No4 旅は続く
ああ、これで終わりか。
「みんな、ありがとうな」
部屋で子供たちが泣いている。
孫もずいぶん大きくなったものだ。
「父さん、おれ頑張るよ」
「いやよ、まだ、、頑張ってよお父さん!」
「姉さん、もう父さんは・・・」
子供たちも立派になって。もう何も思い残すことはない。
安心してお前のもとにいけるよ。
「ううっ、ぐすっ、うっ・・・ぐす」
娘は大きくなってもまだまだ泣き虫だな。
もう何も見えないが、声だけは聞こえる。
私はこの病室で死ぬのだ。
真っ暗な世界に光が差し込んできた。
光に向かって手を伸ばす。
迎えに来てくれたんだな。
「「(お)父さん!!」」
子供や孫たちが私を呼ぶ声をするが、
すまない。わたしはそろそろ妻と同じところに旅立つよ。
本当に、自慢の家族だよ。お前たち。
徐々に、音も聞こえなくなって意識は光の中に溶けていった。
『かえってきたな!』
ん、ここは?
まばゆい光の中に私はいる。
そして、目の前には―――
『ずっと来るのを待ってたぞ。退屈だったから頻繁に覗いてたんだ』
声が頭に響いてくる。
「そうだったな」
そう、思い出した。
わたしはこの場所に何度も来たことがある。
『男ばかりやってたから、女は新鮮だったな』
「わたしは逆だったけどね」
『だよなー、今世も悪くなかったな』
ここは精神世界。
わたしたちは不滅の旅人。
いつ、生まれて。いつ、消えるのか分からない。
『たまには犬とかもいいかなー』
「わたしは猫がおすすめしたいかな」
『まあ、結局人を選ぶんだけどね』
「そうなのよね」
さっきから、話している相手はずっと同じ時を刻んできたわたしの半身。
『来世も、妻にしてくれるんでしたよね。旦那様?』
「もちろんだとも。約束したからな」
そう、先立たれた妻だ。
わたしたちに寿命はない。
だから、娯楽として、作った肉体に憑依する
ことで退屈をしのぐのだ。
『つぎはどっちが先に行く?』
「せっかく待ってくれたんですから、一緒に行きましょう」
『そうだな』
この空間に戻ってくると今までの記憶が戻ってくる。
剣と魔法の世界、宇宙を駆け巡る世界、神が実在する世界。
次はどんな世界にいこうか。
「もう一度あそこにいきませんか?」
『この世界は当たりだったしな。この先の未来がどうなるか気になってたし、いいよ』
あまり同じ世界にいってしまうと、前回の記憶を引き継いでしまう可能性があるから少し心配ではあるけど。
『「地球へ」』
私たちはまた出会い、恋をして、一緒に生きていくのだろう。
これまでと同じように。