表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ALL PRO  作者: オーバエージ
2/2

ポストマン、ガンナー、気象強行士、ハッカー、オールプロ。

「お!テッドどうしたんだよぉ」


訓練仲間のマァニーが席をポンポンと叩いた場所に座る。


「局長とちょっと、ね…」


「局長と話してたのかぁ?なんか秘密の事かよ?」


同じく仲間のボリスがテッドに肩に手を伸ばす。


「そんなんじゃないってば…ぼくは」


テッドの言葉を遮るようにプルンが喋り出す。


「射撃力満点のテッド様だからねーこれは推理しないとね!」


プルンは背が少年並みだが、頑張ってAクラスになった子だ。尊敬に値する。


「頼むからカレーを食べさせてくれ!お腹が減ってたまらないんだ」


そう言ってカレーを食べる事に集中した。


ボリスは少しひそめて言った。


「俺たちはAAダブルエーには上がれるだろう。でもAAAトリプルエーになりたい奴はいるか?どうだ?」


プルンが会話に割って入る。


「そりゃあAAAは報酬がケタ違いだからねぇ。まよっちゃうよねぇ~」


「馬鹿!AAとAAAは格が違う。夢見るのはよせ」


マァニーは現実主義者だ。AAでも充分給料は高い。それでもAAAになりたい人間も、この食堂に集う数十名の中にいるはずだ。


テッドはカレーを食べ終えて、じっと手を見た。


(僕はなれるだろうか…AAAという名の悪魔に)


食事を終えた僕らは、食器をカウンターに戻し、それぞれの部屋へ戻っていった。テッドも自分の個室に戻り、服も着替えず、あっという間に眠りに入った。




幾日も訓練は続いた。そもそもインターネットも電話も使えなくなった原因のハッカーを探し、暗殺するのが先ではないのか。


なぜハッキングを続けているのかさえ分からない。その為、『手紙』が重要な位置に着いたのだ。




テッドは日に日にガンアクション・スピードを上げていった。ターゲットは人ではなくトマトだと思って射撃すると、段々とスピードが上がっていったのだ。


1週間もたたずにテッドはマシーン化していった。郵便局長もテッドの成長ぶりにうなずく。仲間がAランクからAAランクに上がったりもして、気合いを貰ったりもした。


それから2週間ほど経ったある日、また郵便局長から部屋にくるよう招集され、テッドは食事も摂らずに郵便局長の部屋をノックした。


局長はやはりいつものハバナ産の葉巻を手に持ち、味わっていた。


「テッドです。参りました」


「そう堅苦しくするな。まあ座れ。」


高級そうなソファに身を沈める。フィット感がとても良い。郵便局長もソファに座って葉巻を実に美味そうに味わいながら話かける。


「君は明日からAAに昇格だ。実際良い結果が出たのは大変喜ばしい」


「ありがとうございます」


ここは素直に喜んだ。


「ここから核心なんだが通常訓練を離れ、君だけに特殊訓練を行うことにした」


「えっ?」


「銃の扱い方はもちろんの事、柔術、銃の為の医学、サバイバル術、羅列したらキリがないが、大統領の手紙を無事に届けるための全てを君に注ぎ込む」


「僕が…ですか?」


「AAAになりたくないのかね?」


「それは…」


そう言うとテッドは戸惑った。AAとAAAでは格が全然違う事が局長の話が瞬間的な速度で追いついてきたからだ。


「……なりたくはないのかね?」


郵便局長が再び訊ねると、テッドは肘の黒ジーンズを両手で一度だけかき回して、


「その特殊訓練に耐えられるのなら…僕はAAAになりたいです。大統領の手紙を持って、命を賭けた戦いをしたい!」


感情的になっているテッドをなだめてから、葉巻の煙を吐き出した。


「その時はいづれ来るとだけは言っておく。とにかく明日から特別訓練場にきたまえ。以上」


局長の部屋から出ると、膝がガクガクと騒ぎ出した。本意なのか?少なくとも僕にとっては勇敢で孤独な決断だった。


そう思うとそこからしばらくは動けなくなっていた。




次の日。


訓練生のマーニィがいつものように訓練場に半分駆け足で到着すると、


「あぶねー遅くなる所だった。あれ?テッドがいなくね?」


訓練生プルンが切なく言った。


「まさか脱退したんじゃ…」


「ありえねぇ。テッドが逃げ帰る理由がねぇ」


マーニィは断固プルンの選択を投げ捨てた。隣に居たボリスが断言する。


「彼はAAAになるんだよ。ここは彼にとって修行の場所じゃなくなったんだ。」


沈黙が手短に響き渡った後、マーニィが、


「俺たちはAAを目指そうぜ!俺たちだってAAAになれるかもしれねぇじゃんかよ!」


「そうだな…ここは騒ぎたたずにAAを着実にねらっていこう!」


そう言うと、プルンはピョンと跳ねた。


「ジャンプだけは得意だなプルンは!あはは!」


誰も傷つけながら、皆は各々いつもの訓練生の朝が始まった。




テッドは特別訓練場初日。ドアの前に立ったまま、動けないでいた。後ろから明らかに集団の靴音がして振り返ると、各分野のエキスパート達が半透明な足音を軽く響かせながらやってきた。


「そこで何をしている。早く入り給え」


(郵便局長も参加するのか…)


心の出口が見えないまま、集団に押されるようにドアへと入っていった。




それから何か月経っただろうか。




仲間たちは全員AAに昇格していた。その中にはやはりAAA志望者も幾人かはいた。


特別訓練のドアが開き、テッドがゆっくり顔を出した。目に輝きがない。郵便局長がテッドの肩を叩くと、


「さあ。あとは『こめかみ』に極小ICチップを3枚埋めるだけだ。手術室へ行こう」


テッドは極小さく頭を縦に振ると、局長にいざなわれて足を踏み出した。




運命とも言える次の日。


AAAを志願したAAの集団が、白い息を各々吐き出しながら森かすむ平原に集合していた。


「なんでこんな所に…?」


「ターゲットなんて何にも無いじゃないか…」


十数名が騒ぎかけたその時、軽自動車がこちらに向かってくるのが見えた。


ややざわつきながら支持を待つと、郵便局長とテッドが降りてきた。


「テッドッ‼」


始めに皆が驚いたのは、テッドが青いオーラに包まれていた事だ。


全員、言葉の密度がきつくなってしまい、つまりは喉から言葉が出なかった。


一気に不穏な空気が白い息となり、寒いのに汗が止まらない者もいた。


「テッド!しばらく見ない内にどうしたっ‼」


テッドは集団を一瞥しただけで、


「…18名」


と呟いただけで、マーニィの問いには答えなかった。


局長が一喝する。


「そう…18名だ。AAAになる為に集まったゴミくず共」


「ゴミだぁ⁉」


さすがに局長のその言葉にアーチのように罵声が連なってゆく。


「皆黙れ!」


局長のその声で、罵声がたたまれてゆく。


「AAAになる方法は簡単、ここに居るテッドを殺した者にAAAの称号を与える」


「はあ⁉」


「逆にテッドが皆を殺したら、テッドがAAAとなる。チャンスだぞお前ら!これだけおいしい訓練はないだろうが?ええおい」


「急すぎる…!急すぎだろうがっ‼」


「テッドは俺たちと一緒に汗水流してきた仲間だろうが!」


テッドは2丁拳銃、弾薬を体に巻き、手榴弾をあらゆる所に配置している。その上青いオーラに包まれているのだった。


「怪物め‼」


罵声をモノともしない局長が叫ぶ。


「私が手を1発叩いたらスタートだ。叩いたら今ここで殺ってもいいんだぞ?ほら、どうした、いいか?」


そう言いながら、局長は手を叩く。響いてゆく。


刹那、プルンが血しぶきを上げて3メートルほど飛ばされる。喀血して死んだ。


「森に逃げ込めーっ‼」


テッドは走ってゆく仲間を森に逃げる前に仁王立ちで数名倒した。


「…残り13名」


「ああよくやった!森に行って獣狩りをして来い。わしは明日の朝ここでまっているからな」


テッドは2丁拳銃を抜くと銃をしばらく回転させてから、素早く移動して森へと消えていった。




次の日の朝---------------




郵便局長が白い息を吐きながら昨日いた平原でただ1人の人間の帰りを待っていた。


朝もやの中から、1人の人間らしき者がこちらに向かって漂ってきた。もやを消し去り現れたのは、返り血を全身に浴びたテッドの姿だった。


さすがに無傷ではなかったようで、腕とふとももに布を巻いて止血していた。




局長はテッドの胸に、手をグーにして優しく押し込み小鳥のように囁く。


「おめでとう。君こそはまごうことなきAAAだ」


すると急に体が動かなくなり、暗闇が訪れ、かすかな声に耳を傾けた。




「……屋……便屋…………郵便屋‼」




ハッとしテッドは上半身を素早く起こす。鎖骨はじめ全身に痛みを感じる。


横にはヨーコがテッドを生まれ立ての子犬のように抱きかかえていた。


「脈はあったけど、なかなか起きないから心配したぞ、このっ」


暗闇の中に詰まった回想をもう一度掴もうとしても掴めず、全身とヨーコの涙からすり抜けていった。


折れているだろう鎖骨もそうだが、肋骨もいくつか折れているだろうと感じた。


「肋骨もやられているようだ」


テッドがそう言うと、


「車に乗っていかない?」


とヨーコ。


「いや。ここまできたら車でなく、歩いて…這ってでもホワイトハウスに行く…」


ヨーコは速攻で葉っぱで車を隠す。


「ヨーコ…人の肋骨の数知ってるかい?」


「わからないわ」


「男女とも24本もあるんだ。1本や2本折れたぐらいで…ゴフッ」


テッドは喀血する。


そして血の匂いに誘われたコヨーテ達が2人を囲み始める。


テッドは銃を抜いて言った。


「ヨーコは僕を支えておいてくれ、そうすれば僕が…」


言葉を遮りヨーコが叫ぶ。


「雷!コヨーテ全員に!」


叫ぶと轟音がしてコヨーテは全員死体と化していた。


「こりゃいいや!傑作だね」


「笑うとまた骨に響いちゃうから!それにもうパワーが尽きて、気象強行士はただの女になったんだから。」


そう言うとヨーコは銃を取り出し、


「でもこれがあるから!」


「期待してもいいかな?」


ヨーコに支えてもらいながら、1歩1歩あるいてゆく。


歩きながら、ネコパンチの事を心底考えていた。


「ネコパンチさえ生きてたら最高だったのにな…」


テッドは贖罪を吐露すると、


「…そうね」


とだけ呟いた。そして、


「ネコパンチはどこか死に場所を探していたのよ。いつも口癖のようにいってた。魂を解放するためにね」


「…そうか…僕はあがくけどね。それって駄目な事かな?」


「いえ。私だってそう。生きてる内が花なのよ」


そんな話をしながらしばらく支えられながら歩いていると、ホワイトハウスがやっと顔を出してきた。


テッドはヨーコに力無くつぶやく。


「ヨーコ、ここまでありがとう。ここからは自分は這ってでも進む。醜悪な姿を晒すけど、ヨーコには後ろから付いてきてほしい。いいかな…?」


「いいもなにも…」


ヨーコはこの郵便屋との間に新しい何かが芽生え始めていた。簡単に言葉にはできない、密かな何かだ。




テッドは血まみれの中、這いつくばってホワイトハウスを目指した。


何度も手伝おうとしたヨーコだったが、断った。這ってく男なんて本当は見せたくないのだが、AAAの使命感を帯びた何かが彼を突き動かす。


ヨーコはすこし後から付いて来た。恥ずかしさで耳が熱くなったが、大統領に渡す時だけは立っていなきゃいけない。ヨーコに頼めない場合、それをどうするかが問題である。


車は少し前の道に置いてきてある。もちろん2人の帰り道用だ。念のため大きな葉っぱで車を隠しておいた。


建物は近いのに遠く見える幻影を振り払い、カタツムリのように何とか進んでいくテッド。


手紙を入れたポーチを背中の方に回して、汚れないようにする余裕はまだ残っていたらしい。




ここまで来ると、もう敵は近寄ってこないラインを超えた感じだ。それだけでも安心感が痛みを押さえてくれる。少し止まり銃をホルスターに収める。


這って動いたその後ろには血の道路が広がっている。だがそれも気づかず這いつくばった。


ホワイトハウスの囲いには花や葉っぱで覆われており、移動を少し辞め、花に見惚れていた。そしてテッドは何とか力を振り絞ってひとつ花を取り、再び這いつくばっていった。


「花って綺麗だよね…」


「まあ、そうね…」


心配しながらヨーコは囁いた。ヨーコとの出会いは最初は敵同士だったが、今は上手く説明できない絆で結ばれていた。そんな事を思う度にネコパンチの事を思い出し冷や汗が止まらなくなる。


