!」


言葉が分かる


本能のスイッチが入らない


巣に帰ってきた時の安心感に似た何かが

邪魔をしているのがわかる。


この場から離れるか


ここに餌は無い


餌とは何か


芋虫を想像してみた


餌では無い


蜘蛛を想像してみた


餌では無い


樹液はどうか


コレは私が食べる物だ。

餌では無い。


子供達に何を持って帰ればいいのだ。


巣に帰ろう


そう思い飛び立つ


高く翔ぶ


高く高く翔ぶ


そこで私は鳥に喰われた


解説

騙してた側が騙されるメタファー。

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