No9 世界の真実
広い世界。
おれがそう思っていた常識は今日塗り替えられた。
「なんで壁があるんだ?」
きっかけは、村を出たこの先がどうなっているんだろう?と疑問に思ったときだ。
今まではいったことのない場所を歩いてみようか。ちょっとした冒険心を胸に抱き、今までしなかった行動をした結果がこれだ。
「この先は続いている。道も見えているし、空も雲がこの先に広がっている。なのに――」
進めない。見えない壁がある場所を境に、壁のように横に広がっている。
どうなってるんだ。おれが今まで教わってきたのは嘘だったのか?
親や村長、古くから住む村人曰く、村から出ると凶悪な魔物に襲われ死ぬ。
村を襲ってこないのは好奇心を持った村人を踊り喰うのが好きだから。
森には豊富な食料があるし、わざわざ村を襲うほど飢えてはいない。
しかし、少しでも村を出ると恐るべき感知能力で嗅ぎつけてくるのだそうだ。
行ったものは誰も帰ってきたことがない。だから、絶対に村を出てはならない。
そう教わっていた。
「違うじゃないか。魔物に殺されたんじゃない」
おそらくはそうなんだろう。
おれはこの見えない壁に沿ってずっと歩いていたが、町を中心にして
壁は広がっていることが分かった。
「そりゃそうだよな・・・」
途中で骨を見つけた。服装から見て、以前に外の世界を見に行くといって村を出ていった幼馴染のマーケリックだ。彼は勇者になるんだと豪語して家を飛び出していったらしいが、こんなところで出会うなんて。
「お前もそうなんだな」
この先には何もない。空想の世界でしかなかった。
世界はこの村以外にはないし、魔物も存在しない。
だから、勇者なんてものもいない。いる訳がない。
だから、おれも彼と同じ行動をとる。
骨のすぐそばにあった、夢をつかって。