ホワイトハウスのドア前に、門番が2人いた。


僕がドア前まで着くと、門番2人は急いで駆けつけ、


「AAA様!どうなされました⁉」


と慌てた様子で駆け付けた。門番はAAAランクの重要性を心の底から知っている同士である。


「悪いけど2人で僕を支えて、立たせてくれないか…?」


2人の門番は片方づつ、脇を支えながらゆっくりと郵便屋を立たせた。


「ありがとう…大統領の前で這いつくばっていくのは問題だからね」


そう言って何とかホワイトハウスの前まで、ふらつきながらドアをノックした。役人がドアを開け、AAAの証明書を一瞥し、郵便屋の血みどろな姿を見てすぐ、


「官邸内の医者を2人ほど連れてきます!」


役人は事の重大さに気づき、急いで消えていった。大統領室は向こうだったっけ。そう思うとゆっくりと歩み寄り、大統領室まで何とか手紙入りポーチと花を手に持ち、ゆるりと自力で歩きながら大統領の部屋まで歩いていった。立ち上がる手助けをした門番2人とヨーコは、万が1に備えすぐ後ろに付いてきた。


官邸内はキレイである。血で汚してる僕が心底情けなかった。


これでやっとポーチを渡す事ができる。その事だけが歩ける要因だった。




大統領室前だ。なんとか気合いでもって丸い鉄でできたノックをトントンと打つ。


「入りたまえ」


テッドは力不足でドアが開けない。慌てて門番2人によって開ける事ができた。


始めは逆光で見えなったが、ミジンスキー大統領が鎮座している。


大統領はAAAのボロボロな服や血にそまった体をながめ、称賛した。


「君ならできると思っていたよテッド君。君こそナンバー1のAAAだ。」


郵便屋に新人として入った頃やAAAになった回想や、これまでの道中を思うと思わず涙を流してしまった。


1番つらい旅だったと感無量な思いが、今になって走馬灯のように回りながら僕を放さないでいる。


「バイラ国ナバナ大統領からの手紙です。」


力を踏ん張って絞るような声でポーチを開けると、手紙が入っている。その手紙を血で染めないように慎重に開け、さっき拾った花を添えて大統領に渡した。


「この花はなにかね?」


「官邸の庭に咲いていたムラサキケマンという花です」


「見知らぬ花だな。花言葉なんてものはあるのかね?」


テッドは深呼吸しながら


『貴方の助けになる』


大統領は僅かに微笑みながら視線を手紙に移す。しばらく読んでから、ミジンスキー大統領は言った。


「同盟国でね。ハッカー集団をやっつける手はずが書かれた手紙だ。これは大変重要な手紙だ。これでインターネットと電話が復活するのだよ。素晴らしい。実に素晴らしい手紙だ。大変体を酷使した旅であったろう。それでもこれを私に渡してくれた事に賛辞を申したい。ありがとう。これは君にしか届けられない手紙だ」


テッドはただただ涙を流していた。今まで何度もAAAになった時、ICチップを入れられた悪夢に悩まされていたが、これで悪夢を断ち切れる。


テッドは込み上げる涙を隠そうとせずに、大統領に言った。


「大統領、僕がここに居られるのは道中で出会った1人の女性の助けがあったからなんです。ヨーコ、こちらへ」


彼女はえっ、とした表情で顔が真っ赤になったが、カチコチと大統領の前で固まった。


「ヨーコデス。コンニチワ」


「彼女は気象強行士なんですが、特別にポストマンランキングを付けていただけませんか…?」


大統領は物珍しそうに眺めながら、


「気象強行士には初めて会うね。助けてくれたのなら、喜んでポストマンの称号を与えよう。大統領命令により、ヨーコ君をポストマンAAに任命する。証明書は可及的すみやかに送付させよう」


「私が…ポストマンに…!」


ヨーコの涙はまた溢れ出し、やや顔を上げた。


ここに使命は達成された。危うく転びそうになりながらもドアに向かって帰ろうとしたその時、


「待ちなさい」


大統領がテッドを慌てて引き留める。


「はい?」


「返答の手紙を送ってほしい。当然ながら君にしか出来ない仕事だよ。もちろんホワイトハウスで充分療養してもらった後で構わない。官邸内には医者もいる。養生したまえ。ヨーコ君もポストマンの証明書を待ちながらホワイトハウスでゆったりして欲しい」


「あは…あはは。そうですよね…傷を治して頂けるなら勿論お引き受けします。ご返答は届けないといけませんよね」


「その通りだとも。すぐに医者に診てもらうから、たのむよ」


旅の片道切符だと思っていたが、往復券だった。しかしAAAである以上は困難を乗り越えなければいけない。


医者が駆け込む。テッドはドアの前で倒れてしまった。


心配する周りを見ながら郵便屋は言った。


「何なら手紙を渡しつつ、ハッキング集団をやっつけてきましょうか?」


そう言ってテッドは医者によって運ばれてゆく寸前、大統領の目が光った。


「本気でそう思ってるのかね?」


「え?え?は、はい…」


「実はここだけの話なのだが…」


ひっそりと大統領がささやく。テッドとヨーコは大統領の口に顔を近づける。


「ハッカー『オールプロ』は集団だと思っていたのだが、3人の天才ハッカーによって起こされたネットテロである事が手紙で判明している。勿論生存場所もだよ。手紙を届けながら、ハッカー3人を消してくれないか。一生暮らせるギャラを大統領の私が保障しよう」


「ほうあああ…」


すごく秘密裡な情報を聞いてしまったテッドとヨーコはお互いに顔を見合わせ魂が抜けるような声音をだしてしまう。


「療養さえしていただければ、2人でその件解決いたしましょう。それで…世界が救われるのなら…」


「テッド!本当にハッカーやっつけられるの⁉」


「見つかりさえすれば…このミニミサイルで脅して…コードを書き替えさせれば…」


「そんなに簡単に見つけられたら苦労はしないけど」


大統領が再び囁く。


「手紙に場所の詳細が書かれているのだ。だからこの手紙は極上なのだよ君達」


「とにかく…やりますからお医者さん…下さい…」


意識が薄れる中、達成感だけが心の奥底に潜んで離れなかった。


その後のテッドとヨーコが気になってる人はいるかい?


もちろん貴方が今、お急がしい身であることは重々承知しているよ。


それでも、どうしても届けたい物語があるんだ。


何たって世界を救っちゃう物語だからね。


よければ聞いていってくれても損はしないはず。



約1か月間、ホワイトハウスで数人の医者の手によって、テッドの体調はほぼ回復していた。


テッドのこめかみに付いているICチップも増強スキル以外の2つのチップを取り除くことにも成功していた。


これで堂々と敵の女性も倒せる。おそらく1番嬉しい出来事だったかもしれない。


銃の腕がなまらないように、ガンプレーも毎日欠かさなかった。銃は命であり力の源なのだ。AAAなら、なおさらの事である。




ヨーコはというと以前、鉛玉を食らった肩を医者の手によって再手術され、腕の違和感がなくなっていた。


「ありがとう」


ヨーコが笑顔を見せると、医師もマスク越しに笑顔を見せていたように見えた。




ヨーコ用の証明書付きのポストマン・ハットが届くと、早速被ってみる。いつも黒スーツなので、帽子も大統領の命令一言で、黒色の帽子にしてもらった事が嬉しくてたまらなかった。


「どう?似合うかな」


「いい感じだよ!」


実際被ると、落ち着かない感じというか、気恥ずかしい気持ちでいっぱいだったが、AAの証明書がくっついており、ヨーコが言った。


「道中で郵便をうけとったら、AAの仕事もしていいかな?」


テッドは笑顔で返す。


「もちろん!道中は今回来た道よりも長い旅になるんだ。そこで困っている人がいるのなら助けるのは当然だよ!」


またヨーコの耳が赤くなってゆく。


「大統領がお呼びです」


兵が伝達してくると、


「行こう!」


と2人で大統領室で急いだ。




2度ノックをし、大統領室へと入る2人。当然ながらそこには大統領が鎮座していた。


「だいぶ体調が戻ったようだね。実に喜ばしいことだ、うん」


「大統領のおかげです!ありがとうございます!」


「ございます!」


テッドとヨーコはいつもの90度お辞儀を欠かさなない。


大統領は椅子から立ち上がり、気持ちがぐっと引き締まる。


「では、大統領令を授ける。この手紙の返答をバイラ国セレンスキー大統領に必ず届けよ。しかし今回は特別、3人のハッカーを倒し、ジャミングを消し去る令を先に行ってほしい!そのために、1か月前に君が持ってきた手紙のコピーを私の権限で2人に渡す。以上だ!」


