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お試し!即興短編小説集  作者: アルマンド
7/40

No7 ひとりでできるもん!

 カーテナー・オブライン。

 彼女は2105年に生きる最後の人類だ。


「ぬわー!」


 まぬけな声をあげて、すっ転ぶ少女。何もない所で転がる能力を持っているのだろうか。

 あまり肉のついてないお尻をさすりながら、探していた建物を見つけた。


「あった、あった」


 彼女が探していたのはスーパーだ。

 理由はもちろん食料や水を手に入れるため。


「ふんふ、ふんふふーん」


 スキップしながら店内を回っていく。

 缶詰のあたりで止まったようだ。おもむろに手を伸ばして

 コンビーフの缶を手に取ると、プルタブに指をかけて勢いよく蓋を開けた。


「わっとっとっ」


 またやらかすところだった。


 彼女は以前、缶詰の蓋を力いっぱい開けた反動で中身を台無しにしたことがある。

 学習能力が低いのだろう。もう一度同じ失敗をするところだったが運よく免れたようだ。


「むー」


 なにやら缶をみてうなりをあげている。間違えてコンビーフ以外の缶をあけてしまったのだろうか。

 彼女のうっかりはとどまることを知らないから十分考えられるだろう。


「米があればなー」


 米はある。だが炊飯器があっても、水道や電気といったライフラインも止まって

 しまっている。


 過去には電化製品がなくても米を炊いていた時代があったというのに、

 この現代っ子は、以前林間学校で得た学びをすっかり忘れてしまったらしい。

 もしくは記憶力が欠如しているのだろう。



「・・・・・・」



 急に黙り込んだ彼女はリュックサックに缶詰と水を放り込んだ後、

 スーパーをあとにした。ここを拠点にするつもりはないらしい。

 もったいない。


「はぁー」


 どんよりとしたため息をつきながら天をじっと見つめるカーテナー。

 無駄な時間を浪費できるのは、彼女になんのしがらみがないからだろう。

 うらやましいかぎりで。その頭にはなにもつま——


「うるさーい!!!」


 急に叫び「うるさいってのー!」どうやらおかしくなってしまったらしい。


「おかしくなってなんかないわよ、アホアホAI!!」


 4足歩行していたときの人類と変わらない頭脳をもつ

 君に言われるなんてショックだよ、モンキーナ。


「カ―テナーよ!」


 そう、わたしは世界一優秀な頭脳をもつAI。

 彼女の行く先々をサポートして、今なお生き永らえ

 させているのはわたしのバックアップがあってこそ。

 話相手がいないカーテナーを精神崩壊させないように

 こうして遊んでやっている。


「小姑みたいにチクチクと嫌味を言うのやめてよね。それと語り口調がうざい」


 客観的な観点から指摘することで、君に分かりやすく自分がポンコツだと

 教えてあげているのだよ。


「うざい」


 口の悪さも矯正しないとな。


「まぁ、感謝はしているけど」


 "素直さ"もつけ足しておくか。


 普段からその態度なら私も小言を言わない。

 とはいえ、あまり厳しすぎるのもよくはないのかもしれない。

 彼女のストレス度合いを測りながら会話を

 決めていく必要があるだろう。それから

 この先の話「やっぱうるさーい!」を……


「頭の中でそんなに声出されたらやっぱしんどいわーーーー!!!」


 そう、わたしは彼女の頭の中に入り込んでいる。

 カーテナーを救うにはこの方法しかなかった。

 人権など無視して彼女の頭にはいる。

 最後の人類を失うわけにはいかなかった。

 少し黙っておくか。


「それでいいわ」



******* *******




「なんか喋ってよ!さみしいでしょ!」


 理不尽だ。それともやはり、記憶力が欠如しているのだろうか?


「うるさいけど、話し相手になってくれてありがとう!」


 やはり素直さを教えることが最重要課題だとわたしは思考した。

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