テッドは声をやや張り、


「了解いたしました!必ず成功して世界を救います!」


大統領はヨーコにも視線を移し、


「テッド君の成功はヨーコ君の肩にかかっているといっていい。どうか頼むぞ!」


「は、ひゃい!」


ヨーコは大事な場面で噛んでしまい、舞台俳優がセリフを忘れたかのような恥ずかしさを噛みしめる。


「はは、気負わず、しかし確実に頑張ってくれたまえ」


翌日の出発の日。兵士によって車用の電池、レーション、飲料水などを続々と車のバックに詰め込んでいく。


しかも新しい超防弾・ハイスピード仕様の軽車を新調してくれたのには2人で驚いた。


「行ってきます!」


門番の兵士に手を振りながら、ヨーコはアクセルをフルスロットルで走らせた。


しばらく走ると強盗団タイムである。早速現れた盗賊7人。テッドは銃を抜いたがヨーコは


「雷‼周囲の強盗団へ‼」というやいなや、轟音とともに盗賊がバタバタと倒れていく。


「ナイスヨーコ!」


ヨーコは気象強行士のレベルが既にトップクラスになっていた。標的に向けて雷を飛ばす事も可能になったのである。


いくつかの集団を雷鳴で倒し、ヨーコのパワーが無くなったらテッドが降りて、素早いガンプレーを見せつける。


もはやテッドとヨーコは最強のコンビとなっていた。もう何でもできるんじゃないか。テッドはそう思いながら車の窓を注視した。


かなり早いペースで以前通過したエンダー街に到着し、早速宿の予約を取る。物資はホワイトハウスで充分1杯になっている。


あくまで休息と作戦会議の為に宿を取った二人は交互に風呂に入り、ベッドで大統領から貰った手紙を広げる。


「ジャミング3人組がいるだろう?」


「そうね」


「奴らは得体の知れない場所に潜んでいると思うだろう?でも手紙によると、3人組の1人『ピップ』は、ここエンダー街にいるんだ」


「本当⁉」


「手紙によるとエンダー街の中のスラム街に居るらしい。街の人間は正直行かない場所だけど…あのヨーコ」


「何?」


「バスタオル姿なのはちょっと、その…パジャマに着替えてくれないかな?」


「わ、わかった」


ヨーコは耳を赤くしながらも向こうの部屋へ行き、急いで宿に常備されているパジャマ姿に着替えた。


「おまたせ」


ヨーコはそう言って再びベッドに帰ってきた。


「OK!それでだね、スラム街に行って探さなきゃいけないわけだけど、法令でこの帽子は絶対に被らなくちゃいけないんだ。」


「そうなの?じゃあ潜入捜査じゃなくて力づくで?」


「そうなるね。スラム街住人全員に雷を当ててくれないかな。あとはピップを手紙の似顔絵と比べて確かめていくしかない…へっくち‼」


「貴方もパジャマ着た方がいいんじゃないの?」


「そうみたいだね…ごめんごめん」


「スラム街に何人人がいるのかしら…それ次第で使うパワーも違ってくるから」


パジャマ姿になったテッドは手紙入りポーチと銃をパジャマ姿で持っている姿を見て、ヨーコは思わず吹き出して笑ってしまう。


「何か変なとこ、あるかな?」


「いえいえ…正装でしょ」


「スラム街の住人を倒し逃した場合は、僕が全員銃で倒してゆくから」


「じゃあ明日ね」


そう言ってヨーコは自分のベッドに転がると直ぐに寝息を立てる。運転してるだけでも疲れているのだろう。


テッドはいつもの所作、ポーチを枕の下に置き、銃を片手で持ちながら眠りについた。




夜明けに確かな異音がして、銃を力強く握る。意識はあるが目は閉じたままにしておく。音がいよいよ近くに来た時、テッドは上半身を素早く起こして銃を向けた。


「ひゃあ‼」


宿の婦人が腰砕けになる。宿の管理人だった。安堵すると銃を下げる。


「ごめんなさい、敵かと…」


「ちょ、朝食の準備をお伝えに…うう」


婦人は腰をいわせてしまったらしく、申し訳なく婦人に手を出し、立たせた。


「何…朝?」


「うん。今日は騒ぐから、しっかり朝食とろう」


「ネコパンチと同じ事いうのね」


短い沈黙が立ち込めたが、ヨーコは微笑しながら、


「もういいのよ。お墓だって作ったんだし」


「そっか!じゃあ飯、食べよう!」


目玉焼きを乗せたパンをほおばりながら、テッドは言った。


「良い点は、いままでこの道中1度も被弾してないことなんだ。この調子で今日も行こうと願ってるよ」


「痛いのはもう御免だわ。パワーは最大値だから平気よ!」


そういうと2人はしばし無言で朝食を摂った。




テッドとヨーコはスラム街の入り口に立っていた。


大きなゴミや紙袋を風が浮かせ宙を舞っていた。


「なるべくスラムの中心まで行こう。一人でも多くの住民に雷を撃たせたいからね」


「了解」


そう言うと2人はスラム街へと歩を進める。


ドラム缶に火を焚き、暖を取っている数人がこちらをジロジロ見ているが、あえてスルーし歩いてゆく。


窓やドアからも住人の視線をひしひしと感じる。ヨーコは少し背中が寒くなっていたが、恐れを見せてはいけない。そう思いテッドに付いてゆく。


10分ほど歩くと、濁った水が噴出している噴水があった。ここが中心地だろう。


「ヨーコ、雷を頼む」


テッドが言った瞬間、ドアから男がAK47を手に持って走ってきた。撃たせる前にテッドのマグナム157が火を吹き男は噴水に半身埋めて倒れる。


早い。パワーマックスのAAAがここまでガンプレイが素早いものなのか。ヨーコは汗をハンカチで軽く抑え、すぐしまった。


「ヨーコ、早く!」


ヨーコは両手を天に向け、


「雷!スラム街の住人へ‼」


そう言うとヨーコの体が黄色のオーラで満たされ始めた。レベルマックスの象徴であるオーラ。


今まで聞いた事のない轟音が何秒も鳴り始めた。周辺の住人に雷が当たったのだが、パワーをかなり分散させたので、気絶程度のダメージしかないだろう。


「ここはA棟とB棟がある。2手に分かれてハッカーを探そう!」


「わかった!」


分かれた2人は銃を手に持ち、片っ端からドアを開け住人を探す。とにかくゴミが散乱して上手く動けない。それでも必死に順番に探してゆく。


ヨーコも銃を手に1つ1つ部屋を見て回る。部屋の中ゴミだらけの部屋があり、


「ここも入るわけ?うわぁ」


ゴミを掻き分け進むが、子供が気絶しているだけだった。


どれだけ部屋に侵入しただろう。ゴミの匂いと何かの腐臭が漂って気が変になりそうだ。


そう思っていると、倒れていた男がうなりながら起き始めた。まずい。気絶から覚めてしまっている。


と、向こうのA棟から銃声が数発聞こえた。何らかのトラブルだろうか。テッドが手すりを掴んで、


「ヨーコ!こっちにきてくれ!なるだけ早く!」


聞いたヨーコは素早くA棟へと走り向かう。すでに何人かは起き上がり始めている。




「ピップだ。間違いない」


先ほどの銃声はピップを倒す銃弾だったのか。手紙を死体の横に起き、確かに確認すると、


「見てくれ、このPCの数」


ジャンク品でつくられたPCやサーバーが狭い部屋に詰まっている。


「それで、ジャミング解除の方法はあるの?」


「ジャミング解除法もこの手紙に書いてあるから、この手紙は紙、いや神なんだ」


テッドがジャミング解除を試みている。ヨーコはそれを見ていたが、後ろに気配を感じ、銃を持った男に向けてオート銃を数発食らわせる。


ガンパウダーの匂いを感じながらテッドは作業を真剣に進めていた。ヨーコは護衛側にまわる。


「早く早く早くしろ、このっ」


するとサーバーがダウンし、PCの電源も煙を上げながら落ちた。


「よし!」


どうやらジャミング解除に成功したようだ。


「車に帰ろう!」


2人は狭い階段を駆け抜け、スラム街を駆け抜けた。銃弾がそこかしこからやってくるが、プロ2人には到底当てるのは無理というものだ。


止めていた車に乗り込んだ2人は窓越しに銃を撃ちながら逃げ切り、達成感をやっと得たように嘆息したのであった。



「やったわね!」


「やったね!」


2人は車内でハイタッチした。


「やっぱり僕らは息が合う。ネコパンチには劣るかもしれないけどね」


「もうその話はいいから!」


ヨーコはようやっと吸えるといった体でタバコを吸いながら、


「残る2人のハッカーはどこ?」


「ふふ…どこだと思う?」


「焦らすの禁止!」


「何と、メガロポリスでパン屋を堂々と営んでいる女性だって言うんだからたまらない」


「女なの?何それどういう事?」


「何と言われても、そのまんまだよ」


「なるほど、完全に住民として溶け込んでるわけね」


「そういう事だろうね。メガロポリスまではちょっとかかるけど、宿をとりながらゆっくりいこう。確実に勝てる自信がある」


「出だしは好調よね」


そんな会話をしながら2人は早々にエンダー街を離れ、次の街へと車を走らせた。


タバコを欠かさないヨーコに、思わずテッドが突っ込みを入れる。


「ネコパンチはタバコの煙に何か言わなかった?」


ヨーコは窓を少し下げながら、


「しょっちゅう言われてたわよ。無視してけど」


「う、うんなるほどね…」


道中何度も盗賊団やハイエナが現れたりもしたが、そうは言っても2人の相性は群を抜いた相性で、メガロポリスに到着するまで全くの無傷でいたのだった。




数日後、メガロポリスに到着した2人だったが、さすがに運転疲れなヨーコは宿に置いて、テッド一人でターゲットに近づいた。




パン屋は目立つ中心街の1角にあり、外からガラス越しを見る限りとても繁盛してるように思えた。


なるべく客がいない隙を狙ってテッドは店内に入る。カランカランと綺麗なベルが鳴った。


「いらっしゃいませ」


綺麗なゴスロリのような制服で優しく出迎えてくれた。


パンを取る器具とトレーを無視し、テッドはとあるパンをわし掴みにして女性に見せた。


「お客様…?」


明らかに戸惑いの表情を見せた女性に、笑顔で答えた。


「僕はジャムパンを消しにきた。ジャム(ジャミング)をね」


女性は手を後ろに隠したが、


「後ろに銃持ってるでしょ。分かってるよ全部」


女性が銃を向ける直前、テッドのマグナム157が炸裂し、ヘッドショットで女性を倒す。


「ヘッドショットは『愛』だよ。もがき苦しめる事のないようにね」


そう言って店の奥へとズカズカ入っていく。しばらくすると煙が店内にまで充満し、テッドが戻ってきた。


AAAはジャムパンをかじりながらパン屋を出た。


「パンの味はなかなか上手いけど、世界を舐めてる奴は女性でも、もう容赦はしないよ」


呟きながらヨーコのいる宿へ向かった。




宿の部屋に戻る音を聞いて、ヨーコは目を覚ます。


「どこにいってたの?」


テッドは誇らしげに言った、


「2人目のハッカーをやっつけてきたのさ。僕一人でね」


「えッ…」


「僕はAAAになった時に、女性を殺せない『ICチップ』をこめかみに埋められたんだ。でもホワイトハウスで除去したから、女性が敵でも躊躇なく殺れるってわけ」


「そう…」


「んん?元気が無いねどうしたの」


「ねぇテッド」


「んん?」


ヨーコは耳たぶがもう真っ赤になっていた。何のことやら分からないでいると


「男女の友情って…あると思う?」


「もちろん!今の僕らがまさしくそうじゃないか!」


テッドが被せるように言ってくる様子を見て、ヨーコはため息をついた。でも吹っ切れた様子で、


「そうよね!あるわよね‼」


「ああ!最高の相棒さ!これまでの道中、無傷だよ?なんて素敵な昼下がり!AAAは本来こんな感じで手紙を運ぶんだと思ったよ。ヨーコも配達したいなら手伝うよ」


ヨーコはテッドの優しさに包まれながら、幸せを嚙みしめていた。それがたとえ相棒という名の友情だとしても。




---




後の展開はおわかりでしょう?


もはや無敵の2人のポストマンは3人目のハッカーを退治し、世界を変えるんだ。


ポーチに入った手紙も無事に届けながらね。


一生暮らせるお金はもらったけど、2人はポストマンの帽子を被り続けた。


インターネットと電話が使えるようになった事を知らせる伝道師として、街中動き回ったんだ。



郵便屋の制度が根幹的には崩れ去るだろうけど、困っている人がいるかぎり、ポストマンはいつだって走り続ける‼




――――postman AAA外伝 クランク・ロドリゲス―――――



ポストマンAAAは世界に数人しか居ない。しかし動き回ってるのはテッドだけではなかった。

俺、フランクもまたAAA数人の内の1人だ。正式名称はフランク・ロドリゲス

AAAになった手順と経緯はテッドとほぼ同じだ。だが違うものがあるとすれば、AAAの訓練中もその後も、理性を保っていた点だ。

1年後輩のテッドは死んだような目をしていたそうだが、俺の眼は明るく澄み切っていた。ガンプレイも俺の方がわずかに早いはずだ。


そう、今眺めてる澄み切った空のように。

今は車を止めて小休止していた。持っていたタバコに火を付ける。毎日命がけの日々の中で、味方はこのタバコをくゆらす時間だけだった。

2本目にいこうかという時に道の両端の小さな茂みが動きだしたのを俺は見逃さなかった。

多分オークかゴブリン、コヨーテあたりだろう。

ガンホルスターから愛銃FNファイブセブンを2丁取り出す。マガジンキャパシティが20発という数少ない銃の1つだ。その分ジャム(弾詰まり)も多かったが、毎日手入れしてるのでその心配はほぼなかった。

両側の茂みから現れたのはゴブリン達だ。

車を挟んで両側から飛び込んできたゴブリンに、両手で同時に発射し、ゴブリン2体が即死する。

俺は車から飛び出し、跳ねて飛び込んでくるゴブリンに2丁拳銃で対応した。

後ろから来たちょっとは頭がありそうなゴブリンにも、両手で2発ヘッドショットする。

辺りは再び静かになる。あいつらはそもそも手紙目的ではないから腹が立つ。弾の無駄遣いと言ってもよかった。

車に再び乗り込んだ俺は、2本目のタバコを堪能してから、ゆっくりまた走り出した。


AAAは大統領宛ての手紙を授かっている。テッドも間違いなくそうだろう。その内容が例え稚拙な内容だったとしても、大統領の手紙は命がけで運ばなければいけない。そして目的の為なら手段は問わないという文言が効くのも、AAAの強みだった。だが俺は当然人間であるわけだから、情にほだされる時もある。その点テッドはホローポイント弾を使ってるというから驚きだ。

コメカミに入れられたICチップも位置特定機能の他に判明してる事はなかった。まあ今は位置特定なんでできやしないので意味ないのだが。


そうこうしてる内に日が落ちかけている。目的中継地点であるホワイトバレーまであと少し…だと思う。方向音痴なのが実に痛い弱点でもあった。


ここまでで、ゴブリン以外の敵は見当たらなかった。逆に嫌な予感がしたが、街の門が現れたおかげで、最低でも方向は間違えてなかったという事がわかり安堵する。


門番が2人、門に立っていたが松明を照らすと、AAAマークを見つけたところで

「ご苦労様です‼」

と元気に通してくれた。

弾丸やレーション(戦闘用食料)はまだ車の後ろにたっぷり積み込んである。重要な問題はタバコが切れかけている所にあった。

大き目の宿屋に行けば売っているだろうと思い、宿屋へ急発進した。


「ここでいいか…」

俺は規模が中くらいの宿を見つけ、車を奥に隠し、宿の入り口へと入っていった。

「泊まりたいんだが、タバコ売ってる?」

宿の主人が震えながら静かにささやいた。

「事情があって…街全体でタバコが売れないんです…」

興味を持って掘り下げてみる。

「それは困るな。事情ってのは?」

「それは…小さい規模なんですがマリファナ売人がいまして、代わりにこれを売れと…」

そういって紙巻された大麻がケースに入れられていたブツを俺に差し出してきた」

「別に大麻売ってようと俺は知らんが、タバコまで規制するのはいただけねぇな。」

俺は話を続けた。

「俺がそのカルテルをぶっ潰したらタバコが買えるようになるのか?」

「そりゃもちろんですとも。」

「やっつけてやるからタバコを1箱だけよこせ」

主人は奥の方に行き、タバコを1箱持ってきた。

「ようし、寝る前にいっちょやるか‼」


宿の主人からもらった地図を元に、バッテンのついた位置を目指しているのだが、方向音痴のせいで到着が2時間も遅くなってしまった。到着すると2丁拳銃を持ち、何件かある平屋の1つのドアを叩き開ける。

ちょうど大麻制作中の男が2人いたので両手で2発同時撃ちでヘッドショットする。奥にはいるが人影がいない。

と、思ったがトイレに隠れていた男がAK47を持って弾をばら撒き始めたのでねころがり、男に弾を同時に2発叩き込む。

「まだ、制作場所があるだろうな」

俺はもう一軒の平屋のドアを叩き開ける。

中にはお金を勘定してる男が1人だけいた。

「お前か?胴元は」

何も言わないのでやれやれと1発放ち、金の束をポケットに入れた。

「もうバカな真似はしねぇだろう。小さい組織だしな」

そう思っていると向こうから少年2人がやはりAK47を持って撃ち始めた。

運悪く帽子に当たったが、頭からはずれているようだ。

俺は寝転がりながら少年の足を狙って撃ち、2人に命中。再び静かになった。

向かいの人間が電話を持って何やら喋っている。多分警察でも呼んだのだろう。

おおごとにならないうちに、俺は車に乗り、宿屋へと猛スピードで走り抜けた。


「親父!カルテルぶっ壊してきたぞ!」

「もうですか…!さすがAAAさんは格が違う。」

「堂々とタバコ売れるからな。とりあえずこっちにタバコカートン3つくれ、あと宿賃」

数枚の札をカウンターに投げると、主人は3カートン持ってきてくれた。

「ありがとよ」

「2階の一番端になります」

俺は目的も達成できて、あとはシャワーでも浴びて寝るだけだった。腹はそれほど減ってなかった。

シャワーを浴びた俺は無精ひげも気にせずパジャマに着替え、いつものようにAAAは手紙の入ったポーチを枕下に隠し、銃を片手に握りながら、即、眠りについた。


そして朝───────────


空腹で朝に起きた。ポーチを持ってパジャマ姿のまま、1階に降りると、

「モーニングがございます」

と主人の言葉を聞いて、

「ありがてえ」

と思わずこぼしてしまった。

マーガリンをたっぷり塗ったパン数枚をレンジで2分ほどチンすると、グジュリとしたパンが出来上がる。これが俺の大好物な食べ物だ。

果物もたくさんあったのでたっぷり食べておく。道中はレーションだけになるから、モーニングは実に豪華な食事だ。

「いかがですかお食事の方は」

主人が訪ねて来る。

「問題なく堪能してるよ」

「そうですか」


部屋に戻り制服に着替えた時、昨日の少年にAK47で撃たれた帽子に穴が開いていた。どうやら貫通したみたいだ。誰か縫ってくれないだろうか。

火のついてないタバコをくわえながら、主人に軽く礼を言って、奥に止めてある車に乗り込んだ。次の中継地点の街までは結構な長旅になるだろう。

車のエンジンをかける前に、タバコに火を付けしばし吸った。

そして無言のまま地図を見た。方向音痴な俺は無事到着できるだろうか。街名はエンダー。道中が変にクネクネしていて、敵が現れる確率もダンチだ。

考えていても仕方がないので、やっとエンジンを吹かし、車をエンダーの方向に向け走りだした。


しばらく走っていると、前方に何やら不気味な集団を見つける。紙袋を被った集団が道の端を歩いている光景を目の当たりにして、畏怖感がマックスに引き上げられた。

武器は持ってはいるが、こちらに攻撃してくるわけでもない。ただ行脚している紙袋を被った集団──────


ちょっと怖い俺は普通にドライブし、立ち去るのを待つのみだ。ややあって紙袋集団は通りすぎていった。

ほっとしたのもつかの間、雑魚盗賊団がヒャッハーしてきやがった。また弾の無駄遣いをさせる気か。ドアから出た俺は2丁拳銃でドカドカッと倒してい行く。リコイル(はんどう)が気持ちいい。数名は逃げ帰ったのでもう俺の相手はしないだろう。胸糞悪くなるから雑魚は雑魚なりに格下を相手にしていろ。

俺は弾倉を両側はずして、新しい弾倉を2丁入れ、後ろに引っ張って装填する。ホルスターに銃を収め、再び走りだした。


30分ほど走行していると、片側には草原が広がり、大繁殖中のウサギが散乱している。

サバイバル的にいってウサギは御馳走だ。車を降りて、ウサギに照準を合わせドカドカと銃を撃ち始める。結局2匹しか取れなかった。2匹を助手席に入れ、また車を走らせる。またしばらくすると、テントのあるスペースを見つけ、サーモグラフィー双眼鏡で覗いてみる。生命はいないようだ。ちょうどいい、今日はここで野宿しよう。車を止め、葉っぱで隠す。ウサギは皮を剝ぎ取り、内臓を全て取ってから焚火でじっくり焼いていく。レーションも豊富だし、これといった文句はない。

タバコを吸いながら、ウサギが焼きあがるまでしばし待つ。焼きあがったウサギの肉はくどい味ではあるが美味だ。レーションをかじりながら、ウサギの肉を食べて充分腹いっぱいになった。テントの中を開けてみると、乾いた砂状の地面があるだけで死体などは一切なかったので、ここでひと眠りしようと思った。ちょっと狭いけど、眠るスペースとしては充分である。焚き木の火を消し、テントで早朝まで眠りについた。


早朝──────


テントの中にしてはよく眠れた方だ。今日も快晴だろう。実に気持の良い朝だ。改めて地図を見返すと、まだまだ距離がある事がわかり舌打ちする。

とにかく起きたら長居は無用だ。葉っぱで隠しておいた車に乗り込むと、ポーチを確認し、スピードを上げて再び歩を進める。

道が広くなり視野の効く光景になってから1、2時間ほどだろうか。向こうに1人、ポツリとした光景が目に入ってくる。誰なんだろうか。


俺は車を止めて、向こう側にいる人物に喋り始めた。

「おーい!じゃまだからそこ、どけてくんない?」

和装をした格好に刀、足にジェットエンジン的なものが備えてある。

「お主こそ我が獲物…まいる!」

そう言うと足のジェットエンジンで、瞬間的に目の前まで来て刀を振りかざした!

寸でのところで刀をかわし、2丁拳銃を持った。

「…早い!」

俺は狙いを定めドカドカ撃つが、瞬間移動のせいで全く当たらない。

「覚悟っ!」

侍のようなヤツのトリッキープレイで長い刀を横一閃に浴びせてくる。

避けたつもりが横側に攻撃をかすかに浅い傷を負ってしまう。

密着状態の2人だったが、腹に1発モロに侍に当てることがきると、一転うずくまう。

チャンスを逃さず頭と心臓に一発あてて、侍との勝負ありと確信する。

が、横に食らったダメージが思いのほか痛み出してきて、くそっと思わず俺は吐いてしまう。

手練れの手紙強盗だったが、なんとか勝利はできた。そのまま車にヨロヨロと戻り、アクセルを吹かすと、侍がいた道路を通っていった。


エンダー街はまだまだ距離があり、負った傷を直すには街にいくしかないわけで、スピードを上げて先へと続いた。とにかく今はそうするしかなかったのである。車用電池はあるがギリギリまでしかなかった。そう思って傷に耐えながら入ってくると、蝙蝠の集団が俺の軽車にぶつかってくる。嫌な気分しかしなかった。

想定の範囲内でドラキュラが浮遊してきた。もうすっかり夜なのである。ドアから降りた俺はドアを盾替わりに2丁拳銃でドカドカやっていたが、自由に浮遊していて全くこちらの攻撃がハマらない。なるだけ惹き付けて、杭を打とう。といっても杭がない。地面から適当な杭をひっそり探して準備する

「手紙をよこす気になったかね?」

ドラキュラは得意気に俺に近づいてきた所を狙って心臓に杭を突き立て、2丁拳銃でガシガシ敵の体に鉛玉を入れている。ドラキュラは絶命し蝙蝠と共に消え去った。

(やばい…この道は手練れが多いぞ…)

「気づいた俺は車を超スピードで駆け抜けた。そうすれば朝には街に着くだろう。強盗団さえ来なければ、の話である」


幸い侍やドラキュラ級のような格上の強盗は出る事は無かったが、横一閃の傷がまだ痛むので、先に医者をみつけるのが最優先だった。いざとなれば闇医師でもいい。

自分にしては早めに病院についた。


「傷跡は残りますぞ」

医師は全体麻酔をほどこしてから、糸で傷を縫っていった。

こんな所でつまずいている様じゃ先へは到底進めない。もっと…もっと強くならないと。

その日は病院で療養次いでに泊る事にした。病院飯な夕食も朝食もおいしくてびっくりする俺なのであった。


糸を取るまで病院から抜け出し、活気あふれる街の中心部に来ていた。パンの匂いがするので、パンを買おうかどうか悩んでいたその時である。

「フランクさんじゃありませんか!」

後ろから呼ばれた俺はガンホルダーに手をかけながら、振り返る。

「もしかして…テッドか?」

「そうですよ、奇跡ですねAAA同士が会うなんて」

目立たないよう、わざと暗い湿ったカフェの隅のテーブルに2人は着席した。

「お前はどんな感じの手紙を運んでるんだ?」

「何でも世界の命運を左右する手紙と言ってました」

フランクが頷く。

「俺の手紙は確かに大統領のものだが、テッドの手紙を先に渡してから効果を発揮する手紙だそうだ。だから俺より早く辿り着いてくれよ、テッド」

「なんかもう色んな人に追いかけられてまして…」

「はは、AAAはそんなもんだ。」


俺らはしばらくカフェで談笑していた。AAA同士が出会うなんてめったに起きない。


「じゃあお互い目的地まで頑張りましょう!」

「お互いにな!」


握手を交わすと俺はタバコに火をつけて、わざと安全対策としてお互い反対の道を進み、街中に消え行く。

それから車用電池とレーションを買った俺は、その重さに耐えて病院へと戻った。


「医師、もう糸を外してくれ」

医者は慌てて言った

「まだ1日しか経ってませんよ?」

そうだ、思い出した。ICチップの中には治癒を早めるものが一つ、入っていると。

「いや、早く糸を切ってくれ」

「じゃあお願いしますからあと1日だけ居てください。これはあなた自身の問題なんですよ」

深いため息をついた俺は、

「1日だけだぞ?」

そう言っていつものベッドに飛び乗る。

拳銃のトリガーを改良したり、油を差したりしてヒマを潰していた。

さすがの俺もこの無駄な時間に付き合っていられない。

医師を呼んで糸を取るよう命ずる。

俺は2丁拳銃をつきつけると、医師はゆっくり糸を切り始めた。

「すごい…もう皮膚がくっついてるなんて」

糸を外し終えると、数枚札を置き、

「じゃあな。あとチンコロ(通報)するなよ?」

俺は吐き捨てるように言ってドアを出る。タバコを吸いながら、エンジンが温まるのを待つ。

そして次の中継地点の街まで急ぐのだった。


「テッドも無事街を出られただろうか…」


運転中もそんな事ばかり考えていた。


しばし休憩とばかりに、片隅に車を止め、タバコを吸いながらレーションをかじっていた。

コーヒーがたまらなく欲しかった。タバコとコーヒーは相性が抜群に良い。

2本目にいこうかどうか悩んでいると、100メール先の草むらから、コヨーテの群れがやってきた。

これ以上無駄な弾を使いたくないので、エンジンをかけ急スピードでその場を後にする。1、2匹ほど車で引いたらしく、車はガタゴトと揺れた。


夜もお構いなしに荒野を走っていった。同じような風景が並び、しかも車のビーム以外、真っ暗だ。退屈なドライブだったが、1日でも早く辿り着きたい。


考えたら、誰か相棒と一緒に行動したいと急に思い立つ。AAランクのを一人見つけて、今度は街中で声をかけてみる事にした。

タバコを吸いながら暗い道を進んで行く。タバコはすでに1カートン消費している。タバコが切れると本領発揮できないのが俺の弱点だ。

早く街の中でたっぷり寝てから相棒を探したい。美味い肉料理でも食べたかった。

と、いきなり道の真ん中に子供がいるのを発見し、急ブレーキをかける。車から降りて近づいてみると、少女だった。

「どうした?」

「ママがいじめるの。怖くてここにいたの。」

少女は泣き始めた。家は夜でも分かるあの屋敷だ。

「よし、俺が付いていくから屋敷に戻ろう」

俺は少女を連れて屋敷のドアを叩き、2人は屋敷へと消えていった。


「こいつの母親はどこだ?」

2階からバタバタと母親が降りてきた。

「まぁなんてことでしょ。ポストマンさん少女の投函、ありがとうございます」

「お前か、子供を虐待したのは」

「まさか。食事中のマナーが悪いので注意しただけなんですのよ」

「そうか…じゃあ俺はこれで」

母親が俺を引きとめる。

「せっかくですからポストマンさんも中でお食事でもいかがです?」

正直腹の減っていた俺は快諾し、制服のままでいいならという条件付きで飯を御馳走になっていた。

ステーキが出てきたので驚いた。何年ぶりだろう。もちろんステーキをがっつき始める。

そこへ母親がやってきた。

「どうですもう夜更けですし、1泊お泊りになられては?」

「いやもう充分お世話になりましたし」

母親は食い下がりながら

「1泊だけでいいんですのよ。恩人なんですから」

そうか。と思うと札束から数枚渡した。

「借りを作りたくねぇから渡しとく」

そう言って俺は帽子だけ取った制服姿のまま、ポーチを枕に挟み、銃を片手に眠りに入った。

早朝直前である。物音がして、ぼんやりと意識が戻ると、ポーチに手をかけた少女がいた。

当然ポーチを奪い取ると

「やられた…‼」

そういう魂胆だったのか。俺は帽子を素早く被ると、すぐに屋敷から出ようとした。出入口のドアが開かない。

そこへ母親が向こうからやって来た。

「AAAさん、もう諦めなさいあなたはもう…」

言い終える前に俺のFNファイブセブンが火を吹いた。女から鍵を奪い取ると、屋敷のドアが開き、早々に屋敷を後にした。

運転しながらタバコに火を付ける。腹が減っていたために起こった事件。旅人は一宿一飯には弱い事を見通していた。

屋敷から遠ざかると、料理が美味かったから、まあいいかぐらいの考えに落ち着いた。

街までもう『ひとふんばり』だ。これ以上盗賊団に会わないよう祈りながら俺は走り続ける。次の中継地点の街はホーネットだ。車の電池がすでにヤバい。

頼むから電池切れなんて起こさないでくれよ。そう願っていると崖から巨大な生物が落ちてきた。落ちてきた場所からほこりまみれになる。

「一体なんだ⁉」

ほこりが段々と消え、頭が3頭ある謎の生き物に出くわした。つくづく運が悪い。俺は後部座席からRPGを掴み、真ん中の頭めがけてミサイルをぶち当てた。

そうすると真ん中にいたヤツの頭が完全にこうべを垂れた。でかい割には弱いんだなと気づき、車を出てボンネットに上がり、相手の頭めがけて2丁拳銃でドカドカとヒットさせると、もう1頭の頭もぶら下がった。激高したのか、残りの1頭は頭を揺らしながら車に長い首でぶつかり、車がへこんでしまう。

「こいつ‼」

俺は残りの1頭に鉛玉をたっぷりブチこむと、最後の頭もしなってしまい、この生き物は死んだのだった。

こいつ、車をへこませやがった!片方のドアは開かなくなった。しかし反対側のドアからは車内に入ることができたので安心だ。

車を直して、車用電気買って、か。


エンダーからホーネットの街まで。道中長かったが、やっとホーネットに着いた。見ると、門が崩れており、大勢の兵士が修復作業にとりかかっていた。

近くまで行って、兵士に訊ねる。

「3頭もあるモンスターが、門を突破しようとぶつかってきたんですよ!」

「俺んとこにも現れたけど、倒してやったぜ」

「本当ですか!ありがとうございます‼」

そういうと兵士は、車1台通れる道を作ってくれた。

もうヘトヘトだったので、夜ということもあり、宿を探して辿り着いた。

「お部屋とモーニングございますよ。前金いただきます」

俺は大麻野郎から取った数枚の札束を力なく渡し、部屋へと入ってからAAAの儀式を済ませて眠りについた。


あまりにも疲れていたのか、昼前に目を覚ました。制服のままで寝てしまったので、生地がよれている。

俺は階段を下がり、

「親父!モーニングはあるのか?」

「もうすぐ終わりですがご要望であれば延長いたします」

「頼む」

俺は制服姿でモーニングでたらふく食べた。得に果物が実にありがたい。満足した俺は主人に礼を行って向かうべき所まで車を進めた。


車屋に辿り着いたのはいつ頃だっただろうか。タバコ10本は消費しているだろう。

「兄さん、これは新車を買った方がマシですぜ?」

店長は続けた。

「これは商売の為じゃなくて、本当にこれを修復するぐらいなら、新車買った方がいいという訳でさぁ。防弾用の軽車があるんで」

俺は訊ねる。

「防弾用?」

「今はどこでも防弾用じゃないと売れない時勢でさぁ」

「ガラズも黒か。分かった買おう。タイヤもスタッドレスにしてくれ」

「まいど!車電池もたっぷりサービスでさぁ」

レーションやタバコなども買い込む。大麻会計係から奪った札束だが、うしろめたさはこれっポッチもない。欲しい物は何でもこの札束が役に立つ。

この街にはギルドが存在し、要はパーティーマッチングする場所だ。

俺は相棒を見つける為にここに足を運んだ訳だ。

さすがにAAのポストマンははなから期待してなかった。何か抜きんでた物を持ってるタフガイを求めていた。

ギルド内は大きなホールがあり、受付があり、想像と違って広かった。早速受付に訊ねてみる。

「ポストマンなんて登録してないよな?」

「少々お待ち下さい。」

ネットが使えないPCを使って登録者を検索する。

「お1人おりますね」

「本当か⁉そいつは今どこにいる?」

「かなり最近登録されてますので、まだこの街にいると思われます。」

「どこを探せばいいやら…」


とにかく、そいつを見つけて相棒になってもらいたい。希望はAAランクなんだが、この際Aランクでもいい。ポストマンは厳しい訓練を突破した証なので、一番気の合う相棒になる。

受付で途方にくれていると、声を掛けられる。

「AAAさんですか!」

「お前、誰だ?ん…AAだと⁉」

「ポストマンのフィリップです。」

「お前に頼みたい事がある!」

そう言うとひざまづいた。

「俺の道中の相棒になってくれないか。1人と2人では特に戦果の中では全然違ってくる。着いてきたら金も充分やるから!」

「僕もそういうの憧れてたんで嬉しいっすよ。しかもAAAランクなら…」

「OKとみていいか?」

「宜しくお願いします!」

こうして強力な助っ人を得た俺は最終地点の城まで、一気に行ける自信が溢れ出てきた。みなぎってきた!

「一緒に儲けようぜ相棒」

俺は続けた。

「銃はどんなの使っている?」

「ワルサーP99っす」

「1弾倉につき16発しか出ないじゃないか。弾数が足りない武器屋へ行こう」

武器屋をめざして2人縦に並んで武器屋2人。

「今俺が使ってるFNファイブセブンを2丁買ってやる。マガジンキャパシティは20発、さらに30連マガジンを付ける事もできる」

「いいっすね?」

「それだけ激しい戦闘になってくるがお前がいると、とてもありがたいぜ」


2人道中になったので、レーションや弾丸、タバコなどを買い込んで、一旦宿に戻る2人。

フィリップは風呂に浸かっている。俺はタバコを吸いながら地図を眺める。ホーネットまでは最低でも7日かかる事を思い憔悴気味にため息をもらす。

「フランクさんは風呂入らないんすか?」

「明日の朝風呂に入る。その方がヒゲをうまく剃れる」

「そうっすか」

地図を見たフィリップは俺に言った。

「次はどこを目指すんっすか?」

「ホーネットだ」

「結構距離ありますね。でもAAAさんがいれば問題ないでしょうね」

そう言うとシャツ姿に着替えた。

「いや~ワクワクしてきたなぁ」

そう言ったかと思えば、すでに寝息を立てている。

AAも相当つらい訓練を突破してきた猛者である。新しい銃も難なく使えるだろう。

フィリップは何か思いついたように目を覚ました。

「フランクさん、そう言えばAAA試験あったじゃないですか」

「あるな」

「自分、生き残ったんすよ。でも気が付くと誰もいなくなってたんで悲しかったっす」

「それは過失だ。郵便屋のトップに手紙を書いとけ、AAAに昇進される可能性が高い」

フィリップは思ってる以上に強そうなのが伝わってきた。

2、3本タバコを吸うと俺にも睡魔が来て、暗闇になる。


目覚めたのは8時頃だった。持っていた銃をホルスターに戻す。

モーニングを食べようと2階から1階へフラフラいくと、フィリップがすでにモーニングを食べていた。

肉を大量の皿に乗せてモリモリ食べている。

「よく朝っぱらから肉食えるな」

呆れながら言う。

「美味いっすよ肉!やっぱ元気の元は肉っすよ肉!」

「そうかいそうかい…俺は果物と『ぐちゅぐちゅトースト』だな」

「何すかそれ」

「教えてもしょーもないからパス。それより早く制服着て来い」


道中の2人になると、大抵こんな感じである。俺はフルーツだけ取ってから再び2階に戻り、制服に着替えた。

「よし行くか!」

2人は防弾用軽車に乗り込んで次の街目指してエンジンを吹かした。

タバコを手放さない俺に対し、

「窓あけますよ!」

といって相棒は副流煙対策を始めた。

「すまん、これだけは許してくれ」

俺はそういう他無かった。

相棒はつまらない荒野の風景を眠そうな顔で眺めていた。

「お前は絶体絶命の目に遭遇した経験はあるか?」

「AAっすからねぇ。格下の盗賊団か狂暴化した動物っすかねぇ」

言った先から前後より盗賊団が現れた。車を止める。

「俺は前の敵を片付けるから、後ろを頼む」

「イエッサー!」

車を開け、勢いよくフィリップは2丁拳銃でドカドカと次々倒してゆく。

やはりこいつ、やるな。

俺も車のドアを開け、ドア越しにドカドカと鉛玉をはじいて前方の敵を全滅させた。

「そっちはどうだ⁉」

フィリップは銃を回しながら、

「かたはついてますよ」

銃をホルスターに収める。

「よし、また車に乗ろう」

1台の軽車が再び動き出した。俺はフィリップの有能さにニヤリとした。ポストマン以外だとこうまではいけない。

「いいか、あんな奴雑魚中の雑魚だぞ。他にも強敵がいるからな。街中でも気を付けろよ」

「アイサー」

そう応えると、フィリップは銃の弾倉に使用した分の弾込めをした。


そうは言っても2時間退屈な荒野を走るのは、2人にとって地獄かもしれない。フィリップはすでに眠りに入っていて、話し相手を失った俺は、ひたすらタバコを吸って眠気を飛ばすしかなかった。


更に2時間後、ポツリと雨音がして、あっという間にスコールのような豪雨が辺りいっぱいに落ちてきた。

「何で急に…ん?」

俺はサーモグラフィー双眼鏡を取り出すと、遠い場所を眺めはじめた。

まずマキビシチェーンが並んでいる。そしてその少し前の崖の端に赤色を確認する。2人…か?

フィリップは目覚め、

「なんかあったんすか?っていうかすごい大雨!」

「想像だが、気象強行士が降らした雨だろうな」

「向こうに敵がいるんすか?みえないっすけど…」

「とにかく先にマキビシチェーンがあるから、車の後ろに入れてある工業用ワイヤーペンチで断ち切れ。敵が居るから注意しろよ!俺はすぐ後ろで援護する」

フィリップはペンチを片手に、もう一方の片手で銃を持ち、冷静に近づき、マキビシチェーンを切ってゆく。それをすぐ後ろで俺は援護した。

チェーンを切ったフィリップは、横1線へ走りチェーンをどかした。その時。

車が崖から現れ、こっちに向かってくるじゃないか。フィリップが片手に持っていた銃で車に弾を当てるが、敵の車も防弾仕様の上、大雨で視界不良が激しくて当てるどころじゃなかった。俺も敵影が見えなくなるまで撃ち続けたが無駄弾だった。

「俺らも車に乗ろう!」

すると今度は敵の車がバックしてきた。窓を開け猫族らしき者が撃ってきた。

「こいつ!」

フィリップも窓を開け、FNファイブセブンで応対した。猫族とフィリップが撃ちあいをしていたが、フィリップは腕に被弾してしまい、

「うっ…‼」

と叫ぶと窓を閉めた。

「もう先に進むぞ‼」

俺はそのまま走り続け、マキビシチェーンを横目にスピードを上げて去った。何故か敵は追走してこない。いつしか雨もやみ、太陽が顔をみせた。


俺は一旦車を止めて、フィリップの腕に包帯を巻いていた。弾は貫通してるのが幸いだった。

フィリップは力無くつぶやいた。

「自分も相手の肩に当てたっすよ…」

だから追走して来なかったのか。

「あの雨の中、よくやったなフィリップ。街まで急ぐから頑張れ」

「イエッサー…」

そのまま後部座席でフィリップは静かに眠り始めた…。


あの猫族はどこかの街を焼き払った事実がある。その一味か?そして気象強行士とタッグを組んでいるペアの強盗団といった所か。

もうタバコを吸う気力も無くなっていた。


夜更けすぐに、やっと次の街に到着した。いの一番に医者の元へ向かう。当然閉まっているが、ドンドンと叩いて騒げば起きてくれるだろう。

「医者!急患だぞあけろ!」

4分ほどして部屋の明かりが灯り、ドアを開けた。医者はパジャマ姿である。

「何の騒ぎだ」

「腕を撃たれたので、どうか見て欲しい」

「入りなさい」

医者は患部を見たりさわったりしている。

「弾は貫通、何針か縫っておくから、あとは治癒するだろう」

もう帰れとばかりに2人を外に出し、医者はドアを強めに閉めた。

「良かった…すぐ相棒がいなくなるんじゃないかと心配していたぞ、良かったな」

「はい…」

フィリップは麻酔のせいか、また眠りに落ちた。

3泊くらいできる宿屋を探すか。そう思い俺はフィリップを車に乗せ、徐行しながら車を走らせた。


宿に到着した。俺はフィリップを抱きかかえたまま、ドアを入り、受付にフィリップの経緯を説明すると2人部屋に案内してくれた。助かる。

フィリップをベッドに寝かせて、ようやく安堵した。窓を開けタバコを吸う。ああいう上級者盗賊とは対峙したくないものだ。2本ほど吸うと、いつもの儀式で(ポーチを枕で隠し銃を片手に握って)俺も久しぶりのベッドで寝息を立てた。


次の日の朝────────


モーニングを食べるため、俺はフィリップを支えながら1階へ降りた。椅子に座らせ、対面に俺が座る。

「フィリップ、何が食べたい?」

「…………肉」

ボソッと一言つぶやく。

「はいはい肉たらふく食って元気だせよ」

フィリップの目の前に肉を置くと、反対側の腕で肉をゆっくりとだが確実にブツを胃へ流し込んでいる。

「水もちゃんと飲めよ?」

果物しか口にできない俺はフィリップに水を差し出す。

のんびりと朝食を食べた俺たちは、部屋にまた戻った。

「フィリップはベッドでそのまま寝てろ。俺は買い出しに行ってくる。」

そう言って俺は私服で買い出しをした。3日間もいるんだから急ぐことはないが、レーションと水、そして車用電池とタバコを抱えて落ちそうになるも、なんとか車まで辿り着き、どっさりと積み込む。

宿の部屋に入ると、フィリップは寝息を立てていた。また窓越しに座りタバコを口にする。

ネットや電話がジャミングで使えなくなって何年経っただろう。恐らくこの手紙の内容はハッカー関係だと踏んでいる。俺たちがすぐ届けないといけない事は分かっていた。

テッドは今頃どこでどんな活躍をしているだろう。そんな事を考えながらタバコをギリギリまで吸い続け、灰皿に落とし沈めた。

次の中継地点の街メトロポリスを地図で見ると、目を覆いたくなるような長さがそこに広がっていた。敵は半分に分かれ、テッドと俺のどちらかを狙っている。ここからは死闘になってくるだろう。フィリップには面倒をかけるが腕は確かだ。

ここからが本番だ。タバコの煙は外に吸われ消えてゆくのだった。


あれから3日間が過ぎ、フィリップの調子も大分良くなってきた。

「もう被弾した手で銃も撃てたんで、全然大丈夫っすよ!」

そうか。急がなきゃいけないのでフィリップが問題無ければすぐにでも車を飛ばしたいので、チェックアウトして車に乗り込む。

「いや~意外と早く治って良かったっす」

「頼りにしてるから、もう被弾しないでくれよ?」

「あいつの腕前は確かでしたっす」

「いや、お前の方が有能だよ」

そんな感じで久しぶりに談笑していると、森のような道を走る事になった。

「いかにも何かが出そうっすね」

「そんな道だな…」

木々がうっそうと茂っており、身を隠すには最適な場所だった。

「迂回ルートがないから仕方が無いな」

「…敵発見っす‼」


堂々と目の前に一人の男が現れた。どこかの民族なのだろう。槍を持っている。こんな奴らにまで手紙の価値を知ってる事実が鬱陶しかった。

両側の茂みと後ろからも同じ格好をした奴らが現れ、完全に包囲された。

「だめだ関わっていられねぇ」

俺はくわえタバコでアクセルを踏む。強引に前方に車を走らせる。槍で突かれるが防弾仕様なので意味がなかった。

前にいた2人が、前のボンネットにしがみ付いたので、急ブレーキをかけると、2人は前方に投げ出された。そしてアクセルを踏み2人をひきながらそのまま走り続ける。

後ろで民族どもが怒っているが、車のスピードにはかなわない。そのままドライブを楽しめそうだ。だがしかし先は長い。

フィリップはレーションにかぶりつきながら、地図を見ていた。

「メガロポリスまでは遠い道のりっすね」

「だが、メガロポリスこそ俺らの最終地点だから、行くしかないだろう」

タバコばかりで食事を食べるのがおっくうになってるのは、良くない兆候だろう。実際俺は体重が減っている。

逆にあれだけ肉を食っても体重が減らないフィリップはどうしてだろう。痩せの大食いを地でいってるようだ。


「フランクさん…ちょっとトイレいいすか?」

「大小どっちだ」

「小のほうっす」

車を一時停止してフィリップは茂みに入って用を足していると。

茂みから小さい魔法使いたちが次々と現れた。

クランクももちろん視認しているが、あまりにも小さいので

「なんだありゃあ?」

と首をかしげる。

「手紙、よこせ~~~‼」

幼女の魔法使いがフィリップに火の玉をぶつけてくる。やばい!だが今は動けない‼

火の玉がフィリップに直撃したが、全然痛くない。ちょっと暖かかったぐらいの感じだ。

「レベル低っ‼」

用を足したフィリップはすぐ車に戻り

「あいつら超初心者レベルっすよ」

「そうか…全くしんどいなぁ」

窓を開け叫ぶ。

「お前らの出る幕はねぇんだ!さっさとどっかいけ!」

言われた幼女たちは、がっかりして茂みへと戻っていった。

道が空いたので、徐行運転してから、一気にアクセルを踏んだ。

「この森から早く出たいぜ」


3時間ほど経っただろうか。いくら車を飛ばしても森から抜け出せない。まるで同じ道をループしている感覚だった。

俺の疲れがピークに達した時、何やら明かりのようなものを見つける。

「人がいるのか?こんなところで?」

蛍のような光に導かれると、そこには屋敷があるじゃないか。

「ここで一度、寝たいなぁ」

ダメ元で玄関をノックすると、目が見渡せるように一部の箇所を横にスライドさせる。と、すぐにドアが開いた。

「ポストマンかね?やあようこそ」

屋敷の主人が握手をして迎えてくれた。

「AAAか、めずらしい。大統領宛ての手紙を運ぶ道中かね?」

「良くご存じで」

「ははっ。私も昔はポストマンだったものでね」

引退した元ポストマンは、その苦行をよく理解してくれた。

「御馳走しよう。あちらへ」

案内された場所は食事を取る専用の部屋なのだが、無駄に広かった。

「食品は定期的に車でこちらに送ってもらってるのだよ。だからこんな所でも暮らしていけるわけなんだ」

「なるほどですね」

2人は端っこに隣同士でチョコンと座った。館の主人は食事を作ってくると告げると厨房へ消えていく。

「どうにも居心地が…悪いな」

「そうっすね」

30分がとても長く感じた。そこに主人が料理を持ってようやく現れた。

「フォアグラなんかもあるよ。お気に召すかは自信ないけどね」

俺はフォアグラを一口で食べると、

「うん、おいしい」

「おいしいっすね」

「ステーキも用意したよ」

フィリップは肉に超反応した。

「頂きます‼」

まさかこんな森の中でステーキが食べられるなんて。焼き加減がレアなのは新鮮な牛肉であることの証であった。

主人はがっついてる光景をまじまじと見て、終始笑顔を絶やさなかった。

「ごちそうさまでした」

食べ終わると俺は重要な点を突いた

「あの…金渡しますんで、一泊泊めてはくれないだろうか?」

「何泊でもしなさい。私も一人身でね、にぎやかしは歓迎だよ。そんな事よりAAAの君」

「ん?」

「AAAはICチップを3つ埋め込んだだろう」

「何故それを?」

「元ポストマンだからね。色んなポストマンがここを訪れるんだ。嫌になるほど聞いたよ」

「聞いただけではICチップの中身を知らないでしょう?」

「そこでだ。私は大枚はたいてICチップの内容を知らせる装置を持っているのだよ」

「それは興味深い…」

主人は椅子に腰かけながら続けた。

「一つ目はGPS、位置確認チップなのはわかっているのだが、あとの2枚は気まぐれなんだ」

「気まぐれで決めていると?」

「事実その通りなんだ。前に来たポストマンは女性を殺すと、死にたくなるような頭痛が走る代物でね」

「それも…気まぐれで?」

「その通り。君も中身を知りたくないかね?自分の気まぐれICチップの中身を」

俺は少し考えたあげく…

「ポストマンとして知っておきたいですね」

「そうか。じゃあお隣のAA君は寝室で休息しておきなさい。AAAは私の地下室で…どうぞ」


そう言うと2人は別れ、俺は地下室へ移動した。こんな場所でこのような状況になるなんて、誰も想像できないだろう。

地下室にある沢山の明かりが灯る。

「痛みとかは全くないから安心したまえ。さあこのベッドに上がりなさい」

俺は主人の言われるがまま、ベッドに寝そべる。

「さあて…」

と言ってペンのような物を持って顔のコメカミ辺りに焦点を当てた。するとモニタがペンから内部映像を映してるようだ。

「うん…1つ目は位置確認GPS、これは分かる。他には…」

俺は固唾をのんで見守った。

「これは…承認して見えてくるぞ…どれ…」

何だか主人が悪魔博士のような顔になってきているのが少しだけ気になったが、自分は寝そべるしかなかった。

「2枚目は、銃の火力効果アップだな!」

「本当ですか⁉」

「ああ間違いない。あともう一つは…どこだ…あぁ…あ」

しわくちゃな顔をして絶望している。

「3枚目はどうなんです?」

「壊れとる」

「え?」

「そのままの意味だ」

そんな…神は気まぐれすぎた。

「残念だよ。本当に」

俺もこれには少しがっかりした。火力アップは何となく察しがつく部分はあった。敵が吹っ飛んでゆく光景などなどだ。

でもいいじゃないか。1つだけ良いスキルを与えられたのだから。

というかそうやって割り切るしかなかったというべきか。

「寝室は登ってあちらだ。では朝までゆっくりしてくれ」

「助かる」

老人の後ろ姿は、悔しさ満載だった。でも仕方ない。割り切れ俺!


「どうだったんすか?」

当然ながらフィリップも興味深々な体で帰って来た俺に喋りかけた」

「火力アップだとよ」

「え、それだけっすか?」

「ああ」

「そうすか。じゃ自分トイレいってくるっす~」

俺もパジャマ姿になり、ポーチを枕の下に隠し、どっと疲れが出た。

「ただいまっす~あれ?」

俺は早くも寝息を立てていたらいかった。

フィリップは色々察し、音をたてないようにベッドに戻って目を閉じた。


森の中なのにまぶしい朝だ。フィリップはまだ寝ている。すると主人が、

「モーニング用意してるよ。早くきたまえ」

俺はフィリップの肩を激しくゆする。

「フィリップ、朝だぞ?」

「ファ…?」


制服に着替えをしてからモーニングを頂いた。

「このコーンポタージュ、激うまっす‼」

フィリップがそう叫びながら平らげると、ポタージュだけをおかわりした。

もうこんな食事、メトロポリスに行かないと食べられないだろうな。

そんな事を思いながら食事していると、主人がポタージュのおかわりを持ってきた。

「制服に着替えてるって事は…もう旅立つんだね」

「その通りっす。ありがとさんでした!」

「色々礼を言う」

2人とも頭を下げた。

「あと少し走れば森を抜けられるから。健闘を祈ってるよ。」

握手を固くかわした俺らは、車に乗り再び道中に入った。

「ありゃ~まだこんなに距離あるんすかぁ?」

フィリップは地図を眺めて呆れている。

「仕方ない。これがAAAなんだ」

「ううむ…」


何とか森を抜け出した俺らは、素直に喜んだが、また荒野だ。

「退屈な道になるんすねぇ…」

「もうすぐ草原に変わるからよく見といてくれ。特に敵が見えた時な」

「へーい」


いつもの癖でタバコに火を付ける。

「自分までタバコ吸いたくなってくるっす」

「吸うか?」

「やめとくっす」

荒野をひたすら走り続ける1台の車。雑談にもほとんど花が咲かない。

「フランクさんは恋系の話題をしないっすね」

「仕事がすべて。興味がないからだ。」

「こうして話題が終わっちゃうじゃないっすか‼もっと花咲かせましょうよ…」

「長い間1人だったからな。雑談は苦手だ。それとも仕事のグロイ話でもしようか?」

「いやっす」

「だろ?だから俺は仕事が全てなんだ、それしか無い」


風景は荒地から草原に切り替わった。やっとメガロポリスの鼻先が見えてきた。

「開けた場所に出てきて敵もいないし、うさぎ狩りをしよう」

「何のゲ~ムっすか」

「ゲームじゃない。食べるんだ」

「ええーっ自分昔ウサギ飼ってたからむりっすよー」

「じゃあウサギの肉はやらないが、いいか?」

「…」

俺は車を停止し、ウサギめがけて狩りを始める。ウサギの大繁殖によって荒地が増えていった。腹が減ったらウサギは食う物でしかない。

「あーあ…夢中で飼ってるよ…」

今日は4匹も仕留めた。大量だ。

フィリップは死んだウサギを両手で4匹持ってこっちにやってくるフランクに畏怖した。

「お前はウサギ肉の美味しさを知らないだけだ。肉は好きだろ?」

「でも犬や猫を食うみたいなもんじゃないっすか?AAAだからできる芸当っす!」

呆れた俺は車のエンジンをかける。

「分けてやらないからな。レーションでも食ってろ」

再び草原を行く1台の車。俺はウサギを4匹仕留めた満足感でタバコに火を付ける。


車を5時間ぶっ続けで走ったツケを今、味わっていた。空はすでに星々が輝いている。

「エコノミー症候群っすよそれ」

下半身から突き上げるような痛みを感じて悶えている。上手く足が動かない。

「焚火を作りますから、温まれば治るんじゃないっすか?」

「うさぎ…俺のうさぎはどこだ」

「どこからでてくるんすか、その執着心は。車の相席の所っすけど自分はとりにいかないっすからね」

俺はなんとか車と内緒話をするように立ち上がりドアを開け、ウサギを4匹連れて来る。

「自分の前でさばくの、やめてくれないっすか?」

フィリップの『本気嫌がり型』の言葉をぶつけられても、俺は4匹のウサギの調理にかかる。皮を剥ぎ、内臓を全て取り除いてから串に差し、充分加熱してから食べる事ができる。

フィリップはウサギ肉の匂いについ反応してしまうが、首を横に振り、レーションにかぶりつく。無味無臭な何かの塊レーション。ご飯でもパンでもない何か。

俺がウサギ肉を食ってる所をちらちら見られ、思わず1本差し出した。

「とにかく食え‼」

ついに誘惑から離れられず、1本受け取るとかじりつく!

「熱…ウマ!」

1本ペロリといってしまったフィリップは自分のカルマが上昇していく、そんな気分で棒を眺めながら涙した。

サバイバル術はポストマン訓練中に嫌でも習っただろうが。人間は動いてようと座っていようと腹が減る生物なんだ。

「残りは全部俺のものだからな。欲しいなら夜行性のウサギを自分で駆ってこい」

フィリップは泣きじゃくりながら

「もういいっす…」

と、涙がとまらないご様子。

今日は食べたら、明日に備えてすぐ寝よう…そんな事を思いながらウサギ肉を美味そうに全部平らげた。


焚火も自然と消えていく夜。横風微風。俺らは2人とも熟睡していた。


翌朝、テントから身を元気に乗り出し、柔らかい風を浴びた。フィリップはまだ寝ているようだ。

「フィリップ、出発するぞ!ほらフィリップ!」

肩を強引に揺すると、涙で枕を濡らしていたフィリップはやっと身を起こした。

「もうっすか?」

「もうも何も、遅いくらいだ。行くぞ」

草原のゾーンに入ると、己の身を隠せないので敵の数もだいぶ減った。

タバコの味も充分感じるようになった。健康な証拠だ。

「フランクさん!窓はあけていきましょ?」

後部座席の両側の窓は全開である。

「悪いがタバコを止める気はゼロなんだ。本当にこれだけは許してほしい」

そう言ってまた新しいタバコに火を付ける。

「自分も、もう吸おうかな…いやだめっす」

フィリップの気を害しているが、まじめな話辞められないのである。禁煙外来に駆け込んだこともあった。しかしやはりニコチンガムやニコチンパッドなんかより、電子タバコといい自分にはこのタバコが無いと手は震え、まともな判断ひとつ出来ないだろう。要は中毒の一言に尽きる。

しかし敵が恐ろしい程出ない代わりに、メガロポリスもちっとも現れない。道を間違えてる可能性も無きにしもあらずだったが、フィリップにも言い出せないでいた。


そして結果辿り着いたのは、元炭鉱場の道である。

「ここホントに渡れるんすかぁ?」

何度も地図を見たが、確かにここのはず…なんだが。

「まあ道はありそうだし、せっかくだから通ってみようや」

そう言い捨てると、徐行運転で探鉱場に入った。

中に入ると、下が複雑な道路で入り組んでいるが、今こちらが渡ってる道は一本道だった。

まあまあ、真っすぐいけるなら、それはそれで道には変わりない。しかし右端がすぐ崖になっており、運転には注意しないといけなかった。

「あぶねぇ道だなぁ…」

テッドもここを通ったのであろうか…。疑問しか浮かばないが安全運転を保って進んでゆく。


すると目の前で大爆発が起こった。風圧が凄く、ブレーキも不要なくらい動けなくなった。

「何が起こった⁉」

目の前の埃が消えると、先の道路が分断されてしまっている。幸い、こちら側の道路が上向きになっているので、ジャンプすれば通れると踏んだ。

「ジャンプするぞ、耐えろよ!」

「フランクさん!横!横に!」

フィリップの横視点からは、巨人が爆弾を投げようとしていた。俺は知らずにジャンプしたが、恐らく最良な選択だったようだ。

ジャンプした瞬間、後ろ側に爆弾が飛び、再びその風圧でジャンプ力があがり、なんとか道路に着地した。

俺は始めて横にいる巨人をみたが、

「あんなのに関わるだけ無駄だ。全速力でいくぞ‼」

巨人はデカいが動きはのろかった。何とか危機を回避した俺たちは、そのままフルスピードで探鉱出口に向かった。

出ると、また柔らかい風に包まれた。

「あぶなかったっすねぇ~」

「AAAはこんな仕事だっつーの。理解してくれとは言わないがな」

大草原の中、車は少しスピードを落として、またタバコに火を付けた。


そうこうしてる内に、僕らを必ず巻き込んでくる夜が訪れる。

夜間は敵が動きやすいので、焚火は欠かせないが、反面敵が寄ってくるデメリットもあった。

今日はウサギ狩りをしていないので、俺もフィリップも焚火を囲んでレーションを無言でかぶりつく作業に入った。

フィリップは以前いた屋敷で食べたステーキの味がまだ消えてないようだった。

「屋敷で食べた品々をおもだしますねぇ…」

「あれはレアケースだ。忘れろ。そのかわりレーションはいくら食ってもいいぞ」

「と言う事は、メガロポリスが間近なんすか?」

「そう願ってるよ」

地図を焚火の近くで何度も見ながら、俺はつぶやいた。

今夜はお互い喋る事も無かったので、テントで熟睡する2人であった。


翌朝────────


今日の朝は快眠だったおかげか、ほぼ同時に起きる事ができた。

焚火はとうに消えている。

「じゃ行くか!」

車のバックを開けると、車用電池があともう1個しかない事に気づく。

…まずいなぁ…しかしフィリップにはあえて説明はしなかった。

再び車が動き出した。電力を見るとほぼ満タンである。だから残りの電池は2本分という計算になる。

「うさぎがうじゃうじゃいるっすよ。狩らないんすか?」

「お前やっぱりウサギ肉の良さが分かりかけたな?」

「そ、そういう意味で言ったわけじゃないっすよ!断じてないっす!」


しかしウサギ肉はタバコと同様、中毒性があるのだ。焼かれたウサギを見たら、フィリップは反射的に食いつくだろう。


何時間も草原を走り続けた。疲れきった俺は、

「フィリップ!今更言うのもあれだが、お前も運転しろよ!動かせるんだろ?」

「自分は免許ないっす」

「AAがそんな『ざま』か!聞いて呆れるぜ」

「何と言われようと構わないっす」

そもそも運転を半分にすることを考えてたのだが、当てが外れた。


また夜が来たのだが、うっすらと見えるアレは…城の明かりじゃないか⁉

既に寝ているフィリップを叩き起こして、

「フィリップ!あれは城じゃないか?なあフィリップ!」

「ん?…城っすか?」

「メガロポリスは街だが全体を城に囲まれているんだ!いいぞこれは!」

「やっと到着っすかぁ~ふぁ~~」

フィリップはまだ寝足りない状態だったが寝そうになる度、揺らして起こしつつ車を走らせた。

そうこうしてる間に、やっとメガロポリスに到着した俺たちであった。

門の前に車を置き、門の前にいる門番2人に言った。

「AAAだ。開門を頼もう」

門番は噛みタバコをくちゃくちゃしながら、

「誰だお前は?知らん顔だな」

「だから証明書を見ろ!まごうことなきAAAだ。開門を早くしてくれ」

もう一人の兵は酒を飲んで酔っ払っていた。

「何と言う体たらくぶりだ。頭がいかれてんのか?」

噛みタバコの液体を横に捨てながら門番は口を開いた。

「今は軍部側が革命を起こし、今は絶賛政府転覆中だ。大統領は幽閉、その他の役人どもは皆殺しにした。」

「何だと⁉革命?」

「だからお前なぞ要らぬ只の野良犬よ」

俺はフィリップと目を合わせ、軽く合図をした。

俺とフィリップは同時に銃を突きだした。

「何が革命だふざけるな!開門しないとお前なんぞ一瞬でハチの巣だぞ!」

兵士はしばらく噛みタバコを噛んでいたが、ここまできてやはり自分の命は捨てたくないらしい。兵士は叫んだ。

「開門‼‼」

裏の門番に伝わったらしく、ゆっくりと門が開いてゆく。すると。

街が一斉に火の手が回っている。最悪な状況だった。俺はためらいなく門番の目を次々と倒していった。もちろん酔っ払いもだ。

そしてフィリップに指示を出す。

「ありったけの弾丸持ってこい!」

フィリップは駆け足で車に向かう。すると門の奥から群衆が押し寄せる。なんの罪も無き国民が逃げていった。火だるまになっている者もいる。

「これが革命だってんのか?ふざけんな」

フィリップは何十にもたすき掛けされた弾丸を持ってきた。もちろん俺も半分たすき掛けして街へと入ってゆく。

民家も宿屋も火の手が回っていた。もう出口も火の手で通れなくなっているかもしれない。仕方ないので城の入り口までノンストップで走り続ける。

入り口にいた兵士を2人をかたずける。

「幽閉されてる大統領を探すぞ!」

そう叫んで城内部に侵入した。

城は焼けてはないが、その分軍部側に回った兵士たちが沢山居た。一人一人倒してゆくが、弾丸はすぐに切れてしまう。

「俺が再装填するから、援護射撃を頼む!」

フィリップは前に出て兵士をかたずけていく。あっと言う間に兵士の死体の山ができていた。

「再装填完了、今度はお前が再装填しろ!」

フィリップはここに来ても冷静だった所は素直に褒めたい。

「完了っす!」

「よし進もう!」

城の奥に入ってくる度、兵士の数は増えてゆく。が、あえて果敢に侵入する。兵士の恰好をすれば良かったと後悔したが、もう遅い。

1つだけ色のついていない部屋があったので、銃を撃って無理やりこじ開けて開いた穴から中を覗くと。


串刺しにされてる大統領の姿があった。遅かった。やはり俺らは遅かったのだ。

「大統領が死に、幹部も民もいなくなった…」

「…」

フィリップは何も答えられず、強く拳を握った。

「退散するぞ!ここに居る意味はなくなった」

「アイサー!」

2人は兵隊を倒しながら脱出を開始した。

串刺しにされた大統領の姿が目をチラつかせ離れない。何とか外をでると、民衆は皆出てゆき、残兵がいたので炎をかわしながら処理してゆく。

炎に包まれた建物が下に崩れていく様を見て、

「フィリップ気をつけろよ!建物が崩れ落ちてくる」

振り向くとすでに炎の壁が出来上がっていて、もう城には入れない。脱出するしかなかった。

2人が門をくぐると、少し先は民衆の生き残りの場と化していた。2人は民と合流する。

「皆慌てるな!落ち着けというのは酷だが、とにかく皆落ち着いて欲しい!」

すると民衆の1人が立ち上がり、

「郵便屋が何を偉そうな事言ってんだ、この!」

「貴方が来るのが遅かったせいで起こった悲劇なんじゃないの?」

民衆は一人また一人と立ち上がり、文句を浴びせてきた。

返す言葉もなかった俺は、

「フィリップ、車を出して民衆とは距離を置こうじゃないか」

「イエッサー…」

情けない姿の2人は車を出して民衆から逃げるように車をはしらせた。


少し距離を取った俺らはここら辺でキャンプする事にした。

焚火を焚くと、心の底からぬくもりが溢れ出る。

「どうしてあんな事しちゃったんでしょうね…」

フィリップの呟きに俺は畳みかける。

「それはもちろん大統領が弱かったからだ!貧弱な政府に兵士は飽き飽きしてた!そんな所だろう。しかし…」

この手紙をどうすべきなのか分からなくなっていた。AAAしか持てない大事な手紙である。

「今までの俺たちが築いてきた物が、いっぺんにくずされた感じだな…」

フィリップはもう何の言葉も浮かばず、完全に意気消沈している。

炎にあたると正直眠たかったが、どうしてもあらゆる物事が視界を走馬灯のように駆け巡った。

「寝てから考えよう…じゃあな」

そう呟いてから、2人はテントに入り、深い眠りに入っていった。



気配を一切感じなかった。

外からどんどんと人影のような何かがやってくる。それは数十人規模の軍団である。炎が上がると、紙袋を被った者達が浮き上がってくる。

そんな事お構いなしで眠る俺らの元に、静かに近寄り、テントの入り口を開けると、紙袋団にさるぐつわを嚙まされる。気が付くと手も後ろ手で縛られていた。

紙袋団の団員の1人がポーチに手をやり、大事にハサミで紐を切ろうとする…が、なかなか切れない。このポーチは一見ただのポーチに見えるが、固い繊維で作られた特注品なのである。

それでも強引に何とかしようと、デカいワイヤーのような物を持ち出しついにポーチの紐は切れてしまった。

……‼

言葉が出ない。忍びと同等の業だけは得意なやつらに手紙を取られるのかっ

数人で担ぎ込まれた俺は、横に目線をやると、フィリップも同じように手紙を取られ、運ばれてゆく姿を見ていた。

打開案はないのかっ…こんな屈辱は味わいたくなかった。

しばらく担がれると、木々が下にある高い棒に2人はくくり付けられる。当然周りは松明を手に持った紙袋団だ。

火を放たれるのは一見しないでも分かった。


団の1人が前に現れ叫ぶ。

「この者たちポストマンは、この世をさらに混迷させるべく、あちこち奔走している悪行を平気でやっている、悪しき軍団である!」

皆同調するかのように松明が揺れる。何なんだこの集団…不気味すぎる上に手出しも出来ない。

「よってこの者達を火あぶり刑に処す!これは警察などには任せられない!」

焚き木に何か液体を振りかけている。多分ガソリンか何かをまいているのだろう。


終わった───────────


絶体絶命の極致に初めて行きついた時、人は己の限界を始めて知る事となる。

自分はこの程度の人間だったのか?否!こんな死に方はAAAとして絶対ありえない!しかし…天命を待つのみ…


その時である。

ポツリと一粒の水が鼻に当たる。

そしていきなり豪雨が降ってきた!紙袋団の松明の明かりが次々と消えていき、団内でざわつき始める。

刹那。

郵便マークのついた軽車がジャンプして突っ込んできた。団員は焦り、皆チリジリに逃げてゆく。

メガホンを持った郵便局員が車の窓から叫ぶ。

「もうその手紙の価値はゼロだ!だから手紙をよこせ~‼」

無価値だと…?

ポーチを持っていたリーダー格の男が、ポーチを投げ捨てて逃亡した。

車で突っ込んできたのは何とテッドと見知らぬ女性だった。

「先輩…つらかったでしょう」

俺は何年も流してなかった涙を流した。さるぐつわと、くくり付けた紐をテッドがナイフで切ってゆく。

「テッドッ…‼」

「降りましょう!」

フィリップは女性によって下に下ろされた。

「無価値って何だ…どう言う事なんだテッド…!」

「ハッカー集団を倒して、もうネットも電話も使えるようになったんですよ!僕らはそれを伝えに各地を回っていたら、GPSで貴方の所在を見つけた訳です!」

「そうなのか…」

全世界は救われたが、郵便屋はまた安月給でCランクの手紙配達員となってしまう。

「テッドッ…俺たちはランク付けが無くなったんだぞ…それでもいいのか?」

テッドは雨まみれの中、笑顔で答えた。

「僕はそれで良いと思っています!正直何か特典は付けてほしいですけどね!」

フィリップは気絶していた。ゆっくり女性が車へと抱え込んでゆく。テッドが、

「あの女性は気候強行士のヨーコ、僕の相棒さ。彼女とかではなく、仲間です!」


あれから1年が過ぎ───────────

郵便局員のランク付けは終わったが、局長がランクに応じて報酬金を出す事になったので、AAAは一生安心できる報奨金をもらった。

辞める人もわずかながら居たものの、俺もフィリップも、テッドとその相棒も郵便配達をやめなかった。多分この物語は限りなくブラックに近いグレーゾーンだから、多分歴史には残らないだろう。

それでも胸を張って、俺らは毎日手紙を渡して国民の喜怒哀楽を届けるポストマンの道を進んだのだった。




the end




